去年下半期から、一部のメディア、たとえば中央日報(書く記者にもよりますが)などにおいて、『米国が韓国の最大輸出国(輸出のうち、米国への輸出額がもっとも大きい)になる』というのが話題でした。いわゆる『安米経中(安保は米国、経済は中国)』の時代はもう終わったという論拠として、です。本ブログでも何度も取り上げましたが、韓国の経済成長は「家計債務」と「中国経済」で発展しました。しかし、家計債務もそうですが中国との交易も、韓国が一方的に黒字になる時代ではなくなりました。実際、中国との貿易収支は、去年、31年ぶりに赤字になりました。
これは、何かの変数によるもの、たとえば新型コロナによる一時的現象だとする主張と、すでに構造的に変化しているという主張が出ていますが、前者のほうがメインです。安米経中たる考え方は、まだまだ健在です。中国経済の不透明さについても、『中国の底力を知らないからだ』という主張が少なくないのも、同じ方向の記事だと言えるでしょう。ユン政権はもう完全に米国側に舵をきった、としながらも、なにかあればすぐ中国、中国とするこの風潮をなんとかするために、一部の保守系メディア、経済メディアを中心に、「もう最大の『黒字』交易国は米国だ」「中国への輸出額はもう減少している、もうすぐ米国が最大輸出国になる」という主張が出ていたわけです。特に去年下半期から目立つようになりました。
そんな中、去年12月、ついに韓国の最大輸出国が米国になりました(中国が2位)。これは、約20年ぶりのことでした。そこで、一部ではありますが保守系メディアが「ついに安米経中の時代は終わった」としていたわけですが(実際はそこまでダイレクトな書き方ではありませんが、趣旨的に)・・・1月になって、1日から10日までの輸出データを分析したところ、再び中国が最大輸出国になる、半導体を中心に全般的に輸出が回復しているので、当然の結果だ、と複数のメディアが報じています。結構多くの記事が出ていますが、そのどれもが「輸出が大いに回復」「対中輸出が回復」を中心的に報じているものの、同期間の全体貿易収支と対中貿易収支が共に赤字だということは、一行だけだったりします。というか、1日~10日データでここまで話題になるのか、というのが驚きです。ちなみに、30億1500万ドル赤字で、去年同期間より赤字幅は2倍大きくなっています。そのうち、対中貿易収支のマイナスが10億8600万ドル。
そんな中、内需のほうに目を向けてみますと、去年は20年ぶりに消費がマイナスになったというニュースが出ています。朝鮮日報の日本語版があったので読んでみましたが、昨年(まだ12月データは無いので1~11月だけ)の「小売売上高指数」が、前年同期比で1.4%のマイナスだった、とのことでして。前にこの指数がマイナスになったのは、あのカード大乱があった2003年(1990年代末から政府の経済対策としてクレジットカードが急に普及し、その使いすぎで起きた債務関連問題の総称で、一般的に2003年とされます)でした。当時はマイナス3.1%でした。2022年の世帯当たり利払い費用は2021年比18.3%も増え、247万ウォンでした。これも統計作成してから最高記録です。
家計債務が全世帯にあるわけではありませんので、債務がない、またはちゃんと負担できる範囲内の債務だけの世帯もあるでしょう。しかし、逆もあって、約122万世帯はローン元利金返済分が給料より大きい(DSR100%以上)と言われているし、金融機関3カ所以上でお金を借りた多重債務者(韓国銀行の公式基準で、定義が日本とは異なります)2023年9月末基準で452万8000人、金額で618兆2000億ウォンです。確認できる国内家計債務(家計ローン)統計のうち、多重債務者の割合は人数で22.7%、金額で33.0%と推定されます。
同じく予測値ではありますが、ローンで住宅を購入した人たちは所得の6割近くを返済に使っているというし・・いまのようでは、内需の回復は容易ではありません。結局、なんだかんだで中国経済にかけるしかない、それが2024年韓国経済になるでしょう。2023年もそうだったし2025年も多分そうでしょうけど。数字(年度)だけ変えれば、いつでも同じ内容で無限エントリーできそうな気もします。
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