本エントリーで紹介している内容は、具体的なデータが出ーているわけではありません。ただ、「こういうのが多い」という指摘です。京郷新聞の1月9日の記事ですが、趣旨はとても簡単です。不動産景気など、資産価値がここまで発生しているのに、なぜバブルが続いているのか、なんではじけないのか、というのです(記事で取り上げているのは一般的に商業用不動産です)。そして、その分析、というか把握できる一つの理由として、『エバーグリーン化』を挙げています。
ローンの満期延長や追加貸出によって、『先延ばし』されているだけなのに、実際の延滞率などが高くないので、外から見るとこれといった問題がないように(緑豊かな状態に)見えるという話です。不動産などで、実はすでに不実債権(不良債権)かしているものが多いのに、いくつかの理由で銀行など金融機関側は満期を延長したり、追加でローンを許可するなどで、『エバーグリーニング(常に緑豊かな状態に見せる)』をしているというのです。記事は、たとえバブルが一気にはじけるような事態にならなくても、このままでは確実な資産価値下落が訪れるだろう、としています。
記事が指摘する「いくつかの理由」には、政府の要請・・というかなんというか、そういうものもあります。あるプロジェクト(大規模マンション団地とか再開発とか)に対し、金融機関側はもうローンの満期延長や追加貸出に応じる理由がないと判断していても、会議などで金融当局と会ったあとには、何事もなかったかのように満期を延長したり、追加で貸出を行ったりしている、とのことでして。記事は総選挙などもその理由だとしていますが、個人的に、このやり方は現政権だけのことではなく、今年の選挙というよりもっと範囲が広いのではないか、そんな気もします。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・家計資産の70~80%が不動産である状況で、一般の借主は、延滞寸前の状態になっても不動産を手放さない傾向が強い。2008年のサブプライム住宅ローン事態当時、米国でも同様の状況が発生した。長年持続した低金利でバブル化した米国住宅価格は、担保ローンと家計ローン延滞率が4%を超えたとき、はじけた。昨年9月基準、国内市中銀行(※第1金融圏)の商業用不動産担保ローン延滞率は0.2%、ノンバンクは4.4%水準だ。銀行は、借主が資産を安値で手放さずに耐えるのを助けている。すでに問題が発生した担保物の「エバーグリーン化」(evergreening)がここに登場する。エバーグリニングは、満期延長や追加融資で、不良債権なのに生き生きとした緑のように見せる、銀行の慣行をいう。
原則通りならば、銀行は賃貸料・金利・期待インフレ・減価償却・競争関係不動産などを総合して担保価値を毎年再鑑定し、1年間で担保価値が下がった場合にはローンの利子を大きく上げて債権を整理しなければならない。しかし、現場ではそうではない。再鑑定プロセス自体がとても『緩く』なる。Aさんの商店街も、過去7年間空室だったが、ローン金利が体感上負担になるほど上がったのは高金利が本格化した昨年初めからだ。ソウル営業支店で企業融資業務を担当するある銀行員は、「少なくとも不動産市場が熱かった最近2~3年間、再鑑定で返済を促したり、再鑑定を通じて融資利子を高くした事例はありませんでした」と話した・・・・鑑定評価法人も、バブルを維持するカルテルに協力する。ある鑑定評価社は、「再鑑定する際、既存の評価額よりも低く価値を算定すれば、銀行側は私たち(※評価法人)の責任だとし、今後の取引はしないかもしれないとか、そんな話をしてきます。再鑑定が、銀行の細則に規定されている通りに行われることはそうないでしょう」と話した・・
・・銀行は「エバーグリーニング」を通じて利子商売をしばらく維持できるし、外観上では健全な貸借対照表を備えることができる。だが、その健全な帳簿価額の裏面には、担保リスクがあるわけだ。韓国企業評価は2019年「不動産金融の時代」という報告書で、「金融機関が保有した実物資産エクスポージャーは、ものすごい変動性リスクの可能性がある」と指摘した。政府もまた、バブルを維持する政策方向を維持している。総選挙を控えた最近では、金融機関が自発的に問題のある債権を整理しようとしても、これを政府が止めることもある(京郷新聞)・・>>
繰り返しになりますが、データ化されていない話なので詳しい規模まではわかりません。でも、個人的にはかなり「あ、あるだろうな、これ」とヒットしました。商用不動産だけでもないでしょう。いままでの政権・・というか大統領たちがこれを知らなかったはずはありませんが。「次の大統領、任せたぜ・・」といったところでしょうか。
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