韓国社会には、「なんで子の気を抑えるのか」という表現があります。本当はもっと強い表現(コロ◯)ですが、ここでは「抑える」にしました。ネットには、左派政権の頃からこんな表現が流行ったという話もありますが、これもまた、左か右かの問題ではなく、ずいぶん前からありました。子がまわりにめいわくをかけるようなことをした場合、それを指摘する人に対して、主にその子の親が使います。なんで子の気を抑えるのか、と。すなわち、問題があるのは指摘したほうであるとの意味です。何の気のことかよくわかりませんが。言い換えれば、『指摘した内容』がどうであれ、『それを指摘した人(指摘することそれ自体)』のほうが問題だ、とするわけですが・・
日本では、子(大人もそうですが)が社会の一員になることを優先します。だから、ちゃんとしつけをするのが普通とされます。しかし、表面的な教育水準が高くなって、そうすべきだ(社会規範を守るべきだ)ということを知っていても、対象が自分、または自分の子になると、韓国では「社会の一員」としての子より、「自分の子」としての観点を優先する人が多く、こんな表現が「問題があるのはこちらではない」を主張するために作り出された、そんなところです。一部の文化心理学者によると、韓国と中国でこのような心理が特に強いとされています(個人的に、中国には行ったこともないので、中国のことは詳しくはかけませんが)。
で、似たようなことが今回の万国博覧会誘致騒ぎにもあったそうで・・ちょっと繋げてみたいと思います。朝鮮日報、韓国日報、東亜日報など大手とされるメディアが次々と同じ問題(取材内容は異なるけど趣旨は同じ)を指摘していますが、実は誘致委員会も、投票結果を概ね予想できた、とのことでして。ハイレベルさんたちが『2次投票で逆転できる』と話す前から、委員会の一部の人たちが調査結果をもとに「リヤド支持が圧倒的で、もう難しい」という報告をしていました。しかし、政府も企業も、『上』の人たちはそれを聞こうとせず、「士気が下がるから、そのような報告はすべきではない」としていたというのです。
<<・・(※誘致委員会なども、最初は誘致可能性が低いと見て、最善を尽くすことを目標にしていたが)ユン大統領とハンドクス総理をはじめとする政府最高位関係者たちが国際博覧会機構(BIE)加盟国182国首脳の大多数に会うほど集中し、『希望的思考』が冷静な現実認識に取って代わってしまった。開催地決定数ヶ月、一部の人たちは「ほぼ同じ」「逆転可能」などを口にするようになった。これに、誘致交渉の一線では「まだ私たちが確保できた票では遠く及びません」という保守的な報告を上げたが、政府高位層からは、「なぜ士気をつぶす報告をするのか」という反応しかこなかった。
このような雰囲気の中で、誘致委も、あえて楽観的な見通しをするようになった。財界によると、民間誘致委は1次投票でサウジと韓国がそれぞれ90票、70票程度を得ると予想し、イタリア支持10余票、浮動票10余票で、2次投票でかなりの部分が私たちの方に来ると期待していた・・・・一部の企業と主要誘致委員が、実績競争を繰り広げ、自身が担当する国家の立場を楽観的に報告するようになり、韓国側の支持票が実際より多く報告された側面があると分析されている。ある財界関係者は「官民が総力でエキスポに全力投球する状況で、私たちだけが悲観的な報告をするわけにもいかず、曖昧なスタンス国々は、『私たちを支持する』と報告した側面がある」と話した(朝鮮日報)・・>>
東亜日報、韓国日報にも似たような記事が載っており、すでに現場では数日前から「もうリヤドに決まった」「国民にどう説明するのか、早めに考えておいたほうがいい」という分析が出ていました。しかし、上記の理由でそういう報告はできませんでした。特に東亜日報は、誘致出来なかったことより、このほうがもっと問題ではないのか、と書いています。状況を把握していたサウジアラビアは、まだちゃんとスタンスを決めていない国に「2次投票ではどうでもかまわないので、1次投票では私たちに票をください」というふうに説得しました。1次投票で十分決めることができると『現実』を分析できていたからです。
しかし、『士気があがりそうな』報告だけを信じた韓国側は、1次投票は2位で通過するのを確信し、同じくまだ支持先を決めていない国に「1次投票はどうでもいいから、2次投票では私たちに票をください」とアプローチしたりした、とのことです。「なんでうちのこ(博覧会誘致実績)の気を抑えるのか」としながら、調査による報告より士気(実際は、士気とも言えないものですが)を優先したこの結果。『なんで気を抑えるのか』を優先する社会も、同じ流れになるのではないか・・そんな気もします。気の話なだけに。
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