最近、TSMCの熊本工場など日本と台湾の半導体協力などをよく取り上げていますが、これは一つや二つの国に限られる話ではなく、例えば西側とか自由民主主義側とか、『側』の話だと私は認識しています。米中対立がなかったら、そもそもこのような動きがここまでの短期間で形になることはなかったでしょう。でも、同じく複数回取り上げていますが、韓国では「それでも、中国との協力が大事だ」とする主張が次々と出てきています。かなり迂回する書き方の記事もありますが、基本的には「安米経中(安保は米国、経済は中国)をこれからも続けよう」な路線です。
そんな中、昨日のものですが、特にユニークな書き方のものがあったので紹介します。記事の核心は、「包容よ協力こそが勝利の鍵だ」というものです(韓国日報)。TSMCが日本に工場を作ったことで話題になっているが、だからといって核心ノウハウを日本に教えるはずがない、インテルとNVIDIAが協力することはない、日本も米国も、自分だけのものにしようとしているけど、それではいけない、それではうまくいかない、私たちは『超・技術力』でこれを克服し、包容と協力を誘導しよう・・そういう内容です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・半導体はグローバル化と自由貿易を動力として急速に発展した。設計は米国、生産設備は日本とヨーロッパ、生産は韓国と台湾という、国際分業が確立された。ところが、中国の浮上とパラダイムが変わり、分業体系が揺れている。今後、競争は先端センサー、通信、AIが主役となるだろう。これにはデータ、アルゴリズム、演算力3要素によって勝敗が決定されるが、中国はすでにデータとアルゴリズムでは米国と同等の位置にあり、演算力すなわち半導体技術でのみ及ばない。米国が韓国、米国、日本と台湾を「チップ4」という半導体連帯で結び、中国に先端半導体技術移転を徹底封鎖する理由でもある。価格と性能が優先視されていた半導体業界に、愛国心と独占が浸透し、半導体生産で韓国と台湾に押されていた米国と日本企業も活発に動いている・・
・・設計に注力していた米インテルなどが半導体量産に参入し、日本は政府主導で半導体生産施設の再稼働に乗り出した。こういう動きの中で、韓国だけがのこされるのではないかという不安が生じそうだ。半導体は天文学的支援でも容易に模倣できない技術とノウハウが無数に存在する世界だ。また、分業、協力、競争も激しい世界だ。米国政府がいくら「チームUSA」を叫ぼうと、インテルとNVIDIAが一つのチームになるのだろうか。また、台湾TSMCが日本に工場を建てようとも、ファウンドリーのコアなノウハウを日本に提供するのだろうか。メモリ半導体最強の韓国が米国の新しい戦略の中で生き残る道が、ここにある。競争者が追いつけない「超技術力」を維持するとともに、独占ではなく包容と協力することこそが、半導体競争で勝利する道であることを私たちが示すのだ(韓国日報)・・>>
TSMCが日本に工場を作ることが「協力」でないなら、なんでしょうか。記事が言う本当の協力というのは、核心ノウハウをただで教えることでしょうか。条件によっては技術移転などもあるでしょうけど、一般的に協力とはそんなものではないでしょう。『そんな協力』を主張しながら、超・技術力で勝負するとか言っている時点で、話が合わなくなります(記事が言う『協力』を成立させるには、その超技術力の核心ノウハウも相手に教える必要がある)。なんというか、協力や包容が必要だとしながらも、『側』という概念が弱すぎるのではないか、そんな気がします。協力とは、『みんな、同じことができるようになろう』ではないでしょう。『私にできることを私がするから、私にできないことを頼む』が協力ではないでしょうか。
次に、読んでいてすぐ思ったことですが、「超技術力があると言っているけど、実は今までのシステムが変わることに自信がないようだ」。そして、それを維持するため、遠回りな書き方で、中国との協力を強調しています。そもそも、記事が言う『協力』の対象ってどこの国のことなのか、と。引用していない部分まで含めていろいろ考えてみても、中国のこととしか思えません。結局はそれがいいたくて、包容や協力という、「美しい単語」を持ち出したのではないでしょうか。中国と協力しよう、とはさすがに言いづらいから。
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