「キャンプデビッド」日米韓首脳会談の1周年ということで、日米韓の首脳たちが共同声明を発表しました。ざっくりまとめると、安保、経済、技術、人的交流において、これからも協力を強化する意志があり、それを再確認する、という内容です。それは、ま、意志があると再確認するなら別にいいですが、私は個人的に「1周年記念で声明をだすほどのことかな」、と真っ先に思いました。日本も米国も、もうすぐ首脳が交代する(米国の場合は政権交代になるかもしれない)ことになるので、そうなってもこの内容は変わらないようにする、してほしい、という意味があるのかもしれません。
しかし、ほぼ同じタイミングで、ニューヨーク・タイムズやエコノミストなど外国のメディアは、韓国が米国の核の傘を信用しておらず、自力での核武装を支持する声が大きくなっていると報じました。ただ、そのための技術は無い、とも。韓国ではイーデイリーなどが引用、報道しています。大統領候補だった頃から戦術核兵器の朝鮮半島再配備を主張していたユン大統領。去年4月には、訪米中に大統領室が「米国と事実上の核共有が実現した」と公式プリーフィングを行ったりしました。ただ、そのあとエド・ケーガン米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)東アジア・オセアニア担当選任局長が、関連した質問に「はっきり言いたいが、私は米韓首脳会談で話したことが『事実上の核共有』だとは見ていない」と話しました。
これは、ユン大統領がまだ米国にいた間の出来事で、大統領の訪米中に韓国大統領室のブリーフィングと米国側の発言が衝突したことになります。似たような、いわゆる「言ってない」案件はいろいろありますが、まだ訪米中なのにこんな展開になるのは結構珍しいことでした。しかも、その次の日、現地時間で4月28日、ユン大統領がハーバード大学での演説で「その気になれば、私たちは1年で核武装できる」と話しました。それからも似たような話が、与党を中心に何度か出てきました。世論調査などでも、賛成が多いと聞きます。そんな雰囲気を、共同声明に合わせて各メディアが報じたのでしょう。また、引用部分では「トランプ氏が大統領になったら」「ユン大統領は賛成していない」などを前提にしていますが、いま書いたように、バイデン大統領の頃にも核武装の話はあったし、ユン大統領は明らかに賛成していると言えます。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領の再選に成功した時、自ら核武装に乗り出さなければならないという韓国内世論が大きくなっていると、エコノミストとニューヨークタイムズ(NYT)が報道した。17日(現地時間)、NYTは「韓国ではトランプ氏が当選すれば、『同盟国に核の傘を提供する』とした米国の約束が揺れると思う人が多い」とし「韓国内の核兵器保有の賛成世論が拡散している」と伝えた。 NYTはまた「韓国政府は認めていないがが、政治家たちの間では議論のテーマとして浮上している」と付け加えた。
実際、統一研究院によると、2014年以降、韓国の核兵器保有に対する賛成意見は、2023年の60.2%から今年は66%に上昇した。また「国防のため、在韓米軍駐屯と核兵器保有のいずれかを選択しなければならないなら、どちらにしますか」という質問には、前者が40.1%、後者が44.6%と、今年になって初めて後者が多くなった。米国の核の傘政策に対する信頼度は昨年72.1%から今年66.9%に下がった・・
・・(※各記事は、核武装の可能性が高くないとみているという内容のあとに)エコノミストは「北朝鮮と中国、ロシアは経済的圧迫や武力デモ、わかりやすい攻撃で対応するだろう」と話した。続いて「NPTを脱退すれば韓国の国際的地位が揺れるだろうし、貿易依存が高い経済は各種措置により難しくなっていくだろう」と付け加えた。韓国の核関連技術力や原料が不足した点も理由として挙げられた。NYTは「韓国は現在、核燃料の生産や核兵器を設計する技術を持っていない」と述べた。エコノミストは「韓国は必要な原料、すなわち高濃縮ウランや再処理された核燃料から抽出したプルトニウムがない」と伝えた(イーデイリー)・・>>
先も書きましたが、「トランプ氏が大統領になったら」という話でもないし、ユン大統領も核武装に賛成しています。ダイレクトにそれを表現していないだけです(していないというか、去年から大統領が直接発言することはなくなりました)。ニューヨーク・タイムズやエコノミストがそれを知らなかったのか、それともあくまで「最近のイメージ」だけで書いたのかは分かりませんが。
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