目標時点の近くに正確に着陸するいわゆる「ピンポイント着陸」、タカラトミーの協力で作られたSORA-Qなど、多くの功績を残した日本の月面探査機(着陸実証機)「スリム」。なんと、マイナス170度の月の夜を3回も超え、また復活、地球に写真を転送してくれました。いま(25日午前)のところ、チェックしたメディアの中ではハンギョレ新聞だけが報じています。この月の夜は月面探査機などにおいて難関であり、多くの功績を残した2023年インドの月面探査機「チャンドラヤーン3号」は、残念ながら月の夜を超えることができませんでした(休眠状態から復帰せず)。それを3回も超え、まだ月面の写真を地球まで転送したスリムさん、さすがです。
スリムは、いろいろと韓国メディアでも大きく報じられました。着陸したとき、メインエンジンのノズルが一つ離れてしまい、横方向に流れ、着陸もひっくり返った状態で着陸しました。先も書きましたがスリム最大の任務はこのピンポイント着陸で、なんと高度50mまでは3mずれているだけ(それからメインノズルの問題で横方向に流れた)。しかし、韓国メディアのほとんどのスリム関連記事は、「太陽電池パネルが~」「ひっくり返って~」を強調するものばかりでした。それから、1月末、太陽電池パネルに西日が届いてスリムが復活。それからも2回「夜」を超えて復活し、今回、3回目の夜を超えました。さすがに「再起動して岩石撮影などにも成功した」とおちついた論調の記事がメインでしたが、そこまで話題にはなりませんでした。以下、ハンギョレ新聞から<<~>>で引用してみます。
<<・・日本の月着陸船が月の寒くて長い夜を三度目耐えて再び目覚めた。日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、日本初の月着陸船スリムが23日夜、着陸地周辺の姿を撮影した写真を地球に転送したと、24日、ソーシャルメディアXを通じて明らかにした。JAXAは「今まで過ごした3回の夜のうち、最も早い時点で撮影したため、全体的に明るく影がとても短くなっている」と説明した。大気のない月は、地球に前面を固定させたまま公転するため、約半月間隔で昼夜が変わる。これにより、表面温度が日中は100度以上上がり、夜はマイナス170度まで下がる・・
・・しかし、太陽電池のみで動作するスリムには、月の夜のこのような環境で着陸船を保護する別途の保温装置はない。JAXAは、スリムの活動期間を最初の夜が始まるまでの10日以内に設定していたが、スリムは予想を超えて2月末と3月末の2回にわたって夜を耐えて数日ずつ作動したことがある。JAXAは「スリムは設計上、予想できなかった月の夜を3回も超えたにもかかわらず、まだ主要な機能を維持している」とし「続けてスリムの状態を詳しく確認して、月の昼と夜の環境によって機器がダメージを受ける部分と、そうでない部分を分けていく計画だ」と明らかにした(ハンギョレ新聞)・・>>
で、なんでこんなに蘇るのか、よくわかりません。宇宙人がなにかしたのでしょうか(笑)。JAXA側も「越夜を3回も成功した理由は不明だが、SLIMのデータから、今後の月探査計画につながる知見が得られる可能性がある」と話しています(読売オンライン)。なにがなんだか。読売オンラインの記事でも、23日に通信が復旧、月面を撮影、写真を地球に送信したとのことですが、スリムの機器は月の夜に耐える設計をしていない、とのことでして。それでもまだ、「通信や太陽電池による発電など主要な機能は維持している」とも。まだ「不明」とはされていますが、スリムが残した最大の功績は、ピンポイント着陸ではなく「月の夜の超え方」かもしれません。
不明とはいえ、きっと「匠」魂あってこそのもの、でしょう。しかし、さすがにすべての昨日が正常に動いているわけではありません。朝日新聞などによると、「稼働できるのは数日と見込んでいたが、着陸から3カ月以上たっても探査を続けるたくましさを見せている。一方、月面の岩石調査に使う特殊カメラは、2月末に復活して以降、正常に動いていない。電源は入るが、撮像ができていない状態」とのことです。多分「マルチバンド分光カメラ」のことだと思われます。物質の成分まで調べることができるカメラで、1月には写真が転送されていました。先も書きましたが、これから行われるであろう「別途の保護装置も無しに、大丈夫な部分は、なぜ大丈夫なのか」の分析が、スリム最大の功績になるかもしれません。というか、そう願います。
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