韓国、長引く不況の影・・「不況型貸出」とされる「保険解約返戻金のローン担保化」が7兆円突破

まず簡略に振り返ってみますと、自営業者の分を含めずに1845兆7000億ウォンとされる、韓国の家計債務。経済活動人口が約2800万人、その中で自営業者が600万人とされていますが、2023年4~6月期のデータで1978万人が家計債務集計の対象で、彼ら平均DSR(Debt Service Ratio、総債務元利金償還比率)は39.9%、すなわち平均で年収の39.9%を債務の返済に使っています。ちなみに、総家計債務の53.7%は満期一括償還方式です。でも、家計債務関連の韓国メディアのニュースをチェックしていると、その内容も内容ですが、実は別のところで驚かされたりもします。

それは、「ここまでたくさんのニュースが出たのに、まだネタがあるのか」という点です。しかも、いままで出たことがない部分を取り上げるもので、「ま、まだなにかありますか」、と。昨日、SBS(SBSBiz)などが報じた「約款ローン」もその一つです。家計ローンがあってDSRに余裕がないと言っても(韓国メディアは、税金など含めてどうしても必要な支出を考えると、DSRは70%が限界だとしています)、人それぞれ、経済生活パターンもそれぞれなので、家計債務全体を『リスク』と見ることはできません。しかし、それでもいくつか、『弱い環』とされる部分があります。

 

本ブログで主に取り上げたのは、多重債務者です。日本とは言葉の定義からして異なりますが、3つ以上の金融機関からローンを組んでいる人のことです。これもまた、全員がハイリスク状態だと言いきることはできませんが、一般的に韓国では要注意項目とされます。今回複数の韓国メディアが取り上げたのは、同じく『弱い環』とされる、約款ローンです。これはどういうことかというと、契約していた保険金の「保険還給金(解約返戻金)」を担保にして、お金を借りるローンのことです。

それまでは保険に加入して普通に納付していたという意味なので、もっとも不況、すなわち『最近になってお金に困る人が多くなった』を表すローンの一つでもあります。この約款ローンが、はじめて70兆ウォン、約7兆円を超えました。複数のメディアが「保険までヨンクル」「典型的な不況型ローン」と指摘しながら、報じています。全体家計債務問題に比べると、金額的にもインパクトは弱いですが、こういう部分がいつも『スイッチ』になるのもまた事実。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・(※前のニュースで不況が続いていると報じた後に)このように、暮らしがくるしくなって、保険でも解約しようとしたり、あるいは解約払戻金を担保にしてローンを組む場合も増えています。これは、いわば未来に受けるはずのお金を、前もって引き出すような形での融資であり、生活がくるしいときに増加する、いわゆる「急銭(※急に必要な資金のこと)ローン」です。これが、昨年70兆ウォンを超えました。不良化の兆候もはっきりしてきました。解約返戻金を担保として受け取る融資を「約款ローン」といいます・・・・金監院によると、昨年基準、各保険会社の保険約款ローン残高は71兆ウォンです。21年度65兆8千億ウォン、22年度68兆ウォンに続き、昨年70兆ウォンを突破して最大値になりました・・

・・保険約款ローンは、保険解約返戻金の範囲内で融資を受けることができる、代表的な不況型ローンとされます。ローンだけでなく、相応の元本割れを知っていながらも保険を解約する事も増えました。昨年の全体保険解約件数は1292万件で、2年前に比べ10%以上増えました。このようなローンの不良化傾向もあります。金融研究院によると、昨年基準保険会社で融資を受けた人の32.1%は、計3ヶ所以上の金融会社から融資を受けた、多重債務者でした。この比重は、銀行(※第1金融圏、普通の銀行のこと)の3倍に及びます(SBS)・・>>

 

ちょっと調べてみましたが、この約款ローンはDSR関連の審査を受けないそうです。よって、銀行などが「もう貸せないから、約款ローンとか調べてみてはどうですか?」と教えることも多くなった、とのことです。解約返戻金全額範囲内で借りることはできず、50~90%が一般的だ、とも。そう考えると、DSRなどもあって、『借りられなくなった』人が多くなったという見方もできるでしょう。他にも似たような『不況型』指標がすごい勢いで増えている、という話もありますが・・

昨日もプロジェクト・ファイナンス関連(4月リスク)で同じことを書きましたが、データそのものよりも、ここまで多くの話が出てきて、しかもそれらのほとんどがデータに基づいた分析であること。これ自体がもっとも問題かもしれません。 はてさて、話は変わりますが、金融関連と言いますと・・今日、いよいよ日本銀行がマイナス金利解除なるか・・が注目されます。市場としては、ある程度は絞り込み済みのようですが。

 

 

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