本当はマンション関連で旧ブログの頃にも取り上げたりしましたが、『PF(プロジェクト・ファイナンス)』について集中的に取り上げたのは2022年秋~冬あたりだったと記憶しています。自己資本はほとんどない状態で、マンション団体などを作るというプロジェクトだけを担保に金融機関から融資を受け(ブリッジローン)、そのお金で工事を始め、マンションを作る前から『買う権利』を抽選で販売したりして資金を用意、それで多少金利の低いローンに乗り換え(本PFローン)、中途金・残金という形でそれからもマンション購入者たちからお金をもらって、それで返済するというシステムです。
どうせ作れば売れるに決まっている、じゃ作る前から売れたと仮定して始めてもいいではないか、そんな考えに基づくシステムです。ですが、金利や経済環境などで『とりあえる売れる』でないと、このシステムは成立しません。実際、最近は「初期PFローン」「仮PFローン」とも呼ばれるブリッジローン状態で、本PFローン(ブリッジローンよりは若干金利が安い)に乗り換えることができないところが急増しています。事実上のグループ解体になった泰栄建設の民事再生も、このPFが原因でした。
そんなところ、初めて政府レベルで「ひょっとしてPFって改善の余地があるのではないか?」な話が出てきました。主に、施行会社(プロジェクト総括会社)などの「自己資本が少なすぎる」点が指摘されていると、ニュース1などが報じています。私が知っているかぎりでは、この件でなにか政府レベルの(制度としての)改善が記事になったのは初めてです。なにせ、規模が大きすぎで(記事にもよりますが残額130兆ウォン)、これを変えるとなると、不動産市場のシステムがしばらく止まるしかないからです。その記事で、PF一般的な自己資本は普通「5%」だそうです。わかってはいましたが、すごい数字が出てきたものだな、と思いました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・プロジェクトファイナンシング(PF)構造を全面改編しなければならないという声が大きくなっている。施行する際、自己資本なしに開発費の95%ほどを「ローン」で用意する仕組みであるうえ、竣工保証など建設会社に頼る傾向が強く、今のように市場低迷などの変動によわいという問題がある。今の建設施行構造はPFに依存している。土地を買う時からローンを組んで事業を始めるが、自分の金は使わずに事業を施行することが可能だ。例えば、1000億ウォンの事業がある場合、施行会社は総事業費の5%に相当する50億ウォンだけ投入し、残りはすべてローンで充当する。その後、マンションの分譲収益を通じてローンを返して収益を実現する。今のように分譲が難しい状況では、問題になるしかない。
このようなシステムが可能な理由は、責任竣工などで信用度の高い建設会社を保証として立てるからだ。もし事業が途中で止まったりすると、施工会社(※建設会社)にその債務を返済しなければならない義務が生じる(※このような条件でもないと、建設会社はその工事に参加できないため、多くがこのようなシステムになっています)。結局、事業構造がローンでできているうえ、施工会社の保証など、市場の低迷など外部変数にとてもよわい。政府もPFの事業構造が変わらなければならないと同意する立場だ。このため、不動産PF事業に対する根本的な管理方案の準備のため、研究用役を発注した状態だ。チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官は「後で作るとして(※マンションを建てる前から)分譲するが、分譲価格が下がると影響を受ける、簡単に言ってみんなが倒れる仕組み」とし「現行の構造では今のような状況が繰り返されるしかない」とした(ニュース1)・・>>
先も書きましたが、ロッテ建設や現代建設のような大企業もPF関連で問題が提起されていて、一部は資金流動性リスクまで報じられています。PFを制度的に変える、たとえば一定の自己資本が必要だ、などにすると、中小の場合は、マンション工事のほとんどが止まることになるでしょう。5年任期の政権に、そんなことができるのでしょうか。ちなみに、2008年リーマンブラザーズ事態のあとから、第1金融圏(普通の銀行)はPFにはあまり参加していません。ほとんどは第2金融圏(貯蓄銀行、証券会社など)です。
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