いつの間にか子テーマになった気もしますが、多重債務者データを不定期に紹介してきました。この場合、日本とは多重債務者の定義そのものがちょっと異なっていて、韓国では「3箇所以上の金融機関からお金を借りた人」を意味します。家計債務がGDPを超える、ワールドワースト(IIF国際金融協会基準)の韓国ですが、その中でもこの多重債務者の存在は、特に高リスクとされます。なにせ、その数は452万8000人、金額で618兆2000億ウォン。データとして確認できる家計債務において、人数で22.7%、金額で33.0%になります。
ちなみに、韓国の経済活動人口は2800万人とされています。また、自営業者の債務は家計債務としてカウントされないので、この場合は自営業者は含まれていないと思われます。これは2022年9月時点でのデータで、それからも利上げが続きましたので、なにか続報は無いだろうか・・と思っていましたが、ニューシースが20代・30代に関して報じたので、エントリーしてみます。結論から書きますと、20代・30代の142万人が、多重債務者である、とのことでして。20代・30代の総数は約1300万人です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・流行のように広がった「ヨンクル」や「ビットゥ」、ローンを受けて投資した結果が、20代・30代に返ってきている。専門家たちは、中・長期的な対策で青年層の雇用を確保し、安定して収入を増やさなければならないと提言する。ただ、急な処方として政府が債務を削減するなど積極的に乗り出さなければならないという意見と、市場原理に任せなければならないという意見が対立している。24日、ジン・ソンミ共に民主党議員室によると、昨年末基準で30代以下の多重債務者数は141万9000人で、彼らの融資残高は157兆4000億ウォンと集計された。多重債務者とは、3つ以上の金融機関から融資を受けた人を意味する。
多重債務者数は昨年だけで6万5000人が増えたが、貸出残高は1年前と比較して2000億ウォンが増加しただけだ。議員室は、既存債務弁済と利子支給のための新規融資が増えた影響だと見ている。ローンを返済するために別のローンを出しているという話だ。多重債務者であり、信用が低く、所得が下位30%の「脆弱借主」も青年層で目立った。昨年末基準の家計脆弱借主ローン規模は93兆9000億ウォンで、1年間で1兆1000億ウォンが増加した。脆弱借主は126万人と集計されたが、去年だけで6万人が増えた。 このうち30代以下は46万人で全体の36.5%を占める。昨年、30代以下の脆弱借主は4万人が増加し、最近5年間で最も高い増加傾向を見せた。
青年たちが様々な金融機関から債務を増やした背景として、ハイリスク・ハイリターンのコインや株式投資、無理な不動産投資に乗り出したが、最近の下落傾向により莫大な借金を背負うことになったことが挙げられる・・・・信用度や担保も足りない青年たちは、第1金融圏からの融資は容易ではなく、相対的に金利の高い貯蓄銀行など第2金融圏や、違法金融業者の扉を叩かなければならなかった。個人回生・個人破産まで追い込まれる場合も少なくない。最高裁判所によると、今年5月までに個人回生を申請した人員は4万9655人で、5カ月で昨年全体の申請人員(8万9965人)の55%をすでに超えた。回生は一定所得があるのに債務が弁済できない場合に申請する制度だ。回生申請者の中では20代の割合も相当だ。ソウル回生裁判所の「2022年個人回生事件統計調査結果報告書」によると、回生申請者のうち20代の割合は2020年10.7%、2021年14.1%、昨年15.2%と着実に高まっている(ニューシース)・・>>
青年関連データもそうですが、個人的にもっとも驚いたのは、「昨年末基準の家計脆弱借主ローン規模は93兆9000億ウォンで、1年間で1兆1000億ウォンが増加した。脆弱借主は126万人と集計されたが、去年だけで6万人が増えた」の部分です。家計と書いてあるから、自営業債務は含まれていません。本件、第1金融圏(普通の銀行)はローンの審査ハードルが高いので、第1金融圏を含めての多重債務者(3箇所の金融機関から借りた人)より、「第1金融圏ではない2箇所」から借りた人のほうがリスクが高いという指摘もあります。ケースにもよりますが3箇所というのは3種類ではないので、第1金融圏2箇所+第2金融圏1箇所の人もいるでしょう。そういう場合は相対的にリスクは低くなります。相対的に、ではありますが。ただ、脆弱借主の場合はそうではなく、全員が抜かり無く高リスクだと言えるでしょう。1円を10ウォンとすると、約9兆円。しかも、ローンが難しくなったと言われていたこの1年間で1000億円増加。これ、いったい誰が貸しているのでしょうか。
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