半導体関連で特にそうですが、最近日本経済の好調を伝えるデータに、韓国メディアが凄い反応を示しています。感覚的な話ですが、日経平均の好調以外は、日本メディアよりも韓国メディアのほうが多くの記事を載せている気がします。ほとんどは、地政学的なこと、いわゆる米中による『新冷戦構造』のおかげだ、という主張です。これは、日本の経済発展において随分前から韓国側では定説になっていたもので、日本の経済発展は冷戦構造のおかげだ、朝鮮戦争のおかげだ、それ以外は認めない、そんな風潮がありました。ただ、今回はそれほどではなく、どちらかというと「外交路線がよかった」というニュアンスもあります。
「いままで堅実に積み上げたものがあるから」という分析もあります。たとえばイジピョン外国語大学教授は、日本では物価上昇率以上に賃金を上げる動きが出ており、今年後半部には実質賃金も上昇するだろうと分析しながら、これは今まで各企業が積み上げた資産(資金)があるからだ、としています。先の記事もこのイジピョン教授の記事も、おなじソウル経済です(記事1、記事2)。さて、先も書きましたが、地政学的なんとかも、結局は『政策が一貫したおかげ』と言えるだろうし、少なくとも米中対立が明らかになってから日本の外交がこの方向から外れたことは無いので、これも堅実さと言えるでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・日経平均の好調は、日本経済が相対的に堅実な成長を見せている中で現れている。日本の輸出は全体的に不振だが、新型コロナ緩和とともに「対面」消費が活発で、内需が生きている。日本は韓国と違って、輸出が国内総生産(GDP)で占める割合が10%%台だ。対面サービス需要拡大が日本内需景気を支え、経済成長を促進しているのだ。これにより、1~3月期の実質GDP成長率が前四半期比2.7%(年率基準)を記録した・・・・最近、賃金がはっきりと上昇傾向を見せ、内需主導成長に対する期待を高めている。昨年以降、日本も3%を超える消費者物価上昇率を記録し、実質賃金は2022年度比1.8%減少した。 しかし、物価上昇率の鈍化とともに、2023年後半には実質賃金が増加傾向になると期待される。
今年の春闘時の加重平均賃金上昇率は3.67%に達した。民間調査機関のミズホリサーチ&テクノロジーによると、3%台後半の賃金引き上げ率であれば、2023年度の個人消費を0.6%ポイント、GDPは0.4ポイントほど引き上げる効果がある・・・・岸田文雄内閣は、新たな資本主義政策を強調しながら賃金上昇を誘導している。経団連の十倉雅和会長も物価上昇を上回る賃金引き上げは「企業の社会的な責任であり続けなければならない」と強調した・・・・日本企業の内部留保(利益剰余金)は2022年12月末基準で536兆円に達した。 世界経済が不振な中でも日本企業の今年3月に決算結果は相対的に良かった。
日本企業はこれまで、拡大した収益と内部留保を海外投資と海外企業買収に活用する傾向が強かった。しかし、今後、相対的に不振だった賃金を引き上げる一方、新しいイノベーション時代に対応するという姿勢も明らかにしている。既存の製造業がデジタル革命、グリーン革命で革新される時代に対応し、日本企業も構造転換に注力するということだ。日本企業としてもこれまでの防御的経営から抜け出して攻撃的な投資が必要であることを認識している。今年第1四半期実質GDP成長率で設備投資の成長寄与度が0.6%ポイントに達するほど日本経済の成長を支えた(ソウル経済その1)・・>>
<<・・(※米中対立について書いた後に)これに対し、日本は反射的利益を享受している。1990年代初頭、冷戦時代が幕を下ろし、グローバル企業はコスト効率化を最優先にして人件費の安い中国などに大規模に工場を建てた。しかし、新型コロナでサプライチェーン問題を経験し、米中の対立が強くなり、コストが増えても安定したサプライチェーンを構築することが重要だと企業の考え方が変わっている。そんな面で政治・外交的に完全に西側にありながら、製造能力にも優れた日本は、最適な国だ。最近、ファイナンシャル・タイムズ(FT)は「中国と距離を置く方式でグローバルサプライチェーンを再編しようとする動きが、日本製造業に対する外国企業の買収の波を呼ぶ可能性がある」と診断した。
日本が中国と相当な経済・貿易関係を維持しているため、日本に投資すれば中国に直接投資するリスクは避けながらも中国に対するエクスポージャーを適度に維持できるという点も、日本が浮上する理由だ。 最近ゴールドマンサックスは「米国と同盟国は希土類を含む中国のサプライチェーン支配力を弱めることを目指している」と診断し、オーストラリア・カナダ・スウェーデンなどとともに日本がさらに重要な国になると予想した(ソウル経済その2)・・>>
引用部分にはありませんが、記事2は冷戦構造だから~をメインにしていますが、イジピョン教授は「米中対立は、どちらかというと日本にとっても大きな負担になる」としており、今の「日本が最適」とする風潮は、決してただで手に入ったものではない、という趣旨を書いています。それはそうでしょう。さて、サプライチェーン再編、強いて言うなら「大再編時代」は、まだまだ始まったばかり。しかし、その流れは決まっていると言えるでしょう。頑張れ、日本。
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