韓国政府、WTO機能回復・FTA拡大など「自由貿易」を目指すと発表・・中国とほぼ同じ主張

韓国政府(産業通商資源部)が、国会国務会議で通商政策ロードマップを発表しました。「自由貿易体制の確立とともに、新しい通商ルールの定立を主導していく」というものです。半導体などいわゆる経済安保において、グローバルサプライチェーンの再編が行われている昨今。そんな中、多国間貿易、自由貿易を再び確立、その新しいルール作り、WTOの機能回復などにおいて、韓国が主導的な役割を果たしていく、と。ニュース1など複数のメディアが報じています。ユン大統領は「グローバル中枢国家」というフレーズをよく用いますが、今回もこれこそがグローバル中枢国家になる道である、としています。

昨日も書きましたが、日本とは異なり、貿易がすべてを決めると言っても過言でない韓国経済。中国との関係などを考えると、韓国内にこのような主張があるのはわかります。しかし、政府レベルで発表するようなものでしょうか。なにせ、日米だけでなく世界がサプライチェーン再編という大きな流れの中にあり、それに合わせて各国の政策はすでに決まっています。それに、なんでこのタイミングで・・な気もします。なぜなら、この自由貿易復活は、5月に韓国で開かれた日中韓首脳会談において、中国側が中心的に主張していたものだからです。

 

当時、中国が中心になってこの自由貿易関連の話が共同声明にも入りました。多国間の貿易体制を支持すると再確認する、という内容です(どこの国も、実際はサプライチェーン再編に動いてはいますが、こういう自由貿易を「支持しない」とは言っていません)。当時の共同声明にもWTO関連の話が入っていました。自由貿易といえばなにかいいことを言っているようにも聞こえますが、中国からすると「自由民主主義陣営が行っているサプライチェーン再編を防ぐための名分」にすぎません。中国が韓国に対して「中立・自主のスタンスを取るべきだ(日本に対してもよくいいますが)」と話すのと同じです。

中立と言えば客観的なことを言っているように見えますが、実は、「いまの陣営から離れろ」と言っているだけです。こうしてみると、どことなく、文在寅政権が北朝鮮と米国の間で「仲裁者論」「仲介者論」「運転者論(米朝を載せて運転していく)」などと主張していましたが・・今回のユン政権の自由貿易主張は、その「米中版」にも見えます。また、記事をよく読んでみると、米国や日本が半導体関連で行っている補助金政策を問題にしているようにも見えます。WTOの機能を回復させ、それに対処する、と。財政問題も関わっていると見ていいでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・政府は「自国優先」に回帰する国際情勢の中で、多国間の連帯・共助に政策の方向性を置いて、国益最大化を図る通商政策を推進していく。既存の多国間通商体制が弱くなる状況で、世界貿易機構(WTO)の機能の回復させるなどで、多国間貿易秩序正常化において主な役割を果たすという構想も出した。23日、産業通商資源部によると、政府は世界の通常環境でサプライチェーンを中心とした経済安全保障問題がますます高まっていると判断している。米中貿易対立や、ウクライナ事態関連など、自由貿易基盤のサプライチェーン基調が揺れている。この過程で、世界最大の経済大国である米国を中心とした「自国優先」が著しい。中国と対立する米国は商品分野の対中国依存度を減らし、半導体・大容量バッテリー・医薬品・核心鉱物など4大核心品目の自国内生産基盤を構築する政策を推進中だ。 EU(欧州連合)諸国もこのような傾向に合わせていく流れだ。

代表的なのが「半導体」だ。米国と欧州連合(EU)の場合、それぞれ「半導体法」を通じて520億ドル、430億ユーロを投資し、半導体サプライチェーンの強化を進めている。これに対応した中国も2021年から技術自立・内需拡大を通じて経済安全保障を強化するため「14次5カ年計画」などを樹立して進行中だ。日本は台湾TSMCファウンドリ誘致に4800億円を投資したと伝えられる。主要国の自国優先主義の通商措置に対応するために、韓国政府はそれぞれ急変する通商政策に対応し、韓国企業の対外的な不確実さを最小化する方に政策的主眼点を置いた。また、最終的には自由貿易主義に基づく世界多国間貿易秩序回復のために積極的に出るという計画だ(ニュース1)・・>>

 

また、別ソースですが、KBSによると、FTAをさらに拡大するという話も出ています。FTA「90%」を目指す、というのです。ちなみに、こちらも、韓国は中国とのFTA強化を議論しています。90%はなにかといいますと、7月22日本ブログで取り上げたことがありますがいわゆる「経済領土」のことです。「政策ブリーフィング(7月12日、政府の政策ブリーフィングをポータルサイトが紹介しているもの)によると、韓国がFTAを結んでいる国をすべて合わせると、世界経済の85%になります。というか、なるそうです。これを、政策ブリーフィングで「経済領土85%で世界2位」としています。1位は87%のシンガポールとのことで、それを超えて世界1位を目指し、90%になってみせる、というのが今回の趣旨でしょう。7月22日にこの件をエントリーしながら、「いま韓国が気にすべきことは、FTAよりは世界のサプライチェーンの再編のほうではないでしょうか」と書きましたが・・ここでWTO回復を言い出すとは、ユンたんさすがです。

 

 

おかげさまで、新刊「Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち」(扶桑社)が発売中です(2024年5月2日、アマゾン発売日)。詳しくは、下記のお知らせをお読みください。ありがとうございます

 

ブログのカテゴリー、タグ分けを細分化しました。本エントリーの場合は「バランサーな話」になります。ただ、細分化は2024年8月19日からで、その前はほとんどが『ユン政権の大冒険』『文在寅政権の行く末』あたりにあります。ブログ内検索なども併用してくださるようお願いいたします。

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。