いままで「日本と中国の間にある」という趣旨の表現はいくつかありました。サンドイッチとか。しかし、最近聞こえてくる似たような話は、今までのものとは決定的に異なる側面があります。いままでのサンドイッチは、韓国メーカーが大きくシェアを伸ばす時期のものでした。しかし、最近はそうではありません。それに関する記事がまた少しずつ増えてきたので、今日はそれに関する話を取り上げてみます。韓国経済のインタビュー記事で、ジョンユシン ソガン大学経営学科・技術大学院教授が、「TEMUなどEコマースから、AIなど半導体関連まで、これから中国企業がどんどん韓国内市場で攻勢を拡大していくだろう」と話しました。
これまでも中国企業が韓国内でシェアを取るのは珍しいことでもありませんでしたが、いままでのような低価格製品「だけ」ではなく、今回は先端技術とされる分野での話で、その攻勢はまだ1波が始まっただけだというのです。「それはそうなるでしょう」な話ですが、韓国のメディアがこのような主張を取り上げるようになったのは、つい最近のことです。つい2年前にも、中国経済がリ・オープニング(新型コロナ対策の緩和による経済活動の再開)すれば、それだけで中国との貿易収支は黒字に戻るという主張が一般的でした。それから一部のメディアが「中国はもう『市場』ではなく、競争相手である」という趣旨を書くようになって、去年に大幅な貿易赤字を記録してからは(今年も赤字が続いています)、『構造的な変化』が起きたのではないかという見解も増えてきました。
これらがつい1~2年前のことだから、さすがにちょっと遅すぎた気がします。今回、教授は、最近TEMUなど中国側のEコマースが国内市場で一人勝ち状態なのと同じく、AI半導体、バッテリーなど「私たちの未来の活躍の場だと信じている分野」でもこれからどんどん中国企業の攻勢が強くなるだろう、まだ始まったばかりだと主張しました。また、韓国経済の記事と同じく今日(4日)、中央日報が「なにかの新技術を開発しても、大企業は日本の素材・部品・装備しか使おうとしない」という記事を載せました。新技術って、いつぞやの国産化と同じ意味ではないのか、そんな気もしますが。8月22日にデータを載せましたが、あれほど国産化ニュースが出たにもかかわらず、対日貿易赤字はなにも変わっていません。ただ、記事は、『そもそも、大企業が、日本製以外は使おうともしない』とのことでして。最近日本の半導体関連ニュースを韓国各メディアが無数に報じているのも、実はこういう現状を心配してのものではないだろうか、そんな気もします。以下、各紙、<<~>>で引用してみます。
<<・・国内産業界の最近最大話題は中国企業の攻勢だ。中国製品の国内進出は以前にもあったが、低価格低品質製品中心だった。だが今年に入り、ハイテク技術製品を作る会社やプラットフォーム企業の国内市場の脅威が増え、懸念が高まっている。特に、未来の韓国のグルメに挙げられる「バッテリー」産業に対する脅威は予想を飛び越えている・・・・教授は中国のバッテリー、電気自動車、半導体、AI、イコマース、気候テクなど分野での攻勢が本格化するだろうと述べた・・(※Eコマース市場で中国勢が急激にシェアを伸ばしていることで)・・教授は「流通部門が崩れれば、流通産業に参加するセーラーたちも倒れ、ブランドのない中小ベンチャー企業は完全に外国企業の影響下に入ることになる」、「バッテリーなど他の産業でも同様のことが現れる可能性がある」とした(韓国経済)・・>>
教授は、韓国の場合は中国に対して関税など貿易関連措置を取るのが容易ではないとし、それを『顔色』をうかがっているからだ、とも話しています。記事にメモリー半導体において具体的な話は出ていませんが、一部の専門家は、メモリー半導体においても、3D集積技術においては中国の技術力はすでに韓国メーカーを超えているのではないか、という指摘も出ています。2023年2月1日朝鮮日報(朝鮮BIZ)によると、チェジョンドン博士は「最近YMTCが232段まで積み上げた3D NANDフラッシュを販売している」、「現在、このレベルの積層技術が入ったNANDフラッシュをサムスン電子やSKハイニックスで購入するのは難しい」と話したこともあります。メモリの層が高くなるほど、同じ面積に多くのデータを格納できるという利点があり、現在、主要企業がメモリ積層技術に注力している、とも。こういうのが一番の「リスク」なのでは。続いて、中央日報の記事を引用して、そのまま終わりにします。今日もありがとうございました。
<<・・「長い間日本製品を使ってきた半導体エンジニアが、「価格が少し安い」という理由だけでリスクのある国産素材を使うのでしょうか。国産素材がやっと半導体資材仕様書(Bill of Material)に登録されても、検証が十分でないという理由で、そのまま消えることが続いています」。最近、中央日報と会った国内素材メーカー役員の話だ。人工知能(AI)半導体の鍵であり次世代高付加価値産業という先端パッケージングソブジャン(※素材・部品・装備)を開発したくても、「顧客会社が何が必要なのかもわからず、作ってもこれでいいのかわからず、検証ができないから誰も買わない」というのだ・・
・・シリコン貫通電極(TSV)のような先端パッケージングは、ウェハ(半導体の核心材料である円形のシリコン板)段階で適用される技術である。ところが国内ソブジャンでは「私たちはウェハを見ることもできないのに、どうやって未来技術を開発できますか」と話す。先端半導体用12インチウェハの価格が上がったうえに、大量購入するメーカー以外はウェーハを確保しにくいからだ。国内のソブジャンメーカーがやっと新技術を開発しても、これが半導体生産工程に適しているか確認する道がない。高価な半導体生産ラインに中小企業の新製品を適用してくれるメーカーがないからだ。検証されていない新素材・装備を購入するメーカーを見つけるのは、容易ではない(中央日報)・・>>
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