初めてPF(プロジェクト・ファイナンス)という言葉を取り上げたときには、これをどう説明すればいいのかとなやんだりしましたが、最近は長く説明することもないでしょう。『普通5%だけの自己資本で、建設プロジェクトだけを担保にして金融機関からローンを受け、どうせマンションを作れば完売するだろうから、それで返済する』・・これでもちょっと長いけど1行でなんとかなります。この過程で、主に資金作り(投資家向け債券)について、韓国のネットメディア『時事IN』がそのやり方をまとめました。記事は、『面白くないマジック』などとこの過程を説明しています。
記事は、金融というのは「信じる者は救われる」だとします。信じなくなるとお金を貸さなくなり、資金の流れが止まって、結果的には社会そのものをまきこんで金融危機になってしまう、と。不動産関連の資金の流れもそうで、最近よく記事になる「PF(プロジェクト・ファイナンス)リスク」とは、不動産開発というお金の流れを『大勢の人たちが信じなくなった』という意味である、というのです。記事は「自己資本5%の施行会社(プロジェクト総括会社)が大規模マンションを作るマジック」を、あくまで『韓国型PF』としながら、分かりやすく説明していますが・・なんというか、涙を誘う話です。家計債務でもここまではしないのでは・・、と。以下、<<~>>が引用部分となります。
<<・・「韓国型PF」は大きく「ローン」と「流動化」の形で構成される。まず「PFローン」だが、金融機関(銀行・保険会社・証券会社・貯蓄銀行・与信専門金融会社など)が『施行会社』にお金を貸す。 ただし、当該事業の『施工会社(建設会社)』を保証人として立てる。施行会社がお金を返済しなければ、建設会社が代わりに返済する。これを「信用補強」と呼ぶ。面白くないマジックだ。次に、流動化。施行会社が5年間、資金1000億ウォンが必要だと仮定しよう。
これほどの巨金を丸ごと5年満期で貸す貸主はそういない。そこで施行会社は「3カ月後に1億1000万ウォンを返済します」という条件の債券を1枚当たり1億ウォン(債券価格)で発行する。この債券を投資家に1000枚売れば1000億ウォンが調達される。しかし、施行会社はプロジェクト期間の5年ではなく、わずか3ヶ月後に1100億ウォンを返済しなければならない。じゃ、どうするのか。方法ならある。再び1100億ウォン相当の債券を発行・販売して、その金で返済すればよい。借りたお金を返済するために再び借りるこの作業を「借り換え」と呼ぶ。
施行会社(施行社のペーパー法人)は、借り換えを3ヶ月単位で5年(60ヶ月)の間、20回繰り返す。「5年後の返済」という長期契約を「満期3ヶ月債券」という短期契約の繰り返しに変えたのだ。これに使用される債券を流動化証券と呼ぶ。用語としてはPF-ABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)などがある。しかし、借り換えが順調に行われるという保証はない。投資家は流動化証券の購入をためらう可能性がある。借り換えにならなければ、該当事業は倒れる。だから借り換えに保証がつく。借り換えが難しい場合は、証券会社が流動化証券を購入しなければならない。
PFは魔術ではない。 建設会社と証券会社を保証人として働く「信仰の体系」だ。不動産が好況であるときは、施行会社は高価で建物を売って「PFローン」を返済するだろう。借主も安心するから流動化証券がよく売れて借り換えも順調に行われる。しかし、不動産景気が不況だと、施行会社の償還能力に疑問が提起され、その瞬間、PFという名の信仰製造機は、大いに揺れることになる(時事IN)・・>>
結果にもよりますが、信じるものもまた、巣食われるだけではないのか・・な気もしますが、どうでしょうか。金額自体も大きく、確認できる範囲で134兆ウォンとされていますが、問題は第2金融圏です。特に、2008年リーマンブラザーズ事態などをきっかけに、第1金融圏はPFにはあまり手を出していません。そのすきに第2金融圏が集中的に入ってきました。銀行(第1)の低い延滞率もあって、PF延滞率はいまのところ2.2%だけですが、与信専門(キャピタルなど)は4.4%、証券会社の場合は13.9%まで上がっています。
しかも、これは実際の延滞率とは異なるという話もあります。例えば一部貯蓄銀行などは、延滞がある程度続いた場合のに、それを延滞としてカウントするなどで、この数値を下げているという指摘もあります。また、1月27日にもお伝えしましたが、事実上回収が難しくなっているのに、それでも満期延長や追加ローンをすることで問題ないように見せる、金融機関の『エバーグリーン化』を指摘する記事もあります。昨日書いた「政権の不思議な政策」がなぜ出てくるのか。それは、他に方法がないから、ではないでしょうか。
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