昨日もお伝えしましたが、観世音菩薩坐像の所有権が日本観音寺にあるとの最高裁判決で、99%のメディアが「なんでこんなことに」という反応を見せています。その中でも特に気になるのは、「すべて」ではないもののほとんどのメディアが、「長い期間所有していたからって所有権が認められるのか」という内容を記事にしていることです。日本も韓国も同じですが、「20年間、所有する意思あり、平穏に、公然と」所有した場合のみ、所有権を認めるという法律があります。民事上の取得時効というものです。2月の2審から、これが所有権判断の大きな要因となりました。
言い換えればこれが判断の核心であり、関連記事にはこれをちゃんと説明する、せめて明記する必要がありますが・・物理的にうばったり(「平穏に」ではない)、どこかに隠したり(「公然と」ではない)した場合は、20年が経っても所有権は認められません。観音寺はこの全ての条件をクリアーしています。にもかかわらず、地上波放送MBC、KBSをはじめ多くのメディアが、「平穏に、公然と」の部分を報じず、「長期間」だけを強調しています。明らかにミスリードではないだろうか、と個人的には見ています。そんな中、イーデイリーなど一部の(実に極めて一部だけの)メディアは、「当然の判決だ。むしろ11年もかかったことが問題だ」という記事を載せています。特に、この仏像の影響で、フランスなどは韓国で文化財を展示するにおいて法律改正まで要求していた、とのことでして。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・最高裁判所は占有取得時効と関連して2審を認めた。国際司法の原則に従わなければならないという判示だった。日本民法は韓国の民法と同様に「20年間所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有すれば所有権を取得する」と規定する。返還決定を残念に思うかもしれない。しかし、国内外の法など基準で見たとき、最終決定が下されるのに11年もかかった事実が、むしろもっと驚くほど残念である。世界の常識から目を閉じた鎖国主義的な判決の責任は重い。
今回の高麗仏像問題が国際的に浮上して以来、韓国と日本の文化財交流はほぼ止まったままだ・・・・それだけではなく、フランスをはじめ、すべての文化先進国が韓国との交流をためらうようになった。国内関連機関が世界的文化財である「直指心体要節」の国内展示を多角的に推進したが、一度も叶えられなかったのもそのためだ。フランス国立図書館は、国内機関が要請するたび、「一時的に差し押さえを免除するという法」(博物館および美術館振興法一部改正法律案)の制定を要求したという。フランスとしては、文化財が戻ってこない可能性を懸念したのだ・・・・今回の仏像の件は、海外にある文化財の返還努力に大きな影響を残した。海外各地の文化財が「隠れる」現象まで呼び起こした。11年もかかった今回のような「井戸の中のカエル」な行動を再び繰り返してはならない(イーデイリー)・・>>
日経新聞によると、村井英樹官房副長官は早期の返還を求めると話した、とのことです。一刻でも早く、日本に『帰って』来てほしいところです。ソウル経済などの報道によると、韓国政府が受け入れて返還手続に入るなら、検察が(盗難の証拠でもあるので)押収物に対する執行指揮を行い、同時に外交当局が現在仏像を保管している国立文化財研究院側・日本の文化庁と返還日程、方法などを議論して決定することになります。それから日本文化庁、駐韓日本大使館、そして観音寺関係者が訪韓し、国立文化財研究院で仏像を確認した後、移送、運搬することになります。文化財の移動なので、基本的には非公開で進める可能性が高い、とも。
最後に、重要な告知です・・重要といってもいつものことですが、週末、遠くまで出かけることになりました。秋を満喫したく、今日の午後と明日は休みをいただくこととなりました。次の更新は、明後日の日曜日(29日)、10時~11時頃になります。それでは、これから準備して(私もレナも)行ってきます。ちなみに、去年の秋は河口湖「もみじ回廊」でした。今年はちょいと色付きが早いところです。小石川後楽園の紅葉が好きなので、11月にそこも行ってくるかもしれません。
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