前から話はありましたが、TSMCの熊本第2工場が公式発表されました。今年中に着工し、2027年末には稼働を目指すとのことです。まだ検討段階ではありますが、3ナノまで視野に入れた第3工場(熊本以外の地域になるという見解もありますが)の話も出ているし、日米台を中心としたサプライチェーン再編、及び半導体『確保』の構図がさらに明確になってきました。なにより、『予定』『遠い未来』のことではなく、1~2年単位で着々と進展が見えているだけに、新しいステージが始まったという実感が半端ありません。第1工場はもう今月竣工式がありますから。
記事は概ね日本や海外のメディア(ロイターなど)の記事を紹介するレベルで、TSMCが日本に設立した子会社JASMにソニーやトヨタなどが出資したことを主に伝えています。例えば韓国日報は「世界最大のファウンドリ(半導体委託生産)企業である台湾TSMCが日本に第2工場を建設すると明らかにした。6日ロイター通信によると、TSMCはこの日日本南部熊本県に今年末まで第2工場を着工、2027年末頃に工場を稼働すると説明した。これに先立ち、TSMCは2021年熊本に70億ドル(約9兆3,000億ウォン)規模の第1工場建設を発表した。同工場は24日に竣工式を控えており、今年末から12・16・22・28ナノ(nm・10億分の1m)の工程製品を生産する予定だ」などと伝えています。
韓国メディアは、TSMCの熊本投資について、最初は「最先端半導体ではないもんね」としていました。一部のメディアだけ、「ニュースで3ナノとか話題になっているけど、実際に(当時半導体不足が問題になっていた)車や家電に使われるものはそうではない」としながら、当時同じく話題になっていたラピダスとIBMの協力など『流れ』そのものにもっと緊張する必要がある、という論調でした。最近は、ほとんどのメディアが緊張感を表しており、今回の熊本第2工場(6ナノあたりを生産する予定だそうです)も、むしろ日本より韓国のほうで多くの記事が出ています。そんな中、熊本第2工場とは別のことですが・・個人的に気になったのは、『半導体業界関係者』の話として、『別に1位ではなくてもいい。サムスン電子はいまのペースでいい』という主張が出てきたことです。2月5日のものですが、韓国経済です。2ナノとか3ナノとかそんなものにこだわるから、収率の問題もあるし、別に世界最初とか最大とかそういうのを目指す必要はない、TSMCになにか問題が発生したとき、逆転すればいい、というのです。
意見としてはともかく、これは、いままでの韓国メディアの論調とはまったく異なります。いままでは「超格差技術力(原文ママ)」を強調するものがほとんどでした。外交など、特にいわゆる「安米経中」などで、韓国は半導体やバッテリーで代替できない技術力をもっているので、米国も中国も強く出ることはできない。だからあまり気にすることはない、という主張が一般的でした。他の案件でも何回か取り上げましたが、ちゃんと解決法が提示できない案件において、似たような主張、『なにもする必要はない』という主張をする専門家やメディアが結構ありまして。さて、どうでしょうか。『なにもしなくていい』と言う位なら、『もっとしっかりして』のほうがまだアドバイスになれそうな気もしますが。あと、TSMCより中国のメモリー半導体を気にしたほうがいいのでは。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・問題は「世界初」にこだわって、内実を固めることができなかったという点だ。代表的なのが収率だ。収率とは、全生産品のうち良品の割合のことで、技術力と収益性の尺度とされるものだ。1年から1年半ぐらい前、サムスン電子の最新ファウンドリ工程である4nmの収率は「25%未満」だったと伝えられる。100個を作っても75個以上は捨てたという意味だ。必要な分を確保できなかったので、顧客会社への納品に問題が生じた。低い収率は顧客の離脱の直接的な原因となった。当時、サムスン4nmプロセスを利用したクアルコムなどの顧客会社は、いまはTSMCに注文している。クアルコムは現在、最先端のチップはサムスンの競争会社であるTSMCに任せ、残りの一部の量をサムスンファウンドリに任せていると知られている。半導体業界の関係者は、「後発走者であるサムスン電子の立場では『安定的に2位の座』だけ守っても成功的だ」とし「実力を積み、内実を固め、YSMCが大きく間違えた時に前に出ればいい」と話した(韓国経済)・・>>
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