韓国で話題の「幽霊自営業」とは / 自営業者527万人のうち427万人が『雇用無し』

時期にもよりますが、自営業者が全就業者の20%~25%となる韓国。これでも減少しつつありますが、増えるときにはまた急に増えたりして、いまでもOECD加盟国の中ではかなり多い水準です。日本もパッと見て「店」が多い国ですが、それでも10%になるかならないかです。ちなみに、日本はサラリーマンが多い国だとよく言われます。韓国経済において、その分、自営業者たちの『重さ』も格別だと言えますが・・その自営業者関連で、いくつか「気になるデータ」が揃ったので、また取り上げてみます。中央日報(8月27日)、東亜日報(8月19日)、ニューシース(9月5日)などです。本ブログでは先月17日に取り上げてからしばらく書いていませんが(経済関連で同じ話は何度か出ていましたが、メインとして)8月、そして9月になってからも、韓国の各メディアは「自営業者」と「廃業」を経済ニュースとして結構大きく取り上げています。

家計債務や自営業債務などではすでに多くのニュースが出ていて、その続報のような形で報じられることが多いですが、いままで本ブログで紹介したことがない内容をいくつかのニュースからまとめてみると、まず、最近流行っている『1人社長様』の比率がわかりました。1人社長様というのは、雇用がない自営業、すなわち1人でやっている自営業者のことです。たとえば家族が(賃金無しに)手伝ってくれる場合もありますが、韓国メディアは一般的にこの用語を使います。自営業者が多いから、自営業から発生する雇用もかなりの数字になります。これまた時期にもよりますが、カテゴリー別に見てみると、四半期基準でもっとも多くの雇用が発生したのが『飲食店など』だったりしますから。よって、最近の1人社長様の増加は、大きな影響を及ぼしていると言えるでしょう。これでも失業率データは低いままだから不思議なものですが。

 

現在、韓国の自営業者の数は、中央日報の記事によると、7月時点で527万1000人です。前の政権から続いた低金利で、創業資金が借りやすくなったという理由で自営業者が急増、2021年には650万人を超えたりしましたが、それから減少傾向が続いています。ちなみに、韓国の経済活動参加人口は約2800万人です。で、東亜日報によると、同じく7月基準で、『雇用なし自営業者』が427万3000人、とのことでして。2つの記事のデータを合わせると、約8割の自営業者が、雇用なし状態だとわかります。最初から1人でやる前提で始めた人もいるでしょうし、業種や規模によりますし、別に1人でやっている小さな店だからと言ってそれだけで問題があるわけではありません。とはいえ、ちょっと多すぎないか・・な気がします。

ちなみに、最近のデータでみると「1人社長様」は減少していますが、これは景気が良くなって雇用を増やしたのではなく、そのまま廃業したからです。実際、雇用なし自営業者が11万人減少した期間中、雇用が『ある』自営業者は5万人増加しただけ、とのことでして。記事は、新しく自営業を始める人もいるので(店員を雇用してスタートする人が多い)、実際は廃業が増えただけ、と見ています。「(1人社長様が減少しているのは)商売が上手いって職員を雇用しただというよりは、零細自営業者の相当数が廃業した結果だと見るべきだ」、と。減少して427万3000人ですか・・というのも、なかなかすごい話ですが。

 

次、中央日報が取り上げた内容ですが、「幽霊自営業者」が急増している、とのことです。営業利益で債務の利子が返済できない「ゾンビ企業」関連問題が世界を揺るがしている中(韓国の場合は全企業の41%、7月16日デイリアン)、今度はゴーストです。関係ないけどダイソーにはもうハッピーハロウィングッズが並んでいました。で、幽霊自営業とはなにか。ハッピーでもウィンでもないしハローとも言いづらいですが、『自営業者として満期延長できないから廃業したくでもできない』人たちのことです。ローンを自営業者として組んでいるので(一部の自営業者の債務が家計債務と別枠になるのがこのためです)、自営業をやめると、そのローンの満期延長ができない、というのです。だから、廃業せず(廃業届を出さず)、副業で別の仕事しながら生計を立てている、というのです。ここでちょっと気になるのが、そんな状態で満期延長ができるのか、という点です。一部のメディアが、金融機関が満期延長を繰り返すことで延滞率を低く見せる、いわゆるエバーグリーン化(緑豊かな状態に見せる)を試みていると指摘していますが、これもそういうたぐいのもの、でしょうか。そんな延長で大丈夫か? 大丈夫だ、問題ない、とか・・ここは<<~>>で引用してみます。

 

<<・・内需不振と物価高・高金利に、自営業者の廃業が続いている。その中には、廃業したくてもローン残高のため、廃業せずに「幽霊営業」をする場合もある。営業を中断しても通信販売業に業種を転換し、事業者番号を維持して、耐えるわけだ。事業者用ローンを受けた自営業者は、廃業すれば追加融資や満期延長ができなくなるので、店舗が不要な業種に転換する策である。このような幽霊営業まで勘案すれば、実際の自営業者は統計よりさらに難しい状況だと思われる。統計庁によると、先月(※7月)自営業者は昨年同期より6万2000人(マイナス1.1%)減少した572万1000人で、6カ月連続減少した(中央日報)・・>>

 

ニューシースによると、ソウル市のローカルデータではありますが、廃業した人たちの平均年齢は50.7歳、月々の所得は135万ウォン(約14万円)でした。新型コロナときよりも廃業が増えている、とのことです。7月16日に本ブログでも取り上げましたが、2023年に廃業した自営業者・小商工人(常時勤労者5人未満、製造業など一部業種では10人未満)が98万6000人で、統計作成してから最多記録でした。今年のデータはまだ出ていませんが、もっと増えているのではないか、とも報じられています。もちろん、これは廃業したとちゃんと届け出た人だけの数字なので、実際はもっと多いでしょう。

2023年6月6日韓国経済TVの報道によると、2021年(記事の時点では最新データ)、低金利で「とりあえずローン」ということで自営業者が約650万人まで増えていた頃のデータですが、その650万人の平均所得は年1952万ウォンでした。どんどん減少しつつあり、2000万ウォンより下がったのは初めてだ、とも。1ヶ月に約162万ウォンですが・・今回のソウル市のデータと平均が135万ウォンだった、とのことですから。さらに減ってるのか、それともローカルデータだからそうなのか、まだそこまでは分かりません。 まとめていたら、長くなりました。明日は1日休みをいただきます。次の更新は、8日(日曜日)のいつもの時間、11時頃になります。

 

 

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