たまには珍しい路線で行きましょうか。日本の各地にある美術館関連のレポートです。各地域が素晴らしい所蔵品を持っているのもそうだけど、都心にあるものの、そうでないものも、歩いてみると美術館インフラそのものが「芸術」だという、韓国経済3月5日の記事です(引用部分にはありませんが、所蔵・展示品がすごいという話も書いてあります)。最近は、どちらかというと「韓国人の日本旅行が多い」というのがニュースになりますが、数年前には、韓国の旅行関連記事は、外国人観光客の数で日本の動きを気にしながら「誰もいないのに一人で勝ったり負けたりしている」状態が続いていました。
その中、政府及び各メディアが困っていたのは、リピート率が低いこと、そして、「買い物など」で来る外国人観光客の数が多いことでした。『素晴らしい文明の記録を見に来た』というシチュエーションを期待していたわけですが、そうでもなく、そもそもソウルにしか訪れない、国立博物館がある慶州には人があまり集まらない、そんなデータが出てきたからです。最近はそういう話そのものをあまり聞かなくなりましたが、この『博物館など(ソース記事は主に美術館ですが)で文化・文明に触れる』と、『ソウル以外の地域に観光客が行かない』の二つは、それからも多くのメディアが指摘してきました。大して改善されているようには見えませんが。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・韓国に来る外国人5人のうち4人は、ソウルだけを見て、帰る。2位の釜山を訪れる人は、全体の20%にもならない(※これは「旅程のうちに訪れたことがある」で、集計方式によってはさらにソウルに集中しているデータもあります)。半分以上の観光客が、食道楽やショッピングを目的に来るためだというのが、韓国文化観光研究院の調査結果だ。食道楽やショッピングにおいて、首都であるソウル以上の都市はないので、当然の結果だ。日本は、そうではない。最新統計となる2019年基準で、外国人観光客が最も多く訪れたのは大阪(43.4%)だ。 東京(42.4%)、京都(32.8%)がその後に続く。地域別に異なる雰囲気、特に文化遺産と芸術を楽しむためにお取れる観光客が多いからだ・・
・・美術館、博物館訪問者統計がこれを証明してくれる。日本文化庁によると、関西地方主要博物館の外国人観覧客の割合は(※ソース記事の記者が取材のために訪れたのが関西地方でした)30%台だ。韓国で比率が最も高いのは国立慶州博物館だが、10%にもならない。観光客の「日本美術館への愛」は、最近訪れた大阪中之島美術館でも体感できた。「印象主義の巨匠」クロード・モネの展示の切符を買うために並んだ長い列からは、日本語だけでなく、英語もよく聞こえてきた。
優れた施設管理が目立った。2004年に建てられたこの建物は、20年が過ぎたのにまだ新しく見えた。美術館の関係者に「恒温・恒湿はうまくできていますか」と聞くと「当然、ぬかりないですよ」という答えが戻ってきた。韓国第2の都市である釜山の釜山市立美術館とは異なる姿だった。釜山市立美術館は雨がもれるなど、ずっと工事関連の論議が続き、改装工事に入った。大阪国際美術館よりわずか6年前の1998年に建てられた建物だ・・
・・(※各地域の美術館・博物館などが高いレベルを維持しているという内容のあとに)このような競争力を備えることができた主な原因として、「民間企業参加」が挙げられる。植松由佳大阪国際美術館キュレーターは、バブル経済以後、美術館、博物館に対する政府支援が確かに減ったが、企業が手伝ってくれたおかげでピンチを克服し、さらに成長することができた」と話した。日本最古の美術館の一つである京都の京セラ美術館が代表的な事例だ。「京都市立美術館」だったここは、2020年、今の名前に変わった。 地域企業である京セラは、その代価で50億円を出した。 大原美術館も、倉敷出身の企業である大原孫三郎が建てた。
民間が運営に介入し、効率的な経営方式を導入し、黒字が出たところもある。大阪市出捐財団と民間が共同運営する中之島美術館は、2022年開館初年度営業利益が出せた。1階レストランで出した収益と、向かい側の家具店が出す賃料収入の影響が大きかった。日本のカレーの香りが漂うレストランの前には、平日にも長い列ができており、家具店も客で賑わった。京セラ美術館も2階を貸館展示で開放するなど、収益創出に破格的に乗り出している。先月訪れたところ、中・老年層美術同好会の定期展示が開かれていた(韓国経済)・・>>
海外の作品だけでなく、日本の作品もまた、世界的に愛されていますので・・日本のこういうインフラには、まだまだ大きな潜在力があると見ていいでしょう。大きなところでなくても、いや美術館や博物館でなくても、日本各地には良いインフラがたくさんあります。この前書いた雛人形店もそうですし、ふっと訪れた小さな記念館、ギャラリーなどで素晴らしい作品に出会うこともあります。バスツアーで「昇仙峡」に訪れたとき、天気が急に曇ってきたので早めにバスが停まっているところに戻ってきました。その近くに「影絵」の美術館があったので、ちょうどいいと思って入ってみましたが、個人的にかなりヒットで、いまでもよく思い出します。
要は、そういうものを「もっと見出したい」と思う人が多いのかどうか、ではないでしょうか。さらに範囲を広げてみると、最近の外国人観光客は、「どうやってわかったのだろう」と思われる場所にわざわざ訪れる人も多く(私もどちらかというとそんなところ好きですが)、そういうものが日本という巨大なインフラを作り出しているのでしょう。静かに消えていくところもあるので、実に残念ですが。神戸にあったドール用着物(生地などすべて本物)店・・あそこはもう少し続けてほしかった・・
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