開城工業団地、ついに解散・・まだあったのが不思議か

開城(ゲソン)工業団地というもの、覚えておられますか。その開城工業団地が、やっと清算されることになりました。いままでは支援財団というものでかろうじて維持されていましたが、その財団の解散が急に発表され、多くのメディアは「ついに開城工業団地もなくなるのか」と記事を出しています。というか、個人的には「まだあったのか」と驚きです。南北平和、北朝鮮の安い人件費などで、北朝鮮に工業団地を作るという話は前からありました。1988年、当時の現代グループの総帥の鄭周永氏が北朝鮮を訪問した際に初めて議論され、多少の合意もあったと言われています。

2000年代になって、北朝鮮側が開城を提案、ちょうど韓国も政権交代もあって、工業団地が実現しました。当時の「平和ムード(文在寅政権もそうでしたが、こういうのが繰り返されています)」もあって、韓国から多くの会社が参加しました。生産額も2012年基準で4億7000万ドル、労働者だけで5万4000人いたそうで、南北の経済交流、いや何かの交流にしては、最大規模のものだとも言えるでしょう。最終的には120社以上が参加していたとのことです。

 

いつもそうですが「~兆ウォンの価値がある」とするフレーズは当時も健在でした。2015年にも、「開城工業団地の生産価値は現在7兆ウォンで、これからさらに伸びる」としていました。ちなみに、2016年に工団は止まりました。最初のうちは、悪くない話だったかもしれません。ソース記事のマネートゥデイによると、「北朝鮮側は韓国企業誘致のために土地を1平当たり15万ウォンに売った」、「賃金は北朝鮮最低賃金基準により月に約50万ウォンで、毎年の引き上げ率は5%以下に制限されていた」、「ベトナムより開城工団に工場を建設したほうが、人件費削減効果もずっと大きかった」、などなど、と。

企業側の人たちの話によると、北朝鮮の労働者たちも協力的で(個人的な意見ですが、これは、当局の管理下にあるからという見方もできます)、おやつで提供されるチョコパイやラーメンなどを家に持ち帰るのを最大の楽しみにしていた、という話は有名です。ですが、「言葉が通じる」「人件費が安い」「土地も安い」「政権の政策」などなど好条件もあったものの、そこに「北朝鮮リスク」があるのを、多くの人が見落としていました。それから、南北関係には数々の問題が発生しました。というか、それが普通でして。そして、2016年、開城工業団地は止まることになりました。工場などを、北朝鮮側が勝手に使っているという話もあります。そして、支援財団だけが維持されていたものの、それも解散すると発表されました。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・統一部は4日、開城工業団地支援財団を解散すると公式発表した。工団の正常化からさらに遠ざかったわけだ(※見出しでは「事実上の工団清算手続き」としています)。統一部は小規模清算法人を務め、財団の企業支援業務を南北交流協力支援協会などに移管し、公団内の資産も整理する。常勤理事1人を含め、財団職員41人のうち10人は清算法人などに移動し、残りの30人余りは希望退職の手順を踏む。業務を引き継ぐ南北交流協力支援協会は、開城工団だけでなく、南北交流業務全般を遂行する団体だ。

統一部も昨年、組織改編で開城工団を担当していた南北協力地区(開城工団)発展企画団を南北関係管理団に縮小統廃合した。 統一部全体の人員が80人余り減り、削減人員はほとんど企画団所属だった。入居企業側は、統一部の組織改編と支援財団解散を、事実上の開城工団閉鎖手続きと解釈する。統一部は組織改編後、先月、開城工団企業協会と懇談会をしたが、支援財団の解散決定は話さなかった。協会側は、急な財団解散の知らせに公団入居企業との公式立場発表を検討している(マネートゥデイ)・・>>

 

まだ安倍内閣だった頃、文在寅政権のときも同じ流れがいくつかありました。「鉄道連結」「9・19軍事合意」など、経済もそうですが安保関連でもかなりの動きがありました。そういうものに比べると、長く続いたとも言えるでしょう。開城工業団地のときも、文政権の南北平和ムードのときも、「乗りおくれるな」なニュアンスを報じていたあの多くの記事は、いったいなんだったのか~と思う、今日この頃です。

 

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