「建設会社が中途金の利子を払う」とはどういう意味なのか

いままでも本ブログでよく取り上げていたキーワードですが、「PF(プロジェクト・ファイナンス)」や「請約」のこと、覚えておわれますか。PFは、最近も何度も取り上げましたが、自己資本は少ないまたはほぼ無いまま、マンション団地建設などのプロジェクトだけを担保にお金を借りることです。施行会社(総括会社)、施工会社(建設会社)、金融機関ともにハイリスク・ハイリターンとされてきました。こちらは最近にもよく取り上げたし、本題ではないので、これだけにします。

で、「請約」というのは、『買う権利』を申し込むことです。韓国では、マンションを作るとなると、買おうとする人が多すぎで、抽選(詳しくはいくつか条件がありますがそこは省略します)で『買う権利』を決めます。その申込を請約といいます。あたれば、分譲権、すなわち家を買う権利が手に入ります。どうせ値上がりするに決まっている(と思われている)ので、この権利だけを売買する人たちもいます。そして、まだ工事も始まっていないマンションを契約します。契約には、一般的に契約金・中途金・残りの残金の支払い日程まですべて決まっています。

 

ですが、最近は、マンション団地を作るとしても、完売しない、すなわち抽選もなにもなく、買う人が販売世帯数に満たない事態となっています。これは、他の国からすると「それのどこがニュースになるのか」くらいの認識ですが、韓国では、『完成する前に完売できない』ことは、つい2~3年前までありえないことでした。地方都市の某マンション団地の場合、請約がゼロの場合も出てきた、とのことでして。数人だけ、というのはもう珍しくもないそうです。そして、小規模(30世帯未満)のマンションを主に建設する地方建設会社の話ではありますが、『建設会社が中途金の利子を支払うことになった』というのもニュースになっています。先の契約金・中途金・残金の中で、中途金のことです。

 

これがどういう意味なのか。マンションを契約するとき、中途金をローンで用意する人がほとんどなので、そのローンの利子を建設会社が負担すると約束したのです。もちろん、特定の金融機関に、特定の条件(その建設会社のマンションを契約した人にかぎる)ではありますが、契約した人たちからすると無利子でお金を借りることができるので、大きな恵沢となります。建設会社がなんでそこまでするのか、理由は簡単です。そこまでしないと売れなくなったからです。ですが、それでもどんどんマンションが売れなくなり、建設会社が、その中途金の利子も負担できなくなったのです。金融機関は、「じゃ、契約した人たちが払え」と、マンションを購入した(分譲を受けた)人たちに「利子払ってね」と通知しました。以下、<<~>>で、聯合ニュースの記事に載っている、「韓国建設」の事例を一つ紹介します。韓国建設は、光州広域市では中堅とされる建設会社で、また流動性リスクが指摘されています。

 

<<・・14日、地域建設業界によると、韓国建設は最近、光州東区などに建てている4つのマンション分譲契約者たちに、途中金利子納入遅延に関して告知し、対策を約束した。韓国建設側は「マンション施工事業と関連して、お客様の中途金ローン利子を納入できない状況が発生しました」とし「会社を信じてアデリウム(※マンションのブランド名)を選択してくださったお客様に・・・・対策を講じており、早急に解決案を設けるようにする」と強調した。先立って金融機関は去る11日、該当マンション分譲者たちに韓国建設側が出すべき中途金利子返済を要求する案内を送った。該当アパートの分譲の際、追加で貸し出すわけにもいかず、建設会社側が中途金貸出分の利子も支払っていないから、マンションを購入した人が直接出せ、という内容だ。

銀行側は、当該新築マンションの工程率が50%になっているはずなのに、まだ30%台しかなく、去年9月からは関連工程率を銀行側に提出していない、などが理由だとした。当該マンションの契約には、「中途金無利子条件」で分譲が行われ、その利子を韓国建設が負担し、韓国建設がこれを負担できない場合には分譲者が負担することになっていた。中途金の利子世帯当たり毎月70万ウォンを超えることが分かった・・・・ある分譲者は「中途金の利子だけで月70万ウォンを超えるのに、完工するまでどうやってこれをずっと払えというのか」とし「会社側に対策の準備などを要求したいのに、連絡が取れない」と話した(聯合ニュース)・・>>

 

いまさらですが、地方建設会社は中堅もなにももう限界近くまで来ている、ということでしょう。「問題があった場合は本人が払う」という契約内容、ちゃんと知っている人ってどれくらいいるのかも気になりますが。地方の建設会社というのは、主に地方の銀行・または貯蓄銀行(第2金融圏)と取り引きします。余力が無いので、建設会社だけでなく、金融機関も同じです。ニューシースなど一部のメディアは、「本当に懸念されるのは、地方の第2金融圏である」と指摘していますが、あまり注目されないでいます。

 

拙著の一部が、「プレジデントオンライン」に掲載されました。主に、少子化関連の内容です。よろしければ、ぜひお読みください。コメントは、本エントリーのコメント欄をご利用ください。
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