最近、「構造的変化」という言葉をよく目にします。有名なのが対中輸出関連で、単に新型コロナなどの原因で赤字が出ているのではなく、もっと構造的な問題である、と。時期にもよりますが半導体の3割以上が中国へ輸出されるのである種の錯視効果があるだけで、もうほとんどの領域で中国はもう「1人に1個売れれば15億個売れる」とされる市場ではなく、技術面でも韓国のライバルになりました。電気料金でも、家計債務でも、そしてプロジェクト・ファイナンスをはじめとする不動産関連でも、この構造的な変化、一時的なものではなく構造的な変化が起きているという話が、とく出てきます。
逆に、『構造的に』変われないという話もあります。こちらはいわゆる「バリューアップ」政策で話題になりましたが、日本は十数年かけて構造的な変化を成し遂げたけど、韓国の場合は大企業による企業ガバナンス構造問題を改革できないでいる、という内容でした。昨日お伝えしたフィナンシャル・タイムズの記事にも、こういう構造的な部分がよく指摘されています。そして、中央日報が、もう一つの構造的変化を指摘しています。ソウル大学社会学科ジャンドクジン教授の寄稿文で、『人口政治学』という構造が、どんどん左側(共に民主党など)に有利になるように変化している、というのです。
これもまた有名な話ですが、韓国の政治的支持は、「年齢」と「地域」によって鮮明に分かれています。総選挙結果を表す絵(『国民の力』支持を赤い色、『共に民主党』支持を青い色にするなど)を見てみると、ほぼ半分は赤、半分は青だったりします。また、60代以上は基本的に右側支持が強く、若い人たちは左側支持が強いとされています。しかし、いまの40代・50代は「民主化運動の勝利」という強烈な経験により、60代になっても保守支持になる可能性は高くないので、人口的にも、どんどん左側を支持する人たちが増えていく、これもまた構造的な変化である、というのです。教授は、「保守派としてはどんどん不利になるだろう」「暫くの間、左側が有利になる」としています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・今回の総選挙はいくつかの教訓を残したが、その一つは、韓国が「政治人口学の時代」に本格的に入ったという点だ。人口の変化は政治的結果をもたらす。いままでも政治人口学の効果は存在してきた。嶺南・湖南人口の差(※いままでは保守支持が強い地域の人口が多かったという意味です)、「安保・成長の保守」と「民主化運動の86世代(※1960年代生まれ、80年代に大学入学した世代)」との対立などだ。朝鮮戦争と貧しい時代を経験した保守世代と、民主化運動の勝利を経験した86世代。彼らが、ある程度バランスを保っている間には、政治人口学的な側面は大して目立たなかった。
しかし、今回の総選挙で明らかになったのは、ついにそのバランスがくずれ、これから当分の間は、不均衡が深化するだろうという点だ。保守政治には思わしくない話だ。朝鮮戦争の時に10歳だったとしても、今は80代だ。経済発展の1970年代に10歳だったとしても60代後半だ。右側の土台を作ってきた世代は減少しているのに、左側は堅固に存在する。12年前の大統領選挙から、有権者たちは年を取った。朴槿恵候補を揺らぎなく支持した右側の多くは亡くなり、左側の世代的基盤である86世代有権者の半分近くが60代に入った。今回の総選挙で、共に民主党や祖国革新党を最も多く支持した世代のうち、40代・50代はいままでとあまり変わってないが、60代の「左側」化が目立つ。新しい左側の支持基盤に浮上したのだ。彼らはさらに年を取っても、同様の政治的傾向を維持するだろう(中央日報)・・>>
前にもちらっと書いた気がしますが、40代以降になると安定を重視するようになるため、人は保守政治を支持するようになると言われています。教授はこれをある種の年齢効果(時代効果)とします。ただ、教授は、「なにか強烈な経験があると、そうはならない」と言います。左派政権の誕生など、「勝利」の強烈な経験のことです。概して1960年代初頭の出生者までは年齢効果がより強いし、 彼らは年を取って保守的に変わるけど、1960年代半ば以降に生まれた人たちは、コーホート効果がより強く、「彼らは、青年時代の学生運動の経験を一生持ち続け、年を取っても保守化しない」、と。また、女性有権者たちは年令に関係なく左側を支持するようになってきたことも、保守側にとっては思わしくない展開だと指摘しています。いろいろ、とにかく『構造的に』右側を支持する人たちは『数』で勝てなくなってしまうわけです。
ちなみに、手元にある2月時点のものですが、ユン大統領支持率を見てみますと(一応、保守支持の割合と言えなくもありません)、20代で支持18%・不支持65%、30代は16%・78%、40代は18%・79%、50代は26%、68%、60代は42%・54%。70代以上は58%・28%でした。4月10日に行われた総選挙での有権者の数で見ると、18~29歳が30.67%(約1,357万人)、40~59歳37.45%(約1,657万人)、60歳以上31.88%(約1,411万人)でした。
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