昨日、恒大グループがニューヨークで破産申請をしたことで、中国不動産リスク、そして、それに対する韓国メディアの認識などを取り上げました。1日経って、今日も同じ方向性で記事を検索してみましたが、やはり極めて一部のメディア以外は、大した問題ではない、という認識です。専門家の意見も、さすがに何の問題もないとは言えないけど、中国の『リ・オープニング(新型コロナ後の経済活動再開)』が遅くなって、その分、韓国の経済回復も遅くなるのではないか、それくらいの見解が目立ちます。
個人的にこの件で驚いているのは、つい3ヶ月前の5月、中央銀行が次のように経済展望を出したからです。(今年1.4%だけど、来年は2.3%成長が可能だとしながら)「中国が内需中心で回復しており、中国経済活動の再開、いわゆるリ・オープニングの影響が(※韓国の対中輸出という面では)波及力が当初予想より遅れている」、「中国が在庫を使い尽くすと製造業生産が増加し、新型コロナ期間中に抑えられていた消費心理もある」、などです。ソース記事の韓国日報は、これについて「中国経済の回復を見込んで、上低下高(上半期より下半期に経済成長が高くなる)予測を維持したのだ」としています。
すなわち、中央銀行が下半期からの経済成長を予測したもっとも大きな根拠が中国のリ・オープニングなのに、中国の不動産リスクについて「国内不動産市場には直接的な影響はない」「影響は制限的」「ひょっとすると金融部門にも影響が出るかも?」と報じている韓国メディアの観測は、見ていて意味がよく分かりません。「言葉の意味は分からないが、とにかくすごい自信だ」といったところでしょうか。この前、1954年に経済成長データを作成するようになって初めて、2年連続(今年と来年)1%台成長になるのではないか、そんな分析が出ているとエントリーしたことがあります。今回は、韓国日報の記事を<<~>>で引用してみます。タイトルに「チャイナ・リスク」と書いてあったりするし、これでも韓国メディアの中ではかなり「リスク」を強調しているほうですが、まだまだ認識が甘いとしか。
<<・・中国経済の不確実性が大きくなり、韓国銀行の成長率見通しも下方修正されるのではないかとの主張が強くなっている。展望値には「下半期、中国経済が回復局面に入るだろう」という肯定的な見方が敷かれていたためだ・・・・しかし、(※先書いた5月の発表時点でも)下半期に反騰するという観測は維持した。李総裁は5月の金融通貨委員会後の記者懇談会で、「不確実性が大きい」としながらも「中国が在庫を使い尽くすと製造業生産が増加し、ペントアップ消費も増える可能性がある」 と言及した・・・・問題は、現在、中国の実物経済が、その見通しとは完全に反対方向に動いているという事実だ。
先月、中国産業生産の増加率は市場見通し(4.4%)を大きく下回る3.7%だった。蘇ると思われていた内需もそうだ。先月の小売販売増加率は市場見通し(4.5%)はおろか、前月(3.1%)より低い2.5%になった。カントリーガーデンなど不動産開発業者のデフォルトリスク、大型資産運用会社の満期返済失敗などのニュースが相次いで伝わり、景気反騰の期待は弱くなった。中国の危機は、必然的に韓国の成長率の低下につながる。1~7月、韓国の総輸出額で中国比重は19.6%で最も大きいうえ、主力輸出品である半導体の対中輸出比重が55.1%(昨年基準)に達するためだ。オ・ヒョンヒ、ハナ金融経営研究所研究委員は、「8月になっても半導体をはじめとする中国への輸出が回復しないでいるし、今までの予想より下半期の成長傾向が鈍化する可能性がある」と診断した・・・・今年より来年が問題だという意見もある。市場は来年の見通しにもっと注目している(韓国日報)・・>>
これでも、他メディアに比べると、かなり「リスク」さを強調するほうですが・・それでも結局、成長率が少し下がるのではないか、経済回復時期が遅くなるのではないか、そんな内容がメインです。いま中国で不動産リスクがこれ以上拡大すると、金融は言うまでもなく、中国経済のほぼすべての分野が影響をうけるでしょうし、その影響から完全に逃れることができる国は、そうないでしょう。特に韓国の場合、何があっても「安保は米国、経済は中国」を強調していますが、いざリスクの話が出てくると、「多少影響があるかも?」くらいの予想しか出ていません。本件だけでもありませんが、これはいったいどういうことでしょうか。こんな中、日米韓首脳会談関連で、「中国の反応は、日本より、韓国には多少宥和的である」「韓国だけは必要だからだ」とする記事も出ています。ひょっとすると、「中国なら大丈夫」という認識があるから、リスクに対する認識も甘くなるのでしょうか。
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