韓国メディア、および政治家たちは、バランス(バランサー)やハブという言葉をよく使います。どこから、いつからはじまったかまでは分かりませんが、個人的に、盧武鉉政権のときに「金融ハブ」「物流ハブ」という話が有名でした。政権が変わってからも、似たような話はありましたが、文在寅政権になって再び「バランサー(運転者論)」と「ハブ(南北鉄道連結)」が盛り上がりました。結果がどうなったかは、わざわざ書く必要もないでしょう。
その盧武鉉政権のとき、記事によるともう2002年のことだそうですが、金融ハブという言葉が出てきてから、もう22年。その間に外国銀行がどうなったのか、そして関連した話を、中央日報が複数の記事(その1,その2)で報じています。結論から書きますと、11行が撤収し、残っている銀行も、いろいろおもわしくない状況だとのことでして。理由はいろいろあるでしょう。記事で指摘しているのは、信用ローン以外はこれといって『稼げるところ』が無いなど、市場そのものの問題でもあります。また、『政府の介入』があります。本ブログで何度か取り上げた、ELS(この場合、香港指数連動商品のこと)を覚えておられますか。投資商品なのに、大幅なマイナスになるとたん、政府は『売り方に問題があったのでマイナス分の一部を銀行が負担すべきだ』と結論付けました。
他にも、ソース記事には書いてありませんが、ローン利率への介入など、いろいろありますし、そこには『銀行は強者だから、弱者に配慮すべき』という考え方があります。一部の専門家は、これを『福祉は金融機関の仕事ではない』とも表現しています。先のELSの件も、購入者も政府も「高齢者が購入したのでよくわからなかった」としていますが、実は購入者のほとんどが前にもELS商品を購入したことがある人たちで、銀行側は「彼らを、『投資家』としてみるべきだ」としましたが、政府は受け入れませんでした。投資家たちは銀行側の販売に問題があったというスタンスで、金融当局もそれを原因とみて調査を進めました。
1月15日中央日報などによると、購入者たちは、「『銀行から通帳が出てきたのでみんな預金だと思った』とか、『香港ハンセン指数が何なのかも知らなかった』と個人投資家たちは声を高めています。しかし、前にもELS投資経験のある加入者が、10人のうち9人、91.4%。記事は、「早期償還などで利益を見た時は何も言わず、元本割れが発生すると、不完全販売だったと主張するとは、これはどういうことなのか」との指摘も載せました。それから、結局金融機関が一部を負担することになりましたが、5月17日電子新聞の報道によると、これにはスタンダードチャータード、シティーなども、同じです。以下、両紙から<<~>>で引用してみます。
<<・・17日、釜山にある山口銀行の門は固く閉まっていた。1986年釜山に支店を設立し、韓国に入ってたこの銀行は、先月末に国内営業を終了した。現在は韓国・日本人職員が少数だけ残って事務所を整理している。山口銀行の関係者は、「住宅・ジョンセ(伝貰)・信用融資中心の韓国市場で、日本系銀行として収益を上げることが難しかった」とし「特にグローバル金融ハブで育てるという釜山の成長が停滞し、外国系銀行の生存も大変になった」と話した・・・・匿名を求めてきたある外国系金融会社の関係者は、「昨年、利益が多くなったという理由で、『共生金融であるべきだ』とか『橫財税の導入を』などの論議もあり(※特定変数で多くの収益を上げた場合、たとえば金利上昇で銀行の収益が増えた場合などには、特別に高い税金をかけるべきだという内容)」・・
・・「今年は香港ELS負担など金融当局の圧迫が強い」、「グローバル本社に韓国の規制を説明、理解させるのも難しい。米国のように、とまでは言えないにしても、アジアでも当局の影響力が強い」と話した。外国系金融会社は、相次いで離れていくばかりです。2013年末に57個に達した外国系銀行の支店数は現在39個に減少しました(※「記事その1」によると、銀行の数で11行)。米国系シティ銀行は消費者金融事業から撤収し、先月は日本の山口銀行が店舗をたたみました。それだけ、私たちの青年たちは仕事を失ったのです。国内の人たちも、米国に投資する熱風が吹いています。グローバル分散投資というには、あまりにもかたよっています(中央日報)・・>>
前にも何度か書いた記憶がありますが、韓国は経済規模に比べて、金融と福祉が弱いのが特徴です。どちらも、「IMF入り」が大きな理由でした(他にもいろいろありますが、そういうことになっています)。そんな中、金融に福祉を任せようとするわけですから・・いつまでこの路線になるのでしょうか。保守政権でもこれですから、もし政権交代でもあったら、どうなるのでしょうか。 で、昨日1回休んでおいてこんなことになって誠に申し訳ございませんが、明日も1日休むことになりました。次の更新は、7月21日(日曜日)の11時頃になります。
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