韓国メディア、『錯視効果』と報じる・・「半導体以外の各データはマイナス」

モルガン・スタンレーが、また半導体ピークアウトに備えるべきだという報告書を出しました。モルガン・スタンレーは2021年、半導体産業に「冬が来る」という報告書を出し、結果的にはその予想のままになりました。今回は冬と言うほどではないけど、ピークアウト、すなわちAI用半導体などが、これまでのような成長を遂げるのは難しいだろうという話です(※もちろん、まだそうではないという反論も出ています)。これは、グローバルサプライチェーン再現の中、半導体関連拠点としての強化を進めている日本にとっても、嬉しくない話です。キオクシアが上場するというニュースもあるわけですし。ただ、韓国としてはさらに気になるニュースになるでしょう。

前にも書いたことがありますが、韓国メディアは何かの一部の案件、たとえば『建設景気』などについてはよく記事を載せますが、『経済全体が低成長期に入った』『不況の中にある』などの表現はあまりしません。自営業者関連ニュースでも、高金利高物価という話はよく出てくるけど、不況だとか、経済全体が低成長期に入ったという指摘をする記事は多くありません。そんな中、最近になってやっと『内需』という言葉は目立つようになりました。内需がぜんぜん振るってないとか、そんな指摘です。一部ではありますが、経済メディアの記事に、そういうのがやっと増えてきました。

 

特に、半導体輸出が好調で(特に、前年比だとすごく増加しているのもあって)数値上ではパッとしないけど、製造業などを見てみるとすべてマイナス成長をしている、電気や原油の使用量も減少してきた、政府の税収は今年も大幅に不足、などなど。いわば、「錯視効果」だというのです。以下、毎経エコノミー(モルガン・スタンレー関連だけ、25日)、毎日経済(21日)、SBS(23日)などがソース記事になります。毎日経済の記事は「半導体が好調すぎで気づかなかったな~」と、個人ブログの題のような記事です。日本も個人消費があまり増えないでいますが、それでも各企業の好調で、税収は最高記録となっています。2023年度税収は72兆761億円で、関連記事などでは「好調な企業業績により法人税が増加したのが主な原因」となっています。以下、各記事から各案件を<<~>>で引用します。

 

<<・・国策研究機関である租税財政研究院は、今年の国税収入を昨年と同水準の344兆1千億ウォンと見込みました。政府が目標とした367兆4千億ウォンより23兆3千億ウォンほど少ない数値です。このままだと、昨年に続き、大きな税収不足になります。【クォンソンジュン韓国租税財政研究院税収推計チーム長「最大の原因はやはり法人税が減少した要因が大きいと思われます。概して、半導体など韓国の主力産業の実績に応じて法人実績の変動性が現れる傾向があります」】・・・・研究院は来年税収を今年予想値より36兆ウォン増えた380兆2千億ウォンと見ました。法人税収が改善され、譲渡所得税収入も不動産市場の回復により増えるだろうという説明です・・・・ただし、国内外のリスク要因による不確実さも相変わらずです。最大の変数は、半導体ブームがいつまで続くのかです。高金利が続くにつれ、内需回復が予想よりも悪くなる可能性もあると分析されます(SBS)・・>>

 

<<・・経済の主軸である製造業が揺れている。外見上だと輸出・生産改善の勢いが続いているが、半導体業況の改善により全体の製造業が良く見える「錯視効果」が強くなっている。21日、統計庁によると、4~6月期の製造業生産は前年同期比5%増え、四半期基準で3期連続で増加した。しかし、半導体業種以外を見てみると、生産増加率は1%に下がる。電子・通信業種まではずすと、生産増加率は0.4%まで下がる・・・・(※最近になってさらにこの傾向が強くなっているという話のあと、最新データの6月のデータにおいて)6月の製造業生産は3.9%増えたが、電子・通信業種以外の生産はマイナス2.3%では逆さまに後退した。 6月の半導体生産が26.9%急増した一方、化学製品(1.5%)、自動車(マイナス4.1%)、1次金属(マイナス9.8%)をはじめとする他の業種は低迷したからだ・・

・・ジュウォン現代経済研究院経済研究室長は、「半導体依存度が大きくなった状況で、主要国への輸出の減少により、もし半導体になにかあれば全体の生産が大きな影響を受けることになるだろう」とし「内需企業活動と民間消費を促進する政策の必要性が大きくなった」と言った。カンソンジン高麗大経済学科教授は、「全体の景気が下がっている中、グローバル需要拡大で半導体業種だけが経済を牽引している姿」とし「半導体以外の業種の生産が生き残るためには、内需が生き返らなければならないが、当分の間、不振な状況が改善される兆しは見られない」と話した。実際、6月製造業出荷は内需不振の余波で3%減った。電子通信業種以外だと製造業出荷は4.4%も急減する・・

 

・・かつて半導体と並んで好況を享受した石油・化学、バッテリー業種も不安なのは同じだ。石油化学業種は景気不振の中、中国発の低価格物量が溢れたことで供給過剰状態を迎えている。バッテリーは世界的な電気自動車需要減少に、最近相次いでいる火災事故で大きな影響を受けている。石油化学業界関係者は、「国内はもちろんグローバル市場で中国の物量が溢れ、低価格競争が激しくなった状況」とし「生産するほど赤字が増える仕組みが繰り返されている」と雰囲気を伝えた(毎日経済)・・>>

日本、または日米台関連で半導体関連ニュースが出るたびに、韓国メディアが多くの記事を出す背景が、この状況にあるのかもしれません。特に、一時は半導体とともに『経済安保において韓国の地位を決める』とまでされていたバッテリー分野が、最近はほとんど力が出せなくなっています。大手「SKオン」の場合は、SKグループ全体の流動性問題にまで発展するのではないか、そんな予想を出すところもあります。また、どこも『低価格』を問題にしているし、実際そういう側面もあるでしょうけど、中国産の技術力が高くなったという側面もあるでしょう。ちなみに、半導体、石油製品、石油化学、鉄鋼、自動車、一般機械、船舶は、韓国の5大輸出品目とされています(名称は5大ですが、7つです)。

 

 

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