対中国貿易赤字が続く韓国・・日・中・韓の貿易構造はすでに変わったのか

一つ前のエントリーを書いたあと、そのまま対中貿易収支もちょっと調べてみました。本ブログだけでなく、韓国メディア、専門家たちも、去年「対中貿易収支がここまで赤字になったことを、もっと重く受け入れるべきだ」という主張を続けました。いままでは日本と韓国の貿易では日本が黒字、韓国と中国との貿易では韓国が黒字というのが当たり前になっていましたが、この構造が変化しつつある、というのが主な趣旨です。ちなみに、いままで経済・景気を支えてきた「家計債務(詳しくは民間債務ですが)」もまた、構造的な限界に来ているという指摘が増えています。

で、今年は(以下、関税庁データは7月まで、ソース記事は6月まで)韓国の対中貿易収支がどうなっているのかといいますと、2月に一時的に黒字になったものの、それ以外はずっと赤字(中国が黒字)になっている、とのことです。ただ、金額基準で、赤字は去年の半分ぐらいになっているとも。これは、半導体輸出によるところが大きいです。最近多少減少したとは言え、韓国の半導体輸出は35.5%が中国に向かっています(今年上半期の数値で、一時は40%を超えていました)。詳しい数値は、あとで関税庁サイトから輸出・輸入データを引用します。今回、関連記事を調べながら思ったのは、各メディアの報道のニュアンスです。

 

一つ前のエントリーでも「対日貿易収支が、不思議なほど記事になっていない」という旨を書きましたが、今回は報道はしているものの、ほとんどのメディアが「なんてすごいことなんだ」というニュアンスで報じており、ちょっとこれはどうよ、と思いました。「半導体の力だ。対中貿易赤字、去年の半分にポキっ」(MBC)、「半導体が売れるとこんなことまでありえるのか・・対中貿易赤字、劇的に反転」(SBS)などなどです。「~」は、それぞれ題の直訳です。個人ブログの記事の題みたいだと思ったのは、私だけでしょうか。対中貿易収支でずっと黒字を出していた韓国ですが、これがそんなに嬉しいのでしょうか。ただ、デジタルタイムズ(7月8日)など一部のメディアは、「黒字転換はわからない」「(黒字転換できても)いままでのような大幅な黒字は難しい」「中間財中心の貿易が回復するとは思えない」などと記事を出しています。まずデジタルタイムズの記事を引用して、それから関税庁サイトの、韓国の対中国貿易収支関連データを紹介します。<<~>>が引用部分です。

 

<<・・今年上半期の対中貿易赤字が、昨年と比べて半分以下に減った。半導体輸出が急増したおかげだ。ただ、中国との貿易関係が「連携」から「競争」になったこともあり、今までのような「最大の黒字国」に復帰するのは難しいという分析だ。(※7月)8日産業通商資源部によると、今年1~6月の対中貿易収支は54億3000万ドルの赤字を記録した。昨年同じ期間131億3000万ドルの赤字だったことと比べると、半分にも及ばない。今年上半期の対中貿易収支は、2億3000万ドルの黒字を出した2月以外は、すべて赤字を示したが、毎月赤字の幅は昨年より減少している。

半導体業況回復のおかげだ。 1月から5月までの対中半導体輸出額は昨年136億ドルから今年186億ドルに36.8%増加した。半導体は全対中輸出額の3分の1を占める品目だ。対中貿易収支でも、半導体実績が全体実績を牽引する効果が現れたのだ。ただし、韓国と中国間の伝統的な「中間財貿易」の回復は難しいという見通しが出ている。中間財貿易とは、韓国で先端技術を利用した中間財を作れば、中国がこれを輸入して完成品に加工する関係のことで、これまで対中黒字を出すのに重要な役割を果たした。しかし、中国が技術を高めて、中間材自給率を引き上げたことで、急速に輸出ルートが縮小している。韓国貿易協会によると、昨年の対中国中間財輸出額は前年比19.9%減少した。全対中貿易で中間財が占める比重も2020年29.3%から2023年には24.0%に減少した(デジタルタイムズ)・・>>

 

 

で、こちらが中国との貿易収支です(コメント欄に拡大できる画像を載せてあります)。一つ前のエントリーで2018年からのデータにしたので、今回も2018年からにしました。2024年は7月までのデータです。日本は貿易収支がマイナスでも経常収支はプラスになることが多い(というか、一般的)ですが、韓国の場合は貿易収支によるところが多いので、韓国では貿易収支関連がいつも大きなニュースになります。

 

全体の貿易収支では、韓国は今年(7月まで)26,811,542,000ドルの黒字を記録しています。ただ一つ、現状として、韓国がもっとも肯定的な結果としてきた姿・・「中国が韓国に対して黒字が出せるようになる前に、韓国が日本に対して黒字が出せるようになる」は、実現できなかったこと。これだけは間違いないでしょう。いままで、当たり前のように「安保は米国、経済は中国」と言ってきましたが、この貿易収支構造の変化にともない、中国への経済依存を減らすことができるのか。次の政権の旗色はどういう影響を及ぼすのか。中国の技術力、特にメモリー半導体において、どういう変化が待っているのか。特に、先端半導体において「日米台」協力だけが強調されている、という指摘も結構出ています。いまだ「チップ4」という言葉を使うメディアが無いわけではありませんが、大手ではもう使わなくなりました。そういうところが気になります。

いまのところ、ユン政権は中国との貿易関係を「さらに深化すればなんとかなるのでは」と思っているようです。5月に韓国で開かれた日中韓3国首脳会議において、ユン大統領は中国側にFTAの強化について積極的に話しました。ただ、当時、日本と中国はこの件についてそこまで言及しなかった、とされています。当時、複数のメディアが「これで対中貿易収支はプラスに戻るだろう」という内容の記事を載せました。

 

 

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ブログのカテゴリー、タグ分けを細分化しました。本エントリーの場合は「韓国経済の話」になります。ただ、細分化は2024年8月19日からで、その前はほとんどが『ユン政権の大冒険』『文在寅政権の行く末』あたりにあります。ブログ内検索なども併用してくださるようお願いいたします。

 

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