黒田勝弘産経論説委員が伝える、ある『用語』の話・・「実は北朝鮮から入ったものです」

黒田勝弘産経新聞論説委員が、日帝強占期という用語について取り上げて、韓国でも話題になっています。併合時代について、戦後、韓国では「合邦だった時代」などの表現を使う人たちもいました(具体的な用語があったわけではなく「合邦の時代には」などと話す人が結構いました)。でも、もっとも一般的に使われるようになったのが、「日帝時代」です。しかし、詳しくいつからかは分かりませんが体感的に2000年代になってからは、教科書や各メディアでは「日帝強占期」という言葉がメインになりました。というか、これ以外の単語は使ってはいけないという雰囲気になりました。

なんというか、一つ前のエントリーで書いた、『違法的なもの』という側面を強調したものだとも言えるでしょう。その単語について、産経新聞の黒田勝弘論説委員が、『北朝鮮から入ってきたもの』と話しました(産経新聞の有料記事)。台湾では日統時代(日本が統治していた時代)と言っているし、似たような例として海外でも「英国統治(ブリティッシュ・ルール)」とするなど、どちらかというと中立的な表現が多いのに、強占を強調するのは異例のものである、と。そして、これは実は北朝鮮から入ってきた用語であり、米国関連の単語とセットで出来ているものでもある、とも。

 

で、このことで、いわゆる『スイッチが入った』状態になり、韓国では「1980年代までも『強占』が使われていたんだもん」という記事が出ています。「強占の下」などの表現が、1980年代にもよく見られうというのです。それは、内容的には韓国でそう教えていたからそうでしょうけど、ここでいうのは『用語』の問題で、1980年代には日帝強占期という用語はありませんでした。一つの単語、事実上公式になった用語は『それ以外は間違っている』とする影響力を持つけど、1980年代にはそんなものはなかったわけです(日帝時代という用語がメインだった)。でも、そこまでは考えていないようです。以下、<<~>>で京郷新聞のほうを引用してみます。

 

<<・・黒田委員は「最近、韓国では20世紀前半、韓国が日本の統治を受けた時期を日帝強占期と呼ぶ。以前は単に「日帝時代」と言っていたのがいつのまにか「強占」が加わり、教科書やマスコミすべてそうしている」とこのように語った・・・・黒田委員は「意外な事実を発見した。この用語は実は、北朝鮮からもたらされたものだ」とし、「北朝鮮の用語で、1945年以降、韓国は米帝強占期、それ以前の時期は日帝強占期になっていたという。こうした北朝鮮由来を指摘し批判した保守派学者たちの研究書も存在する」と話した。それとともに黒田委員は「知人の学者に『学界にプライドはないのか』と言ったら、(※その知人さんは)『日本批判なら北朝鮮とも同調するのが韓国知識人の現住所ですよ』と笑った」と話した(京郷新聞)・・>>

 

で、この件、本ブログのファン(多分)の方々なら「それ、前にどっかで聞いたことがあるような・・」と思われるかもしれません。実は韓国内でも10年前に同じ主張があって、本ブログでも紹介したことがあります。前に紹介したソース記事は消えてしまったようで(掲載していたメディアそのものがなくなりました)、こちらは2014年1月26日「ニューデイリー」の記事ですが、各種教科書を分析して、それらが北朝鮮の書籍に書いてある内容とそっくりだと指摘した、当時耽羅(タンラ)大学・丁慶姬(ジョンギョンヒ)教授の主張です。

 

丁教授によると、1980年代中後半に進歩(左派のことです)学者たちが各種団体を設立、『これは学術団体ですからね』と組織的な運動を展開しました。教授は、その際に彼らが掲げたものが、民衆が主体となり、『主』となる社会を建設するための変革を模索することが目標だったと言います。韓国の市民団体は、民衆(または『市民』)とか、自発的とか、そんな言葉を好んで使いますが、結局は「その民衆を代弁する私たちこそが『主』にふさわしい」とします。これ、北朝鮮の主体思想とそっくりです。人間は自分の世界の主体であるべきだとしながらも、その人間は集団を成さないといけないので、その集団の主体である金日成こそが各個人にとって『主』となる、そんなところです。頭痛いですが。

 

「彼らは、大韓民国を帝国主義アメリカの植民地と認識しており、私たちの近・現代史を支配階級と被支配民衆の対立構図として捉えています。実例として、『日帝時代』を、北朝鮮式用語である『日帝強占期』に変えたのも、彼ら民衆学者です。これは、北朝鮮が終戦前と後の韓国を、それぞれ『日帝強占期』と『米帝強占期』に区分しているのと、一致します。すなわち、いまの米帝強占期と対をなす北朝鮮式用語なのですが、民衆学者たちはこの趣旨に同意して、この用語を選択したのです」。すなわち、『いまは米帝強占期です』とセットで使っている用語なのに、韓国がそれをそのまま受け入れて教科書などに使っている、と。この主張、まったく話題にならず、そのまま消えました。なんというか、これは左派や北朝鮮だけの問題ではありません。日帝強占期という用語を『待ち望んでいた』社会だからこそ、すんなり受け入れられたのでしょう。

 

 

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