さて、この前も家計債務についていよいよ各種関連措置が強化されるという話をしましたが、不動産市場の最大の問題とされるPF(プロジェクトファイナンシング)に対しても、いよいよユン政権が対策に乗り出しました。本ブログではもう何度も何度も出てきた用語ですが、韓国でプロジェクトファイナンスというと、自己資本はほとんどなしに『マンション団地をつくる』というプロジェクトを担保にして融資を得る形になります。一時は韓国経済発展の主役の一つでしたが、最近はお金がまわらなくなって、全般的にピンチになっていて、特に2022年のいわゆる江原道レゴランド事態は、大きな影響を及ぼしました。
それから2年経って、いよいよ政府・金融当局が直接介入を始めることになりました。政府が介入するPF事業場・・すなわち政府が前に出て『片付け』を命じないとどうにもならないプロジェクトは、全てのPFの約10%だと見ています。記事によると、約500箇所になるとのことです。他のメディアでも、PFローンの規模はすでに200兆ウォンを超えていて、その中の約20兆ウォン規模が、不良債権化の可能性が高く、今回介入の対象になるだろうとしています。ちなみにソース記事はニュースタパ(7月26日)というメディアで、ユン政権といろいろあったメディアです。普通はあまり引用しませんが、2011年『貯蓄銀行事態』当時に当局のチームとして参加していた教授の見解も出ているし、政府対策も短くまとめられているので、今回、ソース記事にしました。ユン政権が~とする部分は引用していません。というか、どれか一つの政権だけの問題ではないでしょう。
記事の中で個人的に興味あるのは、2011年、多数の貯蓄銀行が破綻した「貯蓄銀行事態」のとき、金融当局側から参加した教授の話です。貯蓄銀行というのは金融機関の種類をあらわす単語で、銀行の名前が貯蓄という意味ではありません。やっていることは普通の銀行とほぼ同じですが、詳しくは『銀行』ではなく、第2金融圏(ノンバンク)です。当時、この問題の中心にもPFがあったとされていますが、当時参加した教授の話によると、表向きのデータと実際のデータにものすごい差があったとのことでして。BIS(自己資本比率)を5%を申告した貯蓄銀行があったのですが、実際に調べてみると、マイナス50%だったそうです。今回も、多くの第2金融圏の金融機関、セマウル金庫とか保険会社とかがPFに手を出していますが、果たしてそれらが公表したデータをもとに金融当局が判断した「10%」が、現実的なものなのかどうか、という話です。結果がどうなるのかは、早くても次の政権になるでしょう。ひょっとするとそのために2年待ったのか・・って、冗談です。まさかそれはないでしょう(ハハハ)。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・5月、金融委員会と金融監督院が不動産PF(プロジェクトファイナンシング)ソフトランディング対策を発表した。不動産PF問題が本格提起された2022年9月、江原中道開発公社の回生申請事態以後20ヶ月ぶりに出た対策だ・・・・正常事業場には公共と民間の資金を投入し、不良化した事業場はオークションや公売などを通じて整理するというのが対策の主な内容だ。民間市場参加者が事業性評価と整理を主導し、政府は事業性評価のガイドラインの提示、規制緩和、市場監督などで支持するという計画である。イ・ボキョン金融監督院長は先月、就任2年記者懇談会で、今年下半期以降はPFリスクから始まるシステム的な問題を意味する「◯月危機説」は出ないだろうと自信をもって話した。PFリスク対応を自身の業務成果の一つに挙げ、リスクの可能性を早期に遮断し、市場を安定化させたと自評したのだ・・
・・専門家の意見は、金融当局とは異なる。政府が認識している不動産不良化の規模が、現場の実際の状況とは異なり、経済状況が持続的に巡航していくかもわからないからだ。企業と金融機関が潜在的な不良債券化を隠している可能性もある。アンジェファン、インハ大学経営大学院教授は、金融当局の希望的な期待をそのまま受け入れることは難しいと話した。彼は2011年貯蓄銀行事態当時、金融監督院の実務者として貯蓄銀行内部実態を調べたことがある。当時、貯蓄銀行は事業性の検討なしに不動産PF事業に資金を投じて、不良債権化を招いた。30余りの貯蓄銀行でバンク・ラン(預金の大量引き出し)が発生し、10万人余りの預金に問題が生じた。PF事業に参加した金融会社が、貯蓄銀行から証券会社、キャピタル社、セマウル金庫などになっただけで、不良債券化の様相は2011年も今も同じだ。
アン教授は、貯蓄銀行事態当時、自己資本比率(BIS)を5%と申告した貯蓄銀行の内部資料をチェックして、実際の数値がマイナス50%に達するという事実を発見したことがある、と述べた。金融当局が認識する不良化規模と、実際の金融会社の財務状況は異なる可能性があることを示す事例だ。アン教授は今も建設会社や中小金融会社のような民間企業が、損失をちゃんと認識していない可能性があるとし、金融当局が不良債券化したPFの潜在的なリスクをより慎重に判断しなければならないと述べた。
当局が整理する不良PF事業場を全体事業場の10%以下と見たのも、現場の事情とは異なるという指摘が出ている。金融当局の発表通りならば、全国5,000箇所以上の事業場のうち約500ヶ所程度の事業だけが整理されるという意味だ。しかし、この数字は金利と工事費、分譲状況などの状況に大きく変動するしかない。本誌が、3年間推進されたソウル地域の新築事業場の許可・認可内訳を全数調査した結果、1年以上着工が遅れている事業場だけでも1,500所を超えていた(ニュースタパ)・・>>
記事はほぼ『リスクをもっと慎重に判断する必要がある』とするもので、リスクの具体的なデータが示されているわけではありません。でも、記事で教授が話したこと、なぜか『可能性は高いのでは』と思ってしまいます。なぜでしょうね。ちなみに、他にも、一部ではありますが、『延滞率が低すぎないか』、たとえば、とりあえず満期を延長して問題がないように見せる『エバーグリーン』化など、似たような疑問は提起されています。ほぼ話題にはなりませんが。 明日は、また1日休みをいただきます。次の更新は、9月1日(日曜日)11時頃になります。台風10号が通過する地域の皆様、台風などに気をつけてください。シンシアリーも遠くまでは行かず、近くの日帰り温泉で過ごそうかと思っています。台風の中でも、『進行が遅い台風』がもっともこわいと言われていますので・・
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。