随分前から、輸出が「メモリー半導体にかたよっているのではないか」という指摘はありました。これは半導体だけでなく、社会、経済、金融、外交など本当に様々な分野で見られるパターンですが、最初は「こういうところは直さないと」という指摘が出ます。でもしばらく経っても『直せた』関連の情報は出てこず、「いまのままで十分凄いから、なにもしなくていい」という論調になります。本ブログでもいくつかの場面で、韓国の専門家及び知識人たちを中心とした「なにもしなくていい」な見解を紹介したことがありますので、読者の皆さんの中には「あ、それ前に読んだことある」と思われる方も多いでしょう。
外交、特に日米関連でも何度か紹介したことがありますが、社会部門においても同じです。前には、各メディアが社会問題を取り上げて、先進国のデータなどを提示、これは直すべきだとする主張をしていました。しかし、いつからか、そういう話は消えました。これもまた、「十分凄いので、なにもしなくていい」というパターンだったと言えるでしょう。半導体関連でも、同じ主張を目立っています。『技術力超格差(でこれからも優位を維持できる)』という言葉が代表的ですが、メモリー、半導体にかたよりすぎたという主張は目立たなくなり、技術力が凄いから、米国も中国も韓国の半導体技術力をほしがっているから、これといってどちらかに『付く』必要は無いというのです(※本エントリーのソース記事にこの単語は出てきません)。
本ブログでは前から、韓国メディアの記事は『経済安保』という概念を、『経済』と『安保』に分けようとする書き方が目立つと書いてきましたが、そこには、この『安保は米国が必要だけど、経済(この場合は半導体)においては、米中ともに韓国にこれといった強い措置を取ることができない』という考えも強く作用しています。なにせ、生産もそうですが(サムスン電子、SKハイニックスの中国工場)、半導体輸出の約50%が中国関連ですし、輸出というか経済において半導体の比重が大きいので、どうしても『経済(半導体中心)』だけは安保(米国)とは別にしたい、そう思っているのですから。そんな中、今日もKBSが、「たとえ対中輸出がうまくいかず、米国との貿易規模が大きくなったとしても、半導体が中国メインで動いているかぎり、脱中国はできない」という記事を載せました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・2023年、輸出が大いに揺れている。中国が主な要因である。長年にわたって持続的に輸出が後退した結果、今や構造的な赤字状態(9ヶ月連続で対中収支赤字)に追いこまれている。先月の貿易収支は16ヶ月ぶりに黒字に反転(※今月はまた赤字予想です)したが、中国のおかげではない。アメリカのおかげだ・・・・輸出金額基準で今年上半期の輸出を見ると、米国が占める割合は17.9%まで上がった。 中国(19.6%)と1.7%p差しかない。もうこれ以上中国に期待することはないという声も高くなっている。ただ、これが米国など同盟側に向い、友達同士で交易しようという「フレンド・ショアリング」主張を立証するグラフだろうか。その意味をもっと深く把握してみる必要がある。
【半導体をあきらめる「フレンドショアリング」は不可能だ】(※見出し)。まず、IT輸出の国別推移を見てみると、米国と中国は大差ない。IT製品の輸出はすべての国で減少した。アメリカ、中国、ヨーロッパ、アセアンのすべてで。代わりに、自動車輸出がよかった。 上半期の最大輸出品目が半導体から自動車(部品含む)に変化したほどだ。実際、韓国銀行が集計した上半期の半導体輸出比重は14.1%、自動車は15.4%だった(※普通は20~25%が半導体で、去年にも19.5%が半導体でした。「情報通信機器」全体で見ると30%を超えます)・・
・・「自動車」が頑張った。米国全体の輸出で自動車部門の割合は27.6%、ヨーロッパは19.5%だ。 一方、中国(1%)とASEAN(2.7%)はわずかである。言い換えれば、米国とヨーロッパで自動車が売れたからであり、主力であるIT輸出は、全世界的に売れなかったとするのが、正確だ。よって、「中国には将来性がないから、フレンドショアリングが重要だ」と言うのは難しい。韓国最大の輸出品目である半導体に対し、「未来がないので、他の産業を探そう」と言うのと同じなのだ(KBS)・・>>
簡単にいうと、「それでも、それでも・・中国しかない・・」というわけですが。記事に書いてあるわけではありませんが、自動車関連だと、さすがに自動車で技術力で『技術力超格差で優位を維持する』という主張はそうありません。これからも売れ続けるかどうかわからない、と考えているのでしょう。なんだかんだで半導体がメインであり、そのためには中国市場に期待し続けるしかない、と。いまの国際情勢からして、『半導体、特にメモリーにかたよっている構造をなんとかしないといけない』としていた指摘が、いかに的確なものだったのか。よくわかるくだりでもあります。
最近も「半導体だけにたよる構造をなんとかしなければ」という記事が無いわけではありませんが・・なぜか同盟という言葉も出てくるし、この前、本ブログでも紹介した『同名との義理だけで中国市場から離れるわけにはいかなくなっている』としていた半導体業界関係者の発言、『中国市場をあきらめると、回復できない』としていたSK会長の発言などと、同じ主張だと言えるでしょう。
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