随分前から本ブログでも取り上げてきましたが、韓国には建国節議論というものがあります。初めて聞いたという方々もおられましょうから久しぶりに簡単に書いてみますと、『韓国が建国した日はいつのなのか』、という議論です。昔からあったので詳しくわからないというならともかく、「1919年3月1日」なのか、「1948年8月15日なのか」と、そこまで昔のことでもないのに、いまだ議論が続いています。ちなみに、世論調査などを見てみると、前者(1919年)が支持されています。
1919年3月1日を建国と見るのは、その日に、後に臨時政府と呼ばれる団体が「私たちが政府だ」と宣言した日だからです。これは、併合時代にも合法政府が存在したこと、すなわち「併合時代は合法的な統治ではなかった(ちゃんと別の政府が存在した)」ということになるため、韓国ではこの説が強く支持されています。憲法前文などにも似たような記述があるため(『臨時政府の正統性を受け継いだ』とする旨)、いまのところ、これでほぼ決まっているとも言えます。
ちなみに、いまは「建国節」という記念日が特になく、最近の記事などで出てくる「建国節制定」というのは、1948年8月15日を基準にした国家記念日を制定しようとする動きのことで、先の3月1日支持者たちは「建国節を制定する必要はない(1948年8月15日説を言い出すな)」と主張しています。保守全体というわけではなく、いわゆるニューライトなど一部ではありますが、1948年8月15日、すなわち公式に政府が樹立されたときを建国と見る見解が出てきました。国家としての韓国を重視する見解であります。どこをどうみても1948年8月15日に建国したとしか思えないので、現実的な見解だとも言えるでしょう。先も書きましたが、1919年建国したという話は、日本を意識しているだけですから。ちなみに、これは正統性という概念とも繋がっています。マックス・ウェーバーのlegitimacy(統治の名分)と儒教思想の 嫡統(嫡流)を合わせたようなもので、『それまでの半万年を継承する資格は私たちにある』というものです。大まかに書くと、ですが。
朴槿恵大統領が2016年に「建国68周年」と演説したことで(すなわち、1948年建国である)、また話題になったりしました。その次の文在寅大統領は、2019年を「建国100周年」と演説しました(すなわち、1919年建国である)。わずか3年で32年が増えました。もうわけがわかりません。最近、またこの建国節が問題になっています。ユン大統領がニューライト系の人を登用しようとするなどの理由です。保守系メディア「チャンネルA」によると、ユン大統領を支持していた人たちも『ユン大統領本人がどう思っているのか、ハッキリ言うべきだ』としています。言い換えれば、ユン大統領に「併合時代は合法的なものではなかったとハッキリ宣言しろ」と言っているわけです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ユンソンニョル大統領の、57年間も親友であり、彼の政界入門を助けたイチョルウ延世大法学専門大学院教授が、ユン大統領に対して「大韓民国の基調が何なのかはっきりと話すべきだ」と促しました。イ教授は今日(12日)チャンネルAとの通話で、「今は大統領が直接出て立場を明らかにし、本人自ら話さなければならない。大統領がこれを正してしてこそ、すべての問題が解決される」と述べました。続いて「大統領は最高裁判決についても肯定的な考えを持っていた方だ」とし「大韓民国政府が今までの政権が取ってきたように、併合時代の統治は違法だったことを明らかに、強調して、建国節(※1948年8月15日建国主張)というものが根拠ないということを明らかに明らかにすればすべての問題が解決される」と言いました(チャンネルA)・・>>
大統領室はこのような動きに対し、『建国節などは推進しない』と話しました。これでまたしばらくは収まるかもしれませんが、いずれまた再発するでしょう。ちなみに、ネット事典で読んだだけではありますが、「紀元前2333年10月3日が建国節だ」という主張も出ているそうです。さすがだな、と思いました。
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