韓国ソウル市の市議員37人が、高齢者には現在の最低賃金を適用しない(もっと低い最低賃金基準を適用する)ように促す建議案を発議しました。「高齢者雇用活性化」がその理由です。ソウルとはいえ市議会の建議案だし、高齢者の支持率にそのまま繋がりそうな話ですし(発議した37人の議員のうちリーダー格は与党「国民の力」の人です)、このまま成立するかどうかは分かりません。前の政権で最低賃金が大幅に上がったこともあるし(日本の最低賃金を意識していた側面もありますが)、最近の不景気、自治体が高齢者に『簡単なお仕事』をばらまいて雇用率を上げていること、自治体や政府の財政問題(税収不足により各自治体への支援も大幅に減っている)など、いくつか理由があるのでしょう。
でも、関連記事を読んでみると、「基準が守れないから、基準を変えようとしている」だけではないのか、どうしてもそんな気がしてなりません。イーデイリー、聯合ニュースなどの関連記事を読んでみると、「すでに最低賃金をちゃんと受け取っている人はそういない」とのことでして。また、去年から、最低賃金がもらえない人も300万人を超えています。記事にはありませんが(重要な数値なのになぜでしょうか)韓国の経済活動人口は約2800万人で、賃金労働者は約2150万人とされています。5人未満企業の場合は、約3分の1が最低賃金未満で働いています。こんな状況下で最低賃金適用を論ずるのは、『基準を変えて解決できたことにする』でしかないのでは。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ソウル市議会などによると、ユン・ギソプ国民の力市議員など37人は最近、高齢者に最低賃金法を適用しない「高齢者雇用活性化のための最低賃金法改正を求める建議案」を共同発議した。最低賃金法を改正し、最低賃金未適用対象に高齢者を含めることを国会や雇用労働部などに提案するというのが骨子だ。このような主張とは異なり、イーデイリーが現場で出会った高齢者労働者の多くは、すでに実質的に最低賃金を受け取らずに働いていた。代表的な業種がまさに「チラシ配りアルバイト」だ。 この日、ソウル光化門、鍾路区一帯で出会った高齢者たちは、ほとんど最低賃金に及ばない賃金を受けていた・・
・・統計庁によると、昨年5月基準高齢層経済活動参加率は60.2%で前年同月比0.8%ポイント高くなった。職業別就業者分布を見ると、単純労務従事者(23.2%)とサービス従事者(13.9%)が最も多かった。先の事例(※引用部分にはありませんが取材結果など)を考慮すれば、経済活動に参加する高齢層のうち37.1%が最低賃金とは無縁の状態に置かれているのだ(イーデイリー)・・>>
<<・・国内賃金労働者のうち、最低賃金が受けられなかった労働者が2年ぶりに再び300万人を超えたことが分かった。韓国経営者総協会は、統計庁資料を分析して作成した「2023年最低賃金未満率分析」報告書で、昨年法定最低賃金である時給9620ウォンが受けられなかった労働者数が301万1000人と集計されたと、16日明らかにした。2022年最低賃金未満労働者275万6000人と比較して25万5000人増加した数値だ。賃金労働者のうち最低賃金を受け取れなかった労働者の割合を意味する最低賃金未満率も、2022年の12.7%から昨年の13.7%に1%上昇した・・
・・また、5人未満の事業場で働く労働者のうち、32.7%に該当する125万3000人が最低賃金額未満の労働者だった。この規模の事業場では、最低賃金水準が事実上受け入れられていない状況だと、総連合会は見た・・・・ハ・サンウ本部長は「昨年の最低賃金未満率は13.7%で、それ自体でも高い水準だが、法定有給週休時間まで考慮すれば24.3%まで上昇できると推定される」と述べた(聯合ニュース)・・>>
ちなみに、OECDデータを紹介します。こちらは最低賃金『以下』データになります(韓国で集計するのは『未満』)。参考にしてください。最低賃金制度がある25カ国の中で、最低賃金以下労働者がもっとも多いのはメキシコ(25%)で、その次が韓国(19.8%)でした。ちゃんと制度が機能している国としては、ベルギー0.9%、米国1.4%、オーストラリア1.7%、日本2.0%、チェコ3.1%などです(アジア経済2023年4月2日)。制度がちゃんと機能していないのが、22位フランス(12%)、23位スロベニア(15.2%)、24位韓国、25位メキシコ。 さて、今日もまたまたまたまたまたまたまた同じ告知で恐縮ですが、おかげさまで好評の拙著「Z世代の闇」の抜粋記事が、FNNプライムオンラインに掲載されました。すべて4つあります。もしよろしければ、ぜひお読みください。3つがコラム、1つが「国際」カテゴリーです。ありがとうございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。