韓国メディアだけでなく、本ブログでも無数に取り上げた、違法金融業者。韓国ではサグミュン(私的な金融)、またはサチェ(私債)と言います。合法的に運営している貸付業者、すなわち第3金融圏とは別になります。そのサグミュン・サチェ問題がどんどん広がり、ついには青少年をターゲットとする「代理入金」が社会問題になっています。『利子』というものに無知な高校生たちを相手に、ゲームのアイテム購入などで少額を貸し、年利にすると5000%のとんでもない利子を請求する、そんなやり方です。ついにユン大統領がこの問題を取り上げ、多くのニュースで話題になったりしました。
既存のサグミュン・サチェ問題も、何も変わっていません。Aさんは、胃がん手術費100万ウォンが無くて、韓国のインターネットにあふれている「貸金プラットフォーム」関連掲示板に事情を投稿し、手術費と関連費用などで200万ウォンを借りました。しかし、わずか2ヶ月で、債務は4000万ウォンになりました(11月10日 中央日報記事の事例より)。そのあとは、もう書く必要もないでしょう。Aさんは女性だったので、なおさらです。韓国でよく使う言葉として「急銭」(急に必要な金)が無い人、ネットを利用した当日処理、利子計算がちゃんとできていない、『なんとかなる』というあいまいな考え、そして、あまりにもようしゃない業者たちのやり方。いまの韓国のサグミュン・サチェ問題を象徴しているような案件です。
「それでも、最後の砦である」という心理もあって、表向きにされない件数まで考えると氷山の一角とされていますが、公式に把握された利用者だけで76万人を超えると言われている、サグミュン・サチェ。本ブログでもいろいろ取り上げましたが、今回は、9月26日のKBSの記事から、「摘発されたあと、サグミュン・サチェ業者たちはどうなるのか」という側面を主にエントリーしたいと思います。どうやら、何の問題もなく高級マンションで暮らし、「お金ならあるから、いい弁護士を雇えばいい」と記者に話した、とのことでして。有期懲役まで行く確率が、日本の6分の1にもならないそうです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・韓国のサチェ業者は、警察にあまりつかまらない。昨年、貸付業法違反の疑いで警察に検挙された人は全員で1000人余り。この中で拘束された人はたった20人に過ぎない。 不法債権追審法違反の疑いで検挙された人は580人余りだが、拘束された人は2人だ。彼らは司法部に行っても大したことにはならない。5年間、貸付業法違反で有期懲役を受けた割合は全体の8%。同じ期間、日本の場合は全体の半分ほどだった。比率で日本の6分の1に過ぎない。
取材陣は、10年以上にわたりサチェ業をしたという元業者に会ってインタビューした。彼は言った。 「捕まっても怖くない。罰金や執行猶予で出てくるからそれだけのこと。とにかく金はあるので、良い弁護士を使えばいいのです」。お金を稼ぐのがとても簡単だったという・・・・利子制限法には、未登録貸付業者にも最高金利20%を保障してくれるようになっている。サチェ業者は、違法で捕まっても、(※貸した金の)利子20%は保障される・・・・改正案が2020年作られたが、4年もの国会で係留中だ(KBS)・・>>
引用部分にはありませんが、記事の元業者は、高級マンションと、外国製自動車を複数所有していたそうです。2022年、彼ら違法金融業者の平均金利は、414%。2021年には229%でした。先、「公式で76万人というのは、氷山の一角」と書きましたが、2019年11月13日「消費者経済」というネットメディアの記事によると、サグミュンやサチェの利用者のうち、64.9%の人たちが、何かのアクションを取るつもりはない、と答えました。2016年、公式統計で30万人~40万人とされていたときにも(こうしてみると公式統計もずいぶん増えました)、実は65万人を超えているのではないか、との分析がありました。このときから、「サラリーマンなど、『普通』の経済生活をしているように見える人でも、大勢の人が利用している」という話が出ていました。
高金利によるリスク管理(金融機関としては、貸し出す人を選ぶようになる)が強くなっています。第2金融圏(ノンバンク領域)と第3金融圏(貸金業者)が新規貸出をほとんど行わなくなった今のような状態だと、どうしようもなくサグミュン・サチェに流れるしかないでしょう。政府が強力に介入しない理由も、実は「こうなるしかない」家計債務システムそのものを守るためではないか、という見方もあります。マイナーな意見ではありますが。今回、大統領の指示もあって、初めて本格的な動きがあるのでしょうか。あるなら、どれくらい長く続くのでしょうか。 申し訳ございませんが、昨日告知いたしたとおり、今日も1回更新だけです。次の更新は、明日(15日)の午前11時頃になります。
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