「他人と比較しすぎで出生率が下がる」現象、米国学術誌やエコノミストなどが指摘・・「中国と韓国はよく似ている」

「あまりにも広い範囲で、他人と比べること」。本ブログだけでなく韓国内の専門家たちもよく取り上げる、韓国社会の一般的な風景です。他の国では似たような立場(たとえば所得水準など)の人を意識することが多いけど、なぜか広い範囲、言い換えればものすごくリッチな人たちと比べてしまう、そんな人が多い、と。しかも、「私もああなる『はず』だった」とし、誰かの正しくない何かの行動で今の現実がある、そんなふうに考える人が多い、と。6月24日にも取り上げたばかりですが、高価な製品を買う理由が、日本では「長く安心して使えるから」、米国では「ビジネスだから」、韓国では「他人を意識するから」が多いと言われる所以でもあります。

これについて、なんと、米国の経済学術誌に論文が載りました。私が知らないだけかもしれませんが、本件がこんなふうに学問的に展開されるのは初めてのことです。個人的に、結構重要なことだと思いますが・・韓国内ではニュース検索してもヒットせず、中央日報の別の記事でこのことを知り、個人ブログでの紹介などを通じて、やっとソース記事と呼べるものにたどり着くことができました。本ブログでは4月の『ボストンコリア(4月11日)』という米国の韓国語メディアの記事を引用していますが、論文そのものに興味がある方は、American Economic review(AER)の論文をお読みください。まず、先「別の記事」と書いた中央日報の記事ですが、日本語版も出ていますが、『優秀な人は全員(日本語版には『大半』となっていますが韓国語版では『全員』です)医師になると言っている』という趣旨の記事です。

 

医師出身で、香港科学技術大学のキムヒョンチョル教授の寄稿文で、「理科の成績1位から3058位までは全員医科大学に行くと言われている(医科大学定員が3058人です)」としながら、理工系をもっと大事にすべきだという趣旨の内容です。そこで、『私教育(塾など)』関連の話が出てきて、このデータの話も出てきます。そこからスタートしてボストンコリアの記事、論文ソースまでたどり着くことができました。元ソースになった論文は、セゾン大学キムソンウン教授のもので、AER誌に6月掲載されました。ボストンコリアの記事は、『いつからか、判断基準が『他人』になってしまった」としながら、私教育も結局はそのために流行っているだけたとしながら、私教育など『他人を意識する』ことさえなくなれば、出生率を28%も引き上げることができる、という論文の内容を紹介しています。ちなみに、別の記事の話ですが、ほぼ同じ現象が現れている国があって、それは中国だとのことです。今回の以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・「他人に見られて恥ずかしくないように」(※日本だと『正しく生きる』といったニュアンスになりますが、韓国では豊かに生きるという意味です)など、いつからか他人が基準になってしまった韓国だが、他人との比較は高い対価を支払っている。韓国の出生率が、他人との比較から始まる私教育費と直接関連するという事実が経済学的に明らかになった。米経済学会レビュー(AER)誌に6月に発表される予定のキムソンウン世宗大(※経済学)教授の論文は、韓国の私教育費支出が他の人との比較によって決定され、これにより出生率問題にまでつながることを経済学的に証明した・・

・・キムソンウン教授は論文で「他人と比較する外部性(Externality)がなければ、出生率(Fertility rate、ある女性が妊娠可能期間に出産する子の数)」は28%も高くなるだろう・・・・と明らかにした。この論文は韓国の出生率低下に対する直接的な原因を、比較心理と連結した最初の研究となる。韓国社会の低出産問題は、子どもの養育の負担・・・・教育環境と未来不確実性、社会の競争心理と、過剰誇示の社会的圧力など、様々な原因に起因すると言われている。特に、ドンドク女子大学ソン・スンヨン教授は2005年の論文で、深層面接を通じて、低出産の原因を「経済的な理由」、「子の教育」、「競争心理」から見つけた。

 

キムソンウン教授はこのアプローチを越えて経済学的に出生率低下を分析した。キム教授は経済的負担が大きい私教育費支出決定において、他人との比較による「外部効果」が重要な役割を果たすと見た。外部効果とは、特定人の行動が第三者に意図しない恩恵や支障をもたらし、その対価を受けない、または支給しなかった場合を指す・・・・キム教授はこれを「スピルオーバー効果」と説明した。スピルオーバーは、関係がないように見える状況でも、他の状況によって引き起こされることを言う。このようなスピルオーバー効果は中国でも観察された。経済専門誌エコノミストはインターネット版の報道で中国の出生率低下を研究した論文を報道し、この出産率低下の原因として「スピルオーバー効果」を挙げた・・・・記事でエコノミストは、キム教授の見解を引用、中国の他に他人と比較するところは韓国があるとし、韓国の私教育市場のことを指摘していた(ボストンコリア)・・>>

これだけでもないでしょうけど、一応、こういう主張が学術レベルで認められるのはいいことだと思います。韓国の合計出生率は、もはや研究対象とまで言われていますから・・と、それはそうとして、明日はまたちょっとした旅行の日で、1日休みをいただきます。次の更新は、7日(日曜日)の11時頃になります。

 

 

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