複数の韓国メディアが、ソル(旧暦元日)とチュソク(秋夕、旧暦8月15日)、1年2回取り上げる、賃金未払い問題。2023年、最大記録を更新したとのことなので、まとめてみたいと思います。そういえば本ブログも、旧ブログの頃から不定期に取り上げてきました。韓国は、もともと賃金未払いが多いと指摘されてきましたが、これは単に経済や景気の問題だけでなく、『人に賃金をあたえない』のを賢い経営手段だと思っている人が多いからでもあります。そういうところが、どことなく『社会』というテーマと繋がっていたから、です。旧ブログの頃から、1年に1~2回はこの件をエントリーしてきました。
「2017年~2021年までの5年間、未払い賃金が7兆ウォン。同期間の日本の未払い賃金に比べると14倍規模」とされる賃金未払い問題(朝鮮日報2022年6月4日)。いままでは2019年の1兆7217億ウォンが最高記録で、去年9月あたりから「2023年分で記録更新するのではないか」というニュースもありましたが・・京郷新聞など複数のメディアによると、本当に記録が更新され、2023年に1兆7845億ウォンでした。いろいろあるけど、建設業関連で大幅に増加しました。しかも、去年、政府はこの件で対策を打ち出しましたが、それでも効果がありませんでした。その理由は、意外と簡単です。
たとえば100万ウォンの賃金が受けられないでいる労働者がいるとします。すると、経営者が『50万ウォンだけで済ませるなら今すぐ払うけど、どうする?』というと、労働者としてはそれに応じるしかありません。労働者としては、『いますぐ』お金が必要な場合が多いからです。この場合、合意とみなされるため、関連法規(労働者を保護するための措置)は何一つ適用されません。京郷新聞の記事はこれについて、『賃金未払いをすると、経営者が得をする構造になっている』としています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・政府が昨年各種対策をを発表したが、賃金未払い額は最高値を記録したことが分かった。建設業を中心に賃金滞納が大幅に増加した。労働者側は、事業主にデメリットがない構造のままでは、この金額は減らないだろうと指摘している。共に民主党のユン・クニョン議員が25日、雇用労働部から受け取った資料を見ると、昨年の賃金滞納額は1兆7845億ウォンで、2022年(1兆3472億ウォン)より4373億ウォン(32.5%)増加した。2019年に1兆7217億ウォンで最高値になった後、減少していた金額が大きく反騰して再び最高記録を更新したのだ・・
・・賃金未払いは、労働者が事業主処罰を望まないとすれば、起訴もない。労働者が滞納賃金を一日でも早く受け取るために、減額された金額で合意する問題が発生すると指摘してきた。パク・ソンウ労務士は「『賃金未払い共和国』になったのは、使用者がそうすればするほど利益を見る仕組みを放置しているため」と話した。ユン・クニョン議員は「賃金体不額が最高値を記録したのは景気不況のせいもあるが、政府対策の効果がなかったため」とし「もっと根本的対策が必要だ」と話した(京郷新聞)・・>>
余談ですが、この賃金未払い問題は、2019年に1兆7217億ウォンを記録したあと、2022年までは1兆3000億ウォン台まで減少していました。これは、一見すると改善されたように見えますが、実はそうでもありません。その分、最低賃金がもらえない人が増えました。法定最低賃金がもらえない勤労者の数は、確認できる範囲内で2017年に266万人から、2021年には321万人になりました。賃金勤労者全体の約15.3%です。
OECD基準(最低賃金『以下』)でも、韓国は2番目に(調査対象25カ国の24位)最低賃金以下労働者が多い国です。メキシコ25%、韓国19.8%。日本は2%です(アジア経済2023年4月2日)。文在寅政権で最低賃金が急速に上がったことで、余力のない店は、人をカットするしかありませんでした。そのときにリストラされた人、または「最低賃金以下でもいいから」ということで残った人が増えたので、賃金未払いは減少したように見えているだけ、というオチです。
あと、また申し訳のない告知ですが・・今日から3~5日間、ちょっと更新が不安定になります。今日の更新はこれだけで、明後日(6日)も1日休みを頂きます。他の日も休むことがあるかもしれませんが、少なくとも前日には告知できるように頑張ります。明日は平常運転の予定ですので、次の更新は明日(5日)の11時頃になります。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>です。若い人たちと高齢の人たち、女性と男性、「私たち」と「それ以外」、こっちとあっち、私と他人、豊かな人たちとそうでない人たち、様々な形で出来上がった社会の壁、「分断」に関する話で、特に合計出生率関連の話が多めになっています。・準新刊<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」より「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。 ・既刊<韓国の借金経済(扶桑社新書)>、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。