恒大集団など、中国の不動産・金融関連で多くの記事が出ています。ただ、前にも紹介しましたが、韓国メディアの反応は「私たちはあまり関係ない」とするものばかりです。わざわざ引用はしませんが・・たとえばヘラルド経済というメディアは、政府関係者も大した問題として見ていないとしながら、「脱中国しようとしていたし、むしろよかったかも」な趣旨で記事を載せています。読んでいて、そもそも脱中国するつもりはあるのか、と笑ってしまいました。
で、本題ですが・・「ユン政権が行っている不動産関連対策の基本は、『借りやすくしたからマンションを買ってください』です」。これで一つのエントリーを書いた記憶はありませんが(あったかな?)、各関連エントリーに同じ趣旨の文章を結構書いた記憶ならあります。政府が金融機関に直接圧力をかけて抑えていた金利ですが、住宅担保ローンも、第1金融圏(普通の銀行)の一部で金利7%台に再突入、家計債務関連の記事がまた増えてきました。一部のメディアは、「またかよ」なニュアンスで、多少、あきれたという論調の記事を載せたりしています。
そんな中、普通は政府の政策に賛成する趣旨の記事が多い朝鮮日報系列ですが、中国と韓国の不動産関連政策を比べながら、本当にこれでいいのだろうか、という記事がありました。朝鮮BIZ、北京特派員さんの記事です。ユン政権は各種政策を大幅に緩和する形で不動産問題を解決しようとしているけど、それは金融部門の潜在的な問題(家計債務)を増やすことで、なんとかしようとしているのではないか、と。中国当局は、思ったほどの対応を取らないでいます。これが政策としてどうなのかはともかく、このような消極的な対応も、部分的には必要ではないのか、というのが記事の趣旨です。なにより、今の韓国の不動産価格は、「実力(記事原文では『経済成長』)による結果ではない」のが不安である、と。記者は、これを「コンクリート・ユートピア」とも呼んでいます。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・中国不動産危機と、それによる金融不安を見ていると、自然に韓国を思うことになる。まず両国経済ともに不動産を核心に成長してきた。こわいほど上がった不動産価格が急に凍え付いた点も似ている。不動産市場に金が回らず、建設会社など関連企業の流動性リスクが始まり、閉業事例が増えているという点も似ている。不動産PF(プロジェクトファイナンシング)残高が1~3月期基準で131兆ウォン以上積み上げられているなど、債務の話はするまでもないだろう。同じリスクなのに、両国は別の道を行っている。
まず韓国は不動産市場のハードランディングを防ぐために、税金、ローン、請約(※マンション購入のための契約応募)などの規制を相次いで緩和した。このように需要を引き上げた結果、不動産市場の雰囲気は少しずつよくなった。マンション価格が上がり始め、傳貰・月貰の下落幅が鈍化している。ただし、家計債務の急増は防ぐことができなかった。高金利の中なのに、7月末基準、銀行の家計ローン残高は最大規模の1068兆1000億ウォンを記録した。不動産市場を活かす対価として、金融市場の潜在的問題を曽田出ているわけだ。
一方、中国は市場が満足するほどの不動産関連浮揚政策をなかなか出していない。2008年に大規模な浮揚政策を使って、住宅価格が急騰するなどの問題があったので、「慎重モード」を維持するという解釈もあるが、今回は不動産に依存している経済構造をなんとかしようとしているのではないか、という見方も出ている・・・・韓国と中国は政治・経済制度が異なるだけに、同じリスクでも、同じ政策を取ることは難しい。どちらが正解かも分からない。お金をばらまいていったん市場にぬくもりを吹き込むべきか、ダメージを受けることがあっても、問題を整理して行かなければならないのか。時間が経てば分かるだろう。 ただし不安なのは、現在韓国の不動産価格上昇傾向が、経済成長を通じて出来上がったものではないという点だ。いつ下落してもおかしくないだけに、今私たちの選択がブーメランになるのではないかと心配だ(朝鮮BIZ)・・>>
個人的に、記事の趣旨は分かります。特に、ずいぶんと遠回りな表現ではあるものの、「どうみてもそれバブルでしょう。家計債務でなんとかして、本当にいいのですか」という趣旨はよく分かります。「経済成長が原動力になって不動産価格を引き上げたのではなく、不動産価格が家計債務を原動力にして経済成長をリードした」。これは2000年代以降の韓国経済発展において、私の持論でもありますから。ただ、個人的に・・記事の趣旨に一つだけ書き加えるなら、中国も韓国も、現在の政策は、『それしか取れる選択がない』結果ではないでしょうか。韓国もそうですが、中国当局も、わざと何もしないでいるとはとても思えませんし。一つ異なる点があるなら、韓国は3年後には「次の人」が大統領になっている点、でしょうか。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年7月29日)からですが、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」より「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。帰化した人たちがよく口にする「両国間の架け橋になりたい」などの言葉について、私はなぜ「そんなつもりはありません」としか思っていないのか。一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。 ・準新刊は、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・新刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。