読者の皆様もご存知かと思いますが、韓国ではやたらと焼き物(陶芸品)関連の話が出てきます。それがあまりにも美しく、日本にはそんな技術が無かったので、どうしても日本に持っていこうとした、というのです。文禄・慶長の役のときに、日本側が多くの朝鮮陶工をつれていったという話が特に有名で、言い換えれば、日本の焼き物文化、陶芸品文化は、その技術によって有名になれた、というストーリーです。ただ、これについては韓国内部でも、陶工たちが日本に渡ったのは事実だけど、そういう見方には無理があるという指摘もありますが、他の日本関連案件と同じく、異論が通じる雰囲気ではありません。
その中でも、沈壽官という陶工がいます。薩摩焼の陶芸家でしたが、後継者(現在15代目)が名前を受け継ぐことになっているので、今の当主も同じ名前になっています。韓国では英雄視されている人、上記の話を象徴する人(記事によると、沈壽官氏本人はそう言ったことがないとのことですが)になっています。ハンギョレ新聞がこの件について記事を載せました。記事の趣旨は、氏の家系図や最近の言動に疑惑を提起する内容です。ただ、本ブログは、そこまでは入りたくありません。本エントリーで取り上げたい内容は、氏の次の発言です。氏は、「(ご先祖の1代目沈壽官は)朝鮮陶工として日本につれてこられたのではなく、日本に来てから陶工になったと思います。朝鮮の陶工なら、名前(姓名)があるわけないじゃないですか」と話しました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・学界専門家の間で、最近懸念する声が出ている。沈壽官家計をはじめとする朝鮮陶工と子孫のルーツ、活動履歴、作品の意味などと関連して、客観的事実が明確に解明されていないだけでなく、多くの内容が誇張または加工されたという疑問が提起されているためだ。ハンギョレは学界の権威者であるバンビョンソン高麗大学文化遺産融合学部教授チームと一緒に、7~8月、日本九州一帯の朝鮮陶工関連遺跡と遺物を踏査した・・・・「(※初代)沈壽官先生は、朝鮮で擁器を作った職人だったのでしょうか。それとも、白磁を作った職人だったのでしょうか?」という質問に、「日本に来た私の先祖、初代は、陶器を焼いていた人ではなかったと考えています。陶器や擁器のどちらも作ってなかったと思います」という、全く予想できなかった答えが返ってきた・・
・・7月29日日本九州鹿児島県にある陶芸家沈壽官氏の作業場会議室で開かれた対談は、バンビョンソン教授のチーム員たちを当惑させるある疑問を思い出させた。陶工としてつれてこられたわけではないというのか? 「朝鮮で陶器を作ってた人たちは、姓も名もない人たちでした。先祖は姓と名も持っていたし、「幼かった頃の名前」ももっていたと聞きます。400年前、朝鮮で姓を持つ人は一部だけでした。当時、鹿児島を支配していた島津家が釜山でつれてきた捕虜たちを、金海と呼んでいました。釜山近くの金海という地名として呼んでいたわけですが、後に、それがそのまま彼らの姓になりました。私たちの先祖は、陶工としてこられたのではなかったと、私は思っています。焼き物(陶器)は、日本に来てから始めたようです。陶工が幼いときの名前まで持っていたはずがないじゃないですか」(ハンギョレ新聞)・・>>
繰り返しになりますが、記事の本来の趣旨である「氏の家系図などへの疑惑」には、本ブログは触れません。知識もないし、韓国で大きな話題になっているわけでもないからです。ただ、彼の発言は、『日本に来た経緯はともかく、陶工たちは日本で暮らすことを望み、日本で発展していった』とする日本側の主張、及びその論拠(社会的な立場など)とも一致しています。この発言だけは興味深いと思って、紹介しました。取材に同行した高麗大学の教授によると、いままでも関連した質問に、氏は『よくわからないから韓国で調べてほしい』と話していた、とのことです。
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