韓国の各金融機関の不良債権、3ヶ月で12%増加・・貯蓄銀行の場合は23%急増

「中国」と「民間の債務(家計債務など)」。少なくとも2000年代になってから、韓国の経済はこの二つによって発展できました。この二つが、『構造的に』変わってきたというのは、本ブログでも子テーマとして度々取り上げてきました。さて、後者の債務関連ですが・・最近になっても金融部門がまだまだ安定しないでいる、こんな状況なのに新規ローンなど家計債務がまた大幅に増加してきた、などなどの記事は相次ぎました。そんな中、「デイリアン」に、珍しく『不実(不良)債券』とされる部分を集中的に取り上げた記事があったので、紹介したいと思います。

結論から書きますと、今年になって3ヶ月で(明記されていませんが、1~3月期で)不良債権(※後述します)とされる金額が12%も増えた、とのことです。信用協同組合の最大手でもある「セマウル金庫」で大きな騒ぎがありました。セマウル金庫のことは本ブログでも4月12日にエントリーしたことがあるので、未読の方は参考にされてください。その影響も、この手の記事が増えた一つの理由です。いろいろありますが、やはりPF(プロジェクト・ファイナンス)です。セマウル金庫の不動産PF規模は56兆ウォンとされており、第2金融圏全体の不動産PF規模の半分になると言われています。

 

ちなみに、セマウル金庫は金融監督院ではなく行政安全部という政府機関が管理しているため、他の金融機関より公開される情報も少ないとされています。記事に明記されているわけではありませんが、今回のソース記事にちゃんとセマウル金庫のデータも入っているのか、分かりません。政府が全額保証すると言って、やっと収まってきたそうですが・・一時はバンク・ラン(取り付け騒ぎ)もあり、一部の支店は「現金が無いので支給できません」という理由で引き出しラッシュが止まった・・という、笑えない状況になりました。

さて、じゃ、どこからどこまでを「不良債権」とするのか・・ですが、ソース記事の場合、「固定以下与信」を簡単に言うと、3ヶ月以上の延滞があるローンのことです。金融会社は資産の健全性に応じて「正常(普通かな)」「要注意(延滞)」「固定(3ヶ月以上延滞)」「回収疑問(回収は難しいかも)」「推定損失(回収不可能)」など5段階で管理します。記事で不良債権としているのは、この中で「固定以下(固定~推定損失)」です。定義をどうするのかで、データは変わるでしょう。余談ですが、一部の金融機関(第2金融圏など)は、延滞を「固定」からカウントします。すなわち、3ヶ月延滞されていないと「それは延滞ではない」とします。延滞されているのに延滞率にカウントされない、妙な現象が起きているわけです。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・30,000,000,000,000ウォン。桁を数えるのも疲れるこの金額は、国内金融会社が抱えている不良債権の規模だ。今年に入って3か月間だけで3兆ウォン以上が増えた。毎日の増加分が170億ウォン余りに達する。高騰した金利の余波で、ローンを返済できない人々が増え、その結果、さらにお金が回らずに金融リスクは増えていく。だが、高金利の影響はまだ本番は始まってもいないという観測があり、緊張感はますます大きくなってきた。10日、金融監督院によると、銀行・保険会社・クレジットカード会社・貯蓄銀行・キャピタル社・証券会社・先物会社・資産運用会社・不動産信託会社など国内843社の金融会社が保有している固定以下与信は今年1~3月期基準で29兆4605 億ウォンで、昨年末より12.2%(3兆1993億ウォン)増えた。 この期間、1日平均177億ウォンずつ増加したという計算だ・・

・・業権別にみると、まず銀行の固定以下与信が10兆4418億ウォンで、同じ期間3.0%増えて10兆ウォンを上回った。保険会社は3兆786億ウォン、4.5%増加した。特に第2金融圏の中でも個人へのローンが多い金融会社で不良債権が急速に拡大した。貯蓄銀行業界の固定以下与信は5兆7906億ウォンで、23.4%も増えた。キャピタル社も3兆5623億ウォンで、クレジットカード社は1兆7008億ウォンでそれぞれ22.2%と22.4%ずつ該当金額が急増した。金融投資業界の状況もあまり変わらなかった。証券会社の固定以下与信は3兆422億ウォンで13.7%増え、3兆ウォンを超えた。資産運用会社と先物会社も926億ウォンで10%増加した。不動産信託会社の関連額は1兆7035億ウォンで22.0%増えた(デイリアン)・・>>

 

銀行は大丈夫でしょう。やはり問題は第2金融圏ですが・・はてさて、例のセマウル金庫の件で、貯蓄銀行など第2金融圏の金融機関の信用評価等級が一斉に下がった・・というニュースもありますが。金利の影響が一定の『時間差』をおいて影響が本格化する、という話は去年からありました。その本格化にどう対処するのか、が問題でしょう。例の「9月で終了する新型コロナ関連措置(満期延長、元利金返済猶予など)」を、満期延長は3年間、猶予は5年間延長(金融機関と借主が相談して償還計画を出せば支援する)というやり方でスルーしたユン政権(これについては別にエントリーするかもです)。次の対策は、なんでしょうか。いや、それは次の大統領の仕事かもしれませんが。

 

 

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