不景気・家計債務負担の韓国、それでも「小さな車」は売れず、相次いで生産中止

いまさらですが、韓国では家計債務が大きな問題になっています。2023年4~6月期のデータで、家計債務としてカウントされる人(自営業者ローンは含まない)1978万人で、その規模は1845兆7000億ウォンです。年収のどれくらいを返済に使っているのかを意味する「DSR(Debt service ratio)」で見ると、彼ら1978万人の平均DSRは39.9%です。すなわち、平均で年収の39.9%を債務の返済に使っています。それは、もう社会問題といわれるだけはあります。特に話題になっているのはマンションなどを購入した人たちの返済負担で、住宅購入のためにローンを組んだ人たちは、収入の6割を返済に使っているというデータ(クッキーニュース2022年12月26日)もあります。

そういう大きな流れの中、最近はあまり記事を見つけるのが難しくなってきましたが、カープアというものがあります。すなわち、車を買うためにローンを組んだけど、その返済に困っている人たちのことです。あまり記事にならないでいるだけで、この流れは相変わらずで、外国車が売れるとかの話はたまに聞きます。それに、マネートゥデイの記事によると、韓国メーカーの車も、「小さな車(軽自動車だけを意味するものではなく、準中型など一般的な韓国で「大きくない」とされる意味です)」は人気がなく、どんどん生産中止になっています。軽自動車や小型はいうまでもなく、準中型でももう1車種しか残っていない、とのことでして。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・国内市場で「小さい車」の居場所が徐々に減少している。国内の完成車メーカーがラインナップを縮小し、存在感自体が薄れている状況だ。18日自動車業界によると、起亜は来る7月からK3生産を中断する。販売量が減ることに伴う生産中止だという説明だ・・・・準中型セダンはコストパフォーマンスが重要な選択となるが、消費者としては事実上、アバンテ(※残っている唯一の準中型セダン)しか選べなくなったわけだ。ここに、準中型より小さい軽自動車や小型車も、ほとんど販売量が減った状況だ。軽自動車や小型車は購入価格と維持費が安く、景気低迷期間には需要が高くなる傾向を見せてきたが、最近はこのような現象が見られなくなった・・

・・すでに軽自動車、小型車の場合、販売量の低調で様々なモデルが廃止された。代表的な小型車だった現代車のアクセントとi30、起亜プライドが廃止された後、両社は同級でそれ以上新車を作っていない。韓国GMは2022年に軽自動車であるスパークの生産中止を決定した。ルノーコリアもSM3を2019年から生産していない。このように小さな車が居場所をを失っているのは、消費者が大きな車を好む現象によるものだ(マネートゥデイ)・・>>

 

特に気になるのは、「最近は不況なのに小さな車が売れない」という部分です。それは、前にも紹介したことがありますが、「うちには金の子牛があるぞ」という言葉です。もともとは、「うちはすごいぞ(すごいものがあるぞ)」という意味でした。しかし、いつからか使い方が変わってしまって、『自分の家に何があるか他の人たちは知らないから、ありもしないものを自慢しようとする』という意味の慣用表現になりました。「すごいもの」を意味する金の子牛が、「ありもしない、すごいもの」に意味が変わったのです。これはこれで社会風潮を表しているのかもしれません(『本当は所有していない』ものを話す人が増えた、とか)。2023年12月17日毎日経済の記事、前にも紹介したことがありますが、該当部分を引用してみます。

 

<<・・「私の家には金の牛があるぞ」とでも言いましょうか。道路では、自分が住むマンションの価格がどうであっても、預金残高がどれくらい残っていても、他の人には分かりません。車だけで自分の身分・階級と経済的状況を偽装することができるわけです。これで、自分より社会的に「上」かもしれない他の人に対し、もっと「上」として行動できるかもしれません・・・・カープア(高い車を買って経済的に困る人たち)になることもありますが、「上の人」になりたくて、問題にしないのではないか、そう考えられます(毎日経済)・・>>

 

記事は、車の種類で載っている人の序列が決まる(高い車に載っている人が『上』)と信じている人が多いため、小さな車にはすぐクラクションを鳴らす、すぐ追い越そうとする、などの行為が相次ぐ、とも指摘しています。だから、逆にこれを「自分の序列を『偽装』する」手段として使おうとする人たちもいる、と(無理して高い車を買って、いい気分に浸る)。小さな車がどんどん生産中止になるのが、すべてこのような心理の問題だとは思えません。でも、確かに影響しているのも、また事実ではないでしょうか。短く書くなら、「不景気なのに小さな車が売れない」ではなく、「不景気だから(自分に自信がないから)小さな車が売れない」になっている・・といったところでしょうか。 最後に告知ですが、おかげさまで、今回は拙著の抜粋記事が「プレジデントオンライン」に掲載されました。いわゆるZ世代関連の内容です。興味をお持ちの方はぜひお読みください。ありがとうございます。

 

 

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