韓国ではなぜか「自由で開かれた」の部分は書かないメディアが多いですが、「インド太平洋戦略」。去年の末頃だったと記憶していますが、ユン大統領が、韓国が目指す自由で開かれたインド太平洋の全体像を発表し、文政権とは異なる路線を行くとアピールしたりしました。ですが、韓国日報の記事によると、その自由で開かれたインド太平洋戦略の分析・実行を担当するために新設された外交部(外務省)タスクフォースの予算は、なんと0ウォンです。予算を決めたあとに作ったTFなので、予算も無し、だそうです。記事は全般的に「大々的に発表した内容だが、これだと、実行できなくなるのではないか」という趣旨です。
予算だけでなく、実は権限もそうです。記事によると、外交部内のインド太平洋担当TFは、他の省庁に対して戦略を指揮・点検できる権限がありません。担当TFとして新設されたチームに指揮権が無いなら、「国家安保室」が相応の役割をすることになりますが、外交・安保・経済などの領域でインド太平洋政策を式・点検するほどの会議体は出来ていないし、新設するという話もありません。そもそも、タスクフォースまで新設したのに、また作る理由もないでしょう。記事はこの点、いわゆる『コントロールタワー』が存在しない状況だとしながら、「各省庁がインド太平洋関連政策を各自レベルで出すことになると、実行できそうにない」とも指摘しています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ユンソンニョル大統領は昨年末、インド太平洋戦略を野心的に発表しました。現政権の外交構想の総合版とも呼ばれました。インド太平洋は地域が膨大なこともありますが、今後の国際情勢を左右する核心地域に挙げられます。世界人口の60%、世界GDPの40%、グローバル商品貿易の35%を占めています。同時に、南シナ海と台湾海峡をめぐる緊張、北朝鮮問題など軍事・安保的不安要因があり、関連した米国と中国の対立も高まっています。このように重要な地域で、政府は「自由、平和、繁栄のインド太平洋戦略」を発表しました。安保だけでなく経済と気候変動対応で範囲を広げた「包括安全保障」領域で積極的に関与するためです。ユン大統領が「グローバル中枢国家」(Global Pivotal State)を強調したため、インド太平洋は韓国がリーダーシップを発揮するための最適な場所であるわけです。
しかし、壮大な構想とは異なり、現実は少し混乱しているようです。インド太平洋戦略を点検し、履行する組織の予算が「0ウォン」です。ややもすると、ただ壮大は発表で終わるのではないかという懸念が大きくなるところです・・・・他の国は、インド太平洋をどのように推進しているのか見てみましょう。 隣国日本は、興味深いことに私たちと構造が似ています。外務省総合外交政策局が関連政策の実務を担当しています。方向性は国家安全保障局(NSS)の安全保障会議を経て決定されます。安保室・外交部につながる私たちと似た部分です。しかし、日本は抜かりがありません。
日本は、総合外交政策局が各省庁のインド太平洋戦略の履行状況と補完点を点検できるように権限を付与しました。対象となる国々と関係省庁などの意見を積極的に集め、戦略の方向性を再設定、コントロールタワーである首相室と、不十分な部分を補完しながら完成度を高めてきました。最近になったインド太平洋地域で存在感を強くしているオーストラリアはどうでしょうか。オーストラリアは、総理室傘下の国家安保室で関連政策を主要国家安保戦略として採択した後、外交通商部と国防部を強化しつつあります。オーストラリアのインド太平洋安保政策は、核心協力国との外交・国防の2+2会談などを経て円滑に働いている、という評価を受けています(韓国日報)・・>>
コントロールタワーに予算がゼロだからといって、関連政策そのものに予算がゼロだという意味ではないでしょう。しかし、ユン政権はスタート依頼、北朝鮮関連では前政権より明らかに強いスタンスを示したものの、それより範囲が少しでも広がりそうな(中国関連)場合は、そうでもありませんでした。自由で開かれたインド太平洋戦略でも、同じく、これといって目立った動きがありません。
北朝鮮問題とインド太平洋問題を別々の件として対応しているだけでも、すでに『自由で開かれたインド太平洋』というものの意味からずれていると言えるでしょう。似たようなパターンは、他の案件からも見られます。半導体関連では言うまでもないし、イギリスがCPTPPに加入するという話も、ほとんどのメディアが『経済』の話しかしていませんでした。もはや経済と安保を別々に考える時代ではないでしょうに。
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