日米、はじめて「核兵器を含む拡大抑止」を明文化・・米韓はどう動いているのか

「核兵器を含む拡大抑止を明文化、日米が初の共同文書・・・中国・ロシア念頭に年内策定を目指す」という記事がありました。聯合ニュースなど韓国メディアの報じていますが、元ソースは読売新聞です。もともと日本、NATO加盟国、韓国に対しては、米国は「そういう対応をするよ(核戦力も使うよ本当だよ)」ということにしていますが、意外と文書化はかなり珍しいことだそうです。ひょっとして、先週あたりからあった韓国の「共同指針」というのが、実はこれがやりたかったのかな、そんな気がして、エントリーしてみます。まず記事から引用して、そのあとに韓国での話に移りましょう。<<~>>が引用部分です。

<<・・日米両政府は、米国の核を含む戦力で日本を守る拡大抑止に関する初の共同文書をとりまとめる方針を固めた。日米の外務・防衛担当閣僚が今月下旬、東京で、核抑止力などを巡る協議を開催して方向性を確認する・・・・日米間の拡大抑止を巡る実務者協議の内容は、軍事行動に関する機微なやりとりが含まれるため、詳細な公表が控えられてきた。だが、近年は「日米が緊密に意思疎通していることを外国に見せること自体が抑止力になる」(日本政府関係者)との考えから、協議内容の概要に限って公表されるようになっている。共同文書の詳細は安全保障上の理由で公表されない見込みだが、文書の作成自体は対外的に打ち出す方向だ(読売新聞)・・>>

 

で、実は7月12日、韓国でも同じことがありました。ただ、こちらは「そんなこと言ってない」フェノメノンが出ています。12日、韓国政府は「はじめて米国の『朝鮮半島有事の際、核戦力も使用する』と文書化できた」と発表しました。正式名称はもっと長いですが、多くのメディアでは一般的に『共同指針』と書いています。韓国にある既存の戦力と、『朝鮮半島のために特別に割り当てた(後述しますが大統領がこう話しています)拡大抑止のための核戦力が、一つのシステムで動くことになった、というのです。ただ、先の日米のものもそうですが、こちらも内容は公開されていません。ただ、公開されていないので確認まではできませんが、「そうは書いてない」という話も出ています。

 

まず16日のイーデイリーから、同日の国務会議でユン大統領が話した内容を引用してみますと、「ついに韓米が共にする一体型拡大抑止システムが強固に構築され、韓米同盟は名実共に核基盤同盟でしっかりと格上げされた。(※朝鮮半島問題のために米国が核戦力を)特別配分することで、もはやどんな種類の北朝鮮核問題にも素早く、効果的に対応できる態勢を構築した」。特別配分された戦力としては、核兵器搭載の潜水艦などが挙げられました。しかし、7月18日に取り上げたばかりですが、17日ボイス・オブ・アメリカとのインタビューでヴィピン・ナラン アメリカ国防部宇宙政策次官報は、「特定の核戦略潜水艦(SSBN)が朝鮮半島だけ監視するのか(すなわち、特別配分されたものなのか)」という質問に、「そうではない」と答えました。他にも記事をいくつか読んでみると、『事実上』という言葉が結構出てきます。繰り返しになりますが、内容までは確認できないものの、明確に文書化できたのかそれとも迂回ルートな表現になっているのか、ちょっとわかりません。

 

ちなみに、米国政府の人がボイス・オブ・アメリカに実名で「ユン大統領の発言、それはそういうことではない」と話したのに、この件を取り上げているのは、ソース記事のネットメディア「プレシアン」だけです。他にもいくつか記事が出ていますが、「核武装には反対していた」な内容だけでした。日本の場合も、公表される内容は限られるだろうという話だし、どこまで確実に文書化できるかはまだ分かりません。ただ、読売新聞の記事を読んだ限りだと、「ユン大統領がやりたかったのって、実はこういうことじゃなかったのかな」な気もします。

あと、韓国側の関連記事には『北朝鮮』関連しか出てこないのも、ちょっと妙だなと思いました。この部分は、14日に紹介した、韓国安保専門家の「外交が『無い』」見解とも繋がる気もしますが・・米国が、まさか北朝鮮問題『だけ』のために共同指針まで作ったとはちょっと思えませんが。いくつか記事を読んでみましたが、今回の読売新聞に載っているような「中国やロシア」関連の話は、いや話というか、単語そのものが出てきません。この時期に拡大抑止を語りながら、中国やロシアの話が出てこないとは、これはこれですごい話です。

 

 

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