「古くから続くもの」。韓国側のメディアはもちろん、経済や社会だけでなく様々な分野の専門家たちが、韓国の「古くから続くもの」をよくテーマにしますが、現実との溝が深いにもまた事実です。一例として、一般的には「フルから続く文化の魅力」で外国から観光客が来るとしていましたが、アンケートを取ってみるとほとんど外国人観光客が買い物や繁華街を訪れることをメインにしていたり、ソウル以外はほとんど行かなかったり(ソウルに伝統文化関連のものはほとんどありません)します。そもそも古くから続くものがそうないってのもありますが、主に比べる対象が日本ですから、どうしても『溝』は深く広くなります。
また、企業というか「店」などについても、昔から続くものだとすると「すごいすごい」とは言うものの、実際は「その長い間、一家から医師が弁護士は1人も出なかったのか?」と思う人が多いのが実情です。前にも拙著などに書きましたが、いわゆる「IMF期」になるまでは、「一生それ(職業)だけやってろ」というのが、一般的に人への攻撃的な表現とされていました。医師や検事など、それぞれの時代で『出世への道』を代表する職業以外は、一つの仕事を続けることを、「それしかできない」と低く見ていたわけです。IMFの頃、リストラが増え過ぎで、この表現は消えたと言われています(そもそも仕事が続けられるだけですごいという認識になった)。
ただ、このような風潮とは異なる記事を出す人たちもいます。こちらも主に日本からの引用が多いですが(笑)。今回紹介する記事は、日本の古豪企業についてのものです。題で、そういう企業こそが、日本経済の『筋力』であるとしています。「それら企業の株価が2倍になった」とか金銭的な見方が入っているのは事実ですが、概ね好意的な、『やはりすごい』とする趣旨の内容です。そもそも、元記事は日経新聞のものだそうですが(ソース記事は朝鮮日報、7月18日のものです)。トピックス100社のうち、創業から100年以上の企業の時価総額を調べてみたら、10年間でその株価が2.6倍も増え、157兆円になった、とのことでして。アメリカのS&P100の10年間の時価総額が2.9倍なので、これは本当にすごい数値が出たものだ、とも。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・創業100年軽く越える日本「古豪企業」の時価総額が10年間で2.6倍に急増し、日本経済を主導している。時代に残されたと思われていた往年の企業、が日本経済の前面に再登場しているのだ。古豪は経験豊富なベテランを意味する日本語だ。日本経済新聞が日本株式市場の主要100社(トピックス100社)のうち創業100年以上企業の10年間の時価総額変化を集計した結果、なんと2.6倍も増え、157兆円に達した。同期間の時価総額が2.9倍増加した米国主要100社(S&P100)にせまる水準だ。古豪企業の10年間の売上は1.5倍、純利益は2.5倍に増加した・・
・・(※デジタル機器などの普及で)筆記具が消えるかもしれないというシナリオを構成員と共有した三菱鉛筆は、「それでも行けるところまで行く」という逆発想戦略を立てた。単純な製品とされた鉛筆・ボールペン文具だが、研究・開発に売上の5%を投入した。筆記感の良い水性ボールペンを掲げ、競合他社より50%高く売った。気圧が低くなってもインクが漏れない先端技術も採用した。デジタルペンシル市場にも飛び込んだ。昨年、三菱鉛筆は創業以来最高売上高である748億円を記録した。営業利益率は17%(営業利益129億円)だ。売上の半分以上の53.5%は海外から出ている。今年3月、ドイツの筆記具名家であるラミー(Lamy)を買収した。137年になった日本筆記会社が94年続いたドイツ万年筆会社を買収したのだ。1887年創業して150周年を迎える年、売上1500億円が目標だ。三菱鉛筆の時価総額は昨年1月の2倍、1680億円である・・
・・コクサイは「成膜装置」という一つの技術にこだわった。ウエハ(半導体原板)に薄い膜を作る半導体装置だ。他の競合他社はウエハ一枚ずつ膜を被せたが、コクサイは数十枚を一度に処理した。世界最高の半導体企業であるTSMC(台湾)・サムスン電子(韓国)・インテル(米国)がコクサイを訪れた。半導体回路の微細技術が限界を迎える状況で、薄い膜をかぶせる最高技術が必要になったのだ。コクサイは昨年会計年度(2023年4月~2024年3月)に売上1808億円、223億円の黒字を出した。時価総額は1兆円をはるかに超えた。日立の子会社だった時代の3倍だ。5年前、アプライドが予定した買収価格(当時の為替レートで3800億円)の2倍以上だ・・
・・最近1~2年間、日本でもっとも株価が上昇した企業は1910年に創業された船舶エンジン企業、ジャパンエンジンコーポレーション(創業当時の使命は神戸原動機製造所)だ。昨年初めにしても1200円程度だった株価は、最近は1万7000~2万円になる。14~17倍も跳ね上がったのだ。数十年間、船舶エンジンは技術革新があまりなく、ジャパンエンジンコーポレーションも平凡な会社だった。職員数300人余りに売上は102億円、営業利益は2億円だった。創業110年目の2020年、同社は世界で初めてアンモニア船舶エンジンを開発した。アンモニアは燃焼時に二酸化炭素を全く排出しない、環境にやさしい燃料だが、燃焼時に不安定なせいで燃料として使うのは難しかっった。ジャパンエンジンコーポレーションは「層状噴射システム」という方式でこの難関を超えた。5年間の純利益を一度に技術開発に注ぐ、大きな賭けだった。2026年アンモニアエンジンを搭載した初の輸送船が就航する予定だ(朝鮮日報)・・>>
引用部分にはありませんが、富士フィルムホールディングス、TDK、オリンパスのことも書いてあります。記事は、多くの事例は「最後までやってみる」という力の結果だとしながらも、それぞれの企業には「それぞれの時代に似合う変化や適応」もあったとしています。それはそうでしょう。トピックス100の約半分が、古豪企業である、とも。理由はどうであれ、歯科医師という職業を長く続けなかった私にとっては、特にこういう「一つの仕事を長くやる」話は、まさに最大の敬意を表したい話でもあります。で、まったく関係ない告知ですが、明日は1日休みをいただきます。次の更新は、日曜日(25日)のいつもの時間、大まかに11時になります。それでは、ちょっと新潟県に行ってきます。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。