韓国不動産市場、マンション団地工事の中断で「『事前請約』の取り消し」も相次ぐ

以下、「そこまで話題になるようなことかな?」と思われるかもしれませんが、韓国不動産市場においてはシステム的にかなり珍しいことになります。「請約」という言葉、久しぶりに取り上げてみます。中国も同じだと聞きますが、韓国ではマンションが完成する前、いや工事すら始める前に買うのが一般的です。詳しくは「売ってくださいとお願いする」ですけど。どうせマンションを買うと、「値上がりするに決まっている」ことになっているので(実際はそうでもありませんが)、人が集まるし、まずは『誰が買えるのか』を決める権利、いわば買う権利が必要になります。基本的には抽選で選びます。その抽選に応募すること、それを「請約」と言います。

この請約で当選し、分譲権が手に入ると、もうそれだけで「勝ち組確定」と信じられるようになります。この分譲権だけをプレミアム付きで取り引きする人も少なくありません。これが、数万件の未分譲だけでも各経済メディアが緊張する理由でもあります。ある程度のマンション団地で未分譲が発生するというのは、いつもならかなりの異例であり、下手すれば市場のシステムそのものに影響するからです。ちなみに、未分譲があると知られると『値上がりしないという意味なのか』ということになるため、未分譲として公表されない(建設会社自ら届け出ないと、カウントされない)物件も多いとされています。

 

さて、その請約ですが・・その請約が加熱されるのを防ぐために、「事前請約」というものもあります。本請約の前に一部の人たちから事前の請約を受ける制度です。でも、今年5月に廃止されました。なぜなら、不動産景気が沈滞し、建設のための費用が高くなったことなどで、「事前請約のときより、本請約のときの価格が高くなる」というクレームが多くなったからです。事前請約のときは推定分譲価格を提示しますが、から本請約(実際の分譲価格)までそこまで期間が離れているわけでもないのに、施工社からすると、その間の分すらも負担することができなくなってきたわけです。そんな問題が多く、5月に廃止されました。ちなみに始めたのは、文在寅大統領です(そもそも、加熱防止という効果も微妙でした)。

事前とはいえ、この請約に当選すると、勝ち組直行のようなものと今までは認識されていましたが・・なんと、その事前請約(当選)を取り消すことが相次いでいます。事前請約だろうとなんだろうと、請約をちゃんと受けると、施行会社(マンション団地建設プロジェクトの総括会社)や施工社(建設会社)からするとそれが「実績」になるので、初期段階のプロジェクトファイナンスローン(ブリッジローンなど)をもう少し金利が安いものに乗り換えることもできます。にもかかわらず、なんで事前請約者たちを取り消したのでしょうか。

 

理由は簡単で、不動産景気の問題で、マンションを作ることができなくなったからです。本請約で価格上乗せするだけではもうどうにもならなくなった、と。すなわち、「プロジェクト」そのものが止まったという意味です。「事前」とはいえ、請約を取り消したのは(国会議員の個人調査で)今年になってから5箇所(5社)、1500世帯分。すべて首都圏です。実はもっと多いとかそんな展開もあるかもしれませんが、まだそこまで規模が大きいわけではありません。しかし、韓国の不動産システムではありえない事案でもあって、今日地上波放送SBS(SBSBIZ)など多くのメディアが報じています。当選された人たちは、いわば「勝ち組切符」が急に無くなったようなものですし、純粋にマイホームを願っていた人たちは、契約金などを払う日のためにいろいろ計画していたり、そうしていたはず。ソース記事ではなくニュース1の関連記事(今日)によると、彼らは政府に「請約当選者としての地位を政府が保証すべき」と言っているそうですが・・そんな法律はありません。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・首都圏で事前請約を受けた民間分譲マンションが建設景気低迷で相次いで事業が取り消され、当選者たちの不安感が高まっています・・・・(※一例だけ引用します)土地を供給した韓国土地住宅公社(LH)によると、「リージェンシービル住宅」は中途金(※不動産契約などでは、契約金→中途金→残金の順で支払います)の一部を6ヶ月以上延滞し、4月に金融機関から期限利益の喪失通知を受けました。金融機関はLHに土地解約を要請し、先月20日に公式に解約措置が行われました。期限利益の喪失とは、債務者が信用リスクが大きくなる、または返済できなくなった場合、満期前に貸し出した資金を回収することです。このように事前請約までできたのに取り消される事例が、今年になってからもう5件目です。このため、当選した人たちの間では不安感が大きくなっています(SBSBIZ)・・>>

 

中国でも、このような問題が起きていた・・と聞きます。中国も完成前にマンションを買って、そのために想像を超えるレベルの『当選のための』たたかいがあって、それでやっと契約までできたと思ったら工事が止まってしまった、と。本件の場合、そこまでは行かなかっただけ(事前請約契約金などを支払う前だった)まだ良いほうですが・・さて、8日にもエントリーしましたが、プロジェクトファイナンス関連はまだまだ収まらず、PFに全力投球していた第2金融圏でも財務状態関連でいろいろ聞こえてくる今日この頃。青年関連問題で「中国が韓国のようになるかもしれない」という教授の話を紹介しましたが、不動産関連問題では「韓国が中国のようになるかもしれない」という展開になるのか、それとも『なにかの秘策』でソフトランディングに成功するのか。どうでしょうね。鍵を握るのは次の政権かもしれませんが。

 

 

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