電気料金・・というか、電力公社の社債(いわゆるハンジョンチェ)関連で多数エントリーしてきましたが、今回は電気料金が「通商問題に発展した」という記事がありました。米国商務省が、韓国の安い産業用電気料金を事実上の政府補助金と見て、CVD関税(Countervailing Duty、他国政府の補助金が自国内の産業に影響を及ぼしていると判断された場合の措置)が必要だとの予備判定を出しました。2019年~2020年にも同じことがあったものの、当時は最終判定では補助金ではない、という結果になりました。よって、今回も問題ないという主張も出ていますが、ソース記事のデイリアンなど複数のメディアは、「通商分野で、このように同じ問題が繰り返されていることこそ真の問題であり、このままだと間違いなく(最終的にも)通商問題になる」という主張を載せています。
個人的にも、最近、世界中が電気料金の値上げで大変なことになっていますから・・多分、米国内の企業から何か問題提起があったのかもしれません。実際、産業通商資源部(本件の主務省庁)長官の話によると、すでに結構前から同じ指摘があって、米国側が韓国電力公社の関連情報を要求している、とも話しています。韓国には電力会社が事実上1社だけです(発電部門は6社の子会社に分割されていますが、配電部門はいまだ1社体制です)。しかも、電力公社の社債は政府保証付き。去年だけで30兆ウォンを軽く超える赤字を、この社債で補っていますから・・これは、補助金と見られても仕方ない、そんな側面はたしかにあります。CVD関税は1.1%で、その中で電気料金関連は0.5%ぐらいになるのではないか、と予測されているとのことです。3~6ヶ月後には最終判断が出る、とも。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・選挙支持率と物価安定という理由で現状維持されている電気料金が、通商問題になるのではないかとの懸念が提起されている。米国政府が、我が国の安価な産業用電気料金が鉄鋼業界への事実上の補助金の役割をしているとの指摘を出したためだ・・・・18日、産業通商資源部によると、米国商務省は2月に現代製鉄輸出する厚板に1.1%のCVD関税を与えなければならないという内容を盛り込んだ予備判定結果を発表した。米国商務省は「安価な産業用電気料金が鉄鋼業界に事実上補助金の役割をしている」と指摘した。業界は予備判定結果のうち電気料金に関するCVD関税は0.5%と見ている。
CVD関税は、直・間接的に補助金を支給して輸出された品目が、輸入国産業に実質的な損失を与えるとされた場合、輸入当局が当該品目に関税を賦課して自国産業を保護するための措置を言う・・・・昨年、ロシアによるウクライナ事態から、国際原油価格が急騰し、電力生産単価も急騰した。しかし当時、政府は大統領選挙を控えた国内政治状況と、新型コロナ防疫措置緩和による景気低迷の解消などで、物価上昇を防ぐために電気料金を引き上げなかった。国内産業用電気料金は、1㎿h当たり95.6ドル(2021年経済協力開発機構・国際エネルギー機構基準)で、OECD平均の115.5ドルの82.7%にとどまっている。これに米国政府が、対応措置に乗り出したのだ・・
・・主務省庁である産業部イチャンヤン長官はこの部分について、昨年9月から継続的に懸念を提起してきた。実際、長官は当時「安い電気料は政府が企業に与える補助金と見られており、CVD関税のような通商問題を起こす可能性があり、米国側が最近韓電公社について情報を要求する動きもある」とし、電気料金の引き上げの必要性を強調した・・(※2019年にも同じことがあったが、当時は最終的には補助金ではないと認められた、という内容のあとに)・・しかし、このまま電気料金の値上げをしなかった場合、交渉過程で不利な立場に置かれ、そのような状況が続けば、通常問題につながる可能性があるという懸念が提起される。最近、政府は前政府と同様、来年総選挙の支持率と物価上昇を理由に、電気料金の引き上げを延期している(デイリアン)・・>>
電力業界の関係者は、(このように)電気料金を上げないというのは、電力業界だけの問題ではなく、他の産業にまで影響を及ぼすことになるとし、出来る限り早く電気料金の引き上げを決断する必要がある、と話している・・とのことですが。この件、2月のことですから。ユン政権は3月末に「値上げ発表予定」を急にキャンセルしました。じゃ、こういうことまで全部考えての決定だったのでしょう。ちゃんと報告を受けているなら、の話ですが。
個人的に、3年ぶりにまた本件が問題になったのは、例の「政府保証付き債権」が原因ではないだろうか、と見ています。また、選挙も物価もあるでしょうけど、ユン政権が値上げできないでいるのは、サムスン関連もあるのではないか・・な気もします。去年12月30日、政府は、キロワットあたり13.1ウォンの値上げを発表しました。値上げ幅がぜんぜん足りないという指摘が相次ぎ、「3ヶ月に1回ずつ値上げしていく」としました(それから3月末の発表予定はキャンセルされました)。当時、アイニュース24というネットメディアの記事によると、この13.1ウォン分(産業用にも同じ分が適用されます)の値上げだけでも、サムスン電子の場合2400億ウォン分の追加負担になる、と伝えています。
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