政府が医科大学を「2000人増員する」と決めたことで、研修医(韓国でいう専攻医)の大量辞職、さらには教授たちの辞職にまで発展した、いわゆる医師スト。確か、日本でもそこそこニュースになっていました。本件、大きな進展がありました。19日、政府は「2000人という数字にこだわらず、1000人~2000人の間で各大学が自律的に決められるようにする」と発表しました。最初から「マックスで2000人」などにしておけばよかったものを、最初から「2000人は決定事項」「2000人は変えられない」というスタンスでした。
その発表が行われる二日前にもユン大統領は「2000人に変更はない」としていたので、これもレームダックの影響ではないのか、という話も出ています(発表したのは国務総理でした)。しかし、医師協会はこの案も受け入れられないとし、行政訴訟を準備していると発表しました。政府側のスタンスが急に変わったこともあるし、しかもその案が相手にもされなかったことで、複数のメディアが「事実上、政府がまけた」としています。特に国民日報は、今回の展開で「横たわればいい」という戦略が有効だったとし、あきれたような論調の記事を出しています。
案件そのものより、実はこの「横たわればいい」を紹介したくてチョイスした、といったところですが・・「横たわればいい」の「横たわる(ドゥロヌプタ)」とは、もともとは韓国の慣用表現の一つで、日本語で言う「座り込み」と似ています。たとえば、相手の家の入口の前(など)に、横たわるという意味です。最近はあまり見なくなりましたが、ネットには「テ法」という新造語がありました。テ(だだをこねる)はより強い、などの意味で、2000年代になって市民団体が事実上の政治勢力になり、合法とはいえない内容を「テ(デモなど)」で勝ちとることが多くなり、こんな表現が増えました。別に「そういう表現がある」のはいいですが、常にそのような現象がリアルで起きているわけでして。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・政府が医科大学増員規模で、いままで強調していた「2000人」ではなく、主要国立大総長らが提示した「50~100%自律募集案」を受け入れた。研修医たちが、『横たわれば終わり』という戦略が、医療現場にも復帰せず、結局は有効だったという評価が出ている。ハンドクス国務総理は19日午後特別ブリーフィングを通じて「大学別教育条件を考慮して、今年医大定員が拡大した32の大学のうち、希望する場合、増員された人員の50%以上、100%の範囲内で、2025年度に新入生を自律的に募集できるようにする」と明らかにした・・
・・国務総理は「国立大総長の提案を前向きに受け入れ、医大生を積極的に保護し、医大教育が正常化し、医療現場の葛藤を解決していく一つの糸口を設けようと決断した」と説明した。このような「自律募集案」は、江原大・慶北大・慶尚国立大・忠南大・忠北大・済州大など主要6つの国立大総長らが政府に提示した折衷案だ。来年増員分2000人の50~100%の範囲内で、自律的に新入生を選抜するようにする内容だ。政府が自律募集案を許したというのは、今まで強調してきた「2000人増援」を取りやめたことにしかならないという解釈が出ている。
全国40の医学部全員が「100%選抜」をしない限り、2000人の増員はできない。もし「50%自律募集」だけを選ぶなら、規模は1000人まで減少する。医師側は、研修医が医療現場を離脱すれば、政府がお手上げするだろうと予想してきた。彼らが医大増員方針に反発して病院を離脱して、復帰しないでいることで、大学病院では手術キャンセル事例が続出した。結局、政府が2000人増援を取りやめ、医師側のこのような予想が事実になったわけだ(国民日報)・・>>
記事は、「これで自信を得た医師たちは、今回の政府案にも応じず、前・現職の医師協会会長及び医大生たちは『増員の全面白紙化』を要求している」としています。「横たわればいい」。今回の件だけでなく、様々なシチュエーションで見られます。ユン大統領はこういう動きに強く対処するとしてきましたし、実際に労働組合のデモなどには強く対応しましたが・・今回の件で、むしろ支持者たちの離脱がおきるのではないか、そんな気もします。今日の更新はこれだけです。次の更新は、明日22日(月曜日)の11時頃になります。
で、ここから新刊のご紹介となります。おかげさまで、2024年5月2日、「Z世代の闇」という本が発売されます。20代、30代の世界観に関する本ですが、その前の世代である私が彼らについて「知っている」というのは、あまりにも一方的ではないでしょうか。彼らには彼らの世界があるわけですから。でも、社会というのは受け継がれるものであり、いまの韓国の20代、30代は、前の世代からどんな世界観を受け継ぎ、どんな世界観の中で生まれ育ったのか。それが、どんな形で表れているのか。そんな考察の本です。ありがとうございます。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。