去年だけで32兆ウォン(約3.2兆円)の営業損失を出した韓国電力公社。原価にもならない価格で電気を販売し、その分を政府保証付き社債「ハンジョンチェ」で補っており、様々な問題を巻き起こしています。まず、ただでさえ資金確保に困っている企業が多い中、他の企業の社債が売れなくなります。中央日報などによると、去年発行された社債の45%が電力公社1社のものでした。多くのメディアがハンジョンチェを(吸い込むという意味で)「ブラックホール」と書いている所以でもあります。電力公社の持分の33%を持つ国営銀行「産業銀行」もかなりの影響を受けており、政府が資金を緊急投入しています。
また、一つ前のエントリーでも紹介しましたが、これはもうどうみても政府補助金であり、一部で通商問題になっています。米国商務省は鉄鋼でCVD関税(輸出国の政府補助金に対して輸入国が行う関税措置)の予備判定を出しました。また、朝鮮日報など右側のメディアが「支持率を気にして電気料金の値上げを延期するのは、前の文政権と同じだ」と記事を出すなど、政権の支持基盤である右側からも、問題とされています。そんな中、ニュース1など複数のメディアによると、電力公社の去年の営業損失の約4割は、文政権の脱原発政策によるものだ、という主張が提起されました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・昨年、国際エネルギー価格の急騰で、韓電公社が32兆ウォンを超える赤字を記録した中、前政権の脱原発政策がなかったとすれば、このうち40%近い12兆7000億ウォンは減らせたという分析が出た。このように、いわゆる脱原発政策で、過去5年間に発生した損失額だけでも26兆ウォンに達するという分析だ。文在寅政権で新規原発建設を白紙化し、完工した原発稼働も後退し、代替発電方式で、より高価な液化天然ガス(LNG)を活用し、費用負担がはるかに大きくなったというのだ。
21日、国会産業通商資源中小ベンチャー企業委員会所属のハン・ムギョン国民の力議員が、国会立法調査処から受けとった「脱原発政策による電力購入費上昇分析」報告書によると、韓電は昨年32兆6034億ウォンの赤字を出したが、 追加で支払った電気購買費用は12兆6834億ウォンだ。いわゆる脱原発による損失だ。2021年6兆ウォンに近い赤字を出した時は、半分を超える3兆9034億ウォンが追加損失分だった。5年間(2018~2022年)、同じ理由での韓電の損失額だけで25兆8088億ウォンに達すると把握された。立法調査処は、LNG発電代替によるコスト上昇と電力市場で卸売価格(SMP)決定方式要素をすべて反映して、このような数値を算出した(ニュース1)・・>>
そういえばこの前、ドイツが脱原発したというニュースが話題になりました。しかし、その前から、一部の専門家からは、「それは、『原発70%の国』であるフランスから電気を輸入できる関係にあるからこそで、モデルケースにはなれない」という指摘が出ていました。本当はもっと多くの理由があるでしょうし、ドイツ側の努力に関する評価がこの意見だけで判断されてはならないでしょう。ただ、こんな「国と国の関係」の側面、言い換えればそれぞれの国が異なる立場にある点を考慮すべきだという主張は、特に重要ではないでしょうか。以下はソウル経済の記事(去年12月21日)からの引用で、ユスンフン・ソウル科学技術大学未来エネルギー融合学科教授の見解です。ちなみに、引用部分にはありませんが、ユ教授は韓電について、「まずは電気料金を2倍に」としています。
<<・・脱原発を宣言したドイツは、私たちのモデルにはなれない。ドイツは、いざとなればフランスから電気を輸入すればいいので、脱原発宣言が可能だった。我が国は、エネルギーの「孤立した島」だ。中国と日本から電気を輸入することはできない。私たちが先進国より先行する必要はない。昨年2月、石油メジャーの本山である米国テキサスも停電事態を経験したが、これはエネルギー自給に対する過信で、州間の電力網をつなげておかなかったからだ。
炭素中立履行のため原発を積極的に活用しなければならないが、だからといって原発70%のフランスレベルまで引き上げれば、むしろブラックアウト事態が来る可能性がある。停電は電気が不足しても発生するが、逆に過剰生産しても発生する。フランスは残りの電気を輸出することができるが、私たちはそうすることもできない。また、フランス原発は出力を20%ほど調整することができるが、我々は出力調整が不可能だ。私たちの原発モデルは、出力を減らすと安全に問題が発生する(ソウル経済)・・>>
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