韓国銀行が、物価関連でユニークな報告書が発表しました。全体の物価高についてはもう多くの報告書が出ていますが、今回のものは、『衣食住がOECD平均の160%で、どんどん上昇傾向にあるのに、公共料金は70%で、どんどん下降傾向にある』という内容です。東亜日報(19日)、アジア経済(21日)など多くのメディアが報じています。単に物価高とか上昇率とかそんな話より、様々な議論もできそうな内容です。こういうテーマは、日本や他の国のデータなどと一緒に紹介したいところですが、データはOECDのものを使っているものの韓国銀行の分析結果なので、いったん記事に書いてある内容(流通関連で日本の話も少し出てきます)だけといたします。
で、これもまた世界的にそういう傾向なのかそれとも韓国だけの特徴なのかは分かりませんが、アジア経済の記事によると、公共料金がやすいと、実は富裕層のほうが得をする(所得別に見た場合、恵沢とされる%が高い)とのことでして。全体的に物価が上がっているのに、政府がそれを(韓国では電力会社も事実上1社だけですので)おさえるために意図的に公共料金を安くしているのが一目瞭然です。ただ、電力公社、ガス公社ともに多くの赤字が累積されており、結局はこれは国民が負担しないといけません。また、いつまでこのようなやり方を続けることができるのかもまた、疑問です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・国内衣食住物価が、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均より1.6倍高く、庶民の生活費負担が大きいという韓国銀行の分析が出た。18日に出した報告書によると、昨年の国内衣類・靴類物価はOECD平均に比べ61%、食料品価格は56%高かった。住宅費は23%高い水準だった。消費者物価上昇率が最近2カ月連続2%台になり、インフレが鈍化しているのに、国民が体感できない理由が確認されたとも言える。細部品目別に見ると、物価水準はさらに深刻だ。りんごがOECD平均より3倍近く高いことをはじめ、ジャガイモ、豚肉、Tシャツ、メンズスーツなどがすべて2倍を超えた。必須消費財物価の相当数が最上位圏であり、低所得世帯や高齢層などの脆弱階層により大きな負担として作用している。
衣食住物価と公共料金の差もますます広がっている。食料品だけを見ても、1990年にはOECD平均より1.19倍高かったが、昨年は1.56倍高かった。政府が人為的に抑えている電気・公共交通などの公共料金が、同じ期間、OECD平均の0.9倍から0.7倍に下がったのとは明らかに異なる流れだ。これは、不思議なほど高い国内生活費水準が、一時的要因ではなく、構造的要因が累積した結果であることを示している(東亜日報)・・>>
<<・・電気・ガス・水道など公共料金はOECD平均の70%水準でやすいが、その恩恵は、所得が高いほど大きくなる。安い電気・ガス・水道料金で節減される家計支出額のうち、所得最上位20%である「5分位」への恩恵が26.8%だ。所得最下位である「1分位」の14.0%の約2倍水準だ。所得4分位は22.9%、所得3分位は19.7%、所得2分位は16.6%だ。所得が高いほど、公共サービスに対する価格弾力性が高くなるため、公共料金が低い場合、高所得層でエネルギー消費が増える現象が現れる可能性が高い。
食料品価格は、OECD平均の156%とすごく高いが、その被害は所得が低いほど大きくなる。食料品の所得分位別消費比重を見ると、最下位所得層の1分位が20.3%で、最上位所得層5分位(11.8%)の約2倍水準だ。所得2分位は16.3%、所得3分位は15.3%、所得4分位は13.4%だ。低所得層は主に安価な製品を消費しているため、価格上昇時にはより安い製品に置き換えることができず、物価負担が大きい。農産物は代替可能性が低く、特に脆弱層に影響が大きい・・・・低い電気・ガス・水道料金で所得が高いほど恩恵を多く得ており、高い食料品価格は所得が低いほど問題が大きくなる(アジア経済)・・>>
住宅関連がOECD平均と比べて思ったほど(食料品に比べると)高くない・・のはちょっと意外でした。他の国もいろいろとすごいことになっている、といったところでしょうか。また、公共料金も富裕層に恵沢が多いというのも、ちょっと意外です。電気や水道などは所得に関係なく、できる限り節約するものだとばかり思っていましたが。これ、他の国ではどうなのか気になります。また、本ブログで書いてきたこともあるし、物価や所得などの話をすると、いつ家計債務の返済にかかる費用が気になります。輸入が多い国で物価を下げるとなると、基準金利引き上げに関する話が多いですが、基準金利を上げると、こちらが増えてしまいますから。固定金利以外は。
2023年4~6月期のデータで、韓国の家計債務集計対象は1978万人(自営業者ローンの分は含まず)です。ちなみに、経済活動人口が約2800万人です。その規模は、集計当時で1845兆7000億ウォン。彼ら1978万人の平均DSRは39.9%。すなわち、彼ら1978万人は、平均で年間所得の39.9%を債務の返済に使っています。住宅購入のためにローンを組んだ人たちだけだと、DSRが60%を超えるという見解も出ています。債務があるからって全員こまっているというわけではないでしょうけど、相応の分の返済が行われているのは事実。これは他国に比べてすごく高いとされており、この分まで考えると、実際に体感する物価はもっと高くなるのではないでしょうか。これでも、家計債務の(金額基準)53,7%は「満期一括償還方式(元利均等返済ではなく、利子だけ返済し、元金は満期が来たら一気に返済するタイプ)」ですが。 あと、急にまったく関係ない告知で恐縮ですが、明日は1日、また休みをいただきます。今回はツアーじゃなく、別の用事でちょっと出かけることになりました。次の更新は、23日(日曜日)の11時ころになります。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。