韓国の新任金融委員長、「私たちは今、債務中心の経済」と指摘・・民間債務のGDP比、日本120%・韓国200%

5日の記事ですが、ちょっと遅れて紹介します。韓国の新任金融委員長(金融当局の長)キムビョンファン委員長が、『債務中心の経済であり、これを変えなければならない』という旨を話しました。いままでは債務中心だったけど、それを資本中心のものに変える、というのです。金融委員長となるとかなりのハイレベルですが、そういう人から『債務中心』という言葉が出てきたのは、初めて・・かもしれません。これもまた恐縮ですが、初めてなのかそれとも私が知らないでいるだけなのかは未確認です。いままではどちらかというと、改善について話しながらも『コントロールできる範囲内』という内容が中心で、どちらかというと『問題だが問題ない』なものばかりでした。

世界でも珍しく家計債務がGDP比100%を超えている韓国(日本もそうですが一般的には60%~70%とされます)。本ブログだけでなく各メディアが結構大きく取り上げてきた家計債務、自営業債務、そして企業債務など政府・公共機関以外の債務を『民間債務』としますが、その民間債務について、韓国はGDP比206.5%とされています(ソウル経済8月5日)。少なくとも2000年代になってからの韓国経済の成長は、2つの動力によるものでした。一つは、マンションなど不動産神話による家計債務の急増。もう一つは、中国経済の成長。その一つをハイレベルの人が(本ブログと趣旨は異なるでしょうけど)ちゃんと指摘したことは、それなりに意味があるのかもしれません。次の政権になるとまた金融委員長も別の人になるでしょうけど。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・キムビョンファン金融委員長が5日、「実物経済との連携の下、債務を適正水準に安定化させる」と明らかにした。委員長はこの日、ソウル中区銀行連合会で開かれた金融リスク点検会議で、「債務対応という課題は、債務の規模そのものを縮小するという意味ではない」と述べた。債務の総量ではなく、国内総生産(GDP)に対する債務の比重を下げてリスクを徐々に減らしていくということだ。金委員長は「債務問題は短期間で解決するのが難しいだけに、長い時計でソフトランディングを図っていく」と話した。金委員長は「韓国の金融システムが外部からの影響に弱い根本的な要因は、主要国に比べて高い債務比率と、その債務への依存にある」と診断した。金融委によると昨年末基準で国内民間(家計・企業)債務は4959兆ウォンでGDPの206.5%に達する・・

 

・・金委員長は「経済の持続可能な成長とダイナミックさの回復、金融安定のために、債務中心の構造を改善していくことが重要だ」とし「現在進行中の債務対応政策を一貫して推進していく」と伝えた。家計債務管理のために2・3段階のストレス債務元利金償還比率(DSR)を予定通り推進し、借主の所得を考慮して融資限度を定めるDSR中心管理体系も強化する計画だ。委員長は、債務依存度が特に高い不動産プロジェクトファイナンシング(PF)事業構造も手をうつと明らかにした。金委員長は「不動産への資金集中防止のための制度的対応策を講じるなど、債務依存度が過度に高い不動産金融構造を果敢に改善する」と強調した(ソウル経済)・・>>

 

総額の問題ではないとか、所得に合うレベルで借りられるようにするとか、そんな趣旨には共感できます。でも、引用部分にも何度も出てくる『構造』という言葉。これを変えることができるのか・・となると、さて、どうでしょうか。本ブログでは7月23日に紹介しましたが、。5月24日マネートゥデイの記事で、記者は(日本で実際に感じた『お金を借りる』という認識が日本と韓国とではかなり異なるとし)韓国の「債務」に関する認識を「お金を借りる風潮が蔓延し、それが『当然』になった雰囲気」と説明しています。個人的に、この表現こそが『構造』をよく表したもの・・と思っています。

 

2023年4~6月期のデータで、韓国の「家計債務」集計対象は1978万人(当時1845兆7000億ウォン)。自営業者の一部はカウントされません。ちなみに韓国の経済活動人口は自営業者まで合わせて2800万人です。家計ローンの「満期一括償還方式」、すなわち、いつもは利子だけ払って(元金は返さない)、満期になったら一気に返済する形のローンが全体の53.7%です。それでも、家計債務1978万人の平均DSRは39.9%。すなわち所得の39.9%を債務の返済に使っています。もちろん、この分は、たとえば平均賃金など各種所得関連データには反映されません。

こんな状態で、この構造を『変える』ことができるのか。はてさて。どうでしょうかね。キムビョンファン委員長は16日、日本を訪問しました。初めて選んだ外国(会議相手)が日本だそうです。日本金融庁長官などを会同し、株式市場、金融、企業バリューアップなどについて話す、とのことですが・・なにを話すのでしょうか。YOUはなにしに日本へ? 関連内容として、政府債務については8月4日にエントリーしたばかりですので、そちらを参考にしてください。あと、これはこれで本ブログとしては重要な『告知』ですが、おかげさまで、昨日レナが10歳(私と出会ってから10年)になりました。ありがとうございます。

 

 

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