韓国メディア「毎年この頃になると『かならず直す』と政府が言うのに、なぜ賃金未払いが毎年増えるのか」・・日本の14倍とも、100倍とも

年2回、賃金未払いが大きな話題になります。ソル(旧暦1月1日)と秋夕(チュソク、旧暦8月15日)になると、です。政府が「今度こそなからず直す」と政策を発表したり、各メディアが大きく取り上げたりします。でも、それ『だけ』なのが問題でして。韓国日報(15日)が関連記事を載せましたが、その題に『毎年この頃になると必ず直すと政府が発表するのに、なぜなのか』、となっています。確かにそのとおりです。それでも、去年、今年は、賃金未払いの規模が大きくなって、各メディアが記事を載せるようになりました。まだ効果はありませんが、それでもマスコミが取り上げるのが年2回「だけ」のシーズン・イベントではなくなっただけでも、良い方向かもしれません。で、結論から書きますと、今年、賃金未払い金額が2兆ウォンを超えるのではないか、と予想されています。また、人数(上半期)で約15万人で、その約8.5%(1~7月)が外国人労働者でした。

1~7月データなので期間が他のデータとはずれますが、外国人労働者の場合も699億3990万ウォン。4124個の事業場で、1万4913人が賃金をきちんと受け取れなかった(イーデイリー9月10日)、とのことでし。人数にして8.5%、金額にして5.7%。公共機関でも5年間で165億ウォンの賃金をちゃんと払ってないそうですから(東亜日報9月4日)、安全地帯などないのかもしれません。ちょっとうろ覚えで恐縮ですが、もともと1兆ウォンを超えてから多少減少していたものの、リーマン・ブラザーズ事態などがあった頃、また1兆ウォンを超えました。それから「再び賃金未払いが1兆ウォンを超えるのか」という記事が結構出ていたと記憶しています。2023年の賃金未払いは1兆7800億ウォンで最高記録になりました。これが、上半期基準で見ると、今年はさらに26.8%増加しています。

 

別にこの案件だけでなく、とりあえずなにかの理屈で日本と比べることになるわけですが(それでもこれは素直に比べるだけなのでまだマシですが)、2022年6月4日朝鮮日報の記事によると、2017年~2021年までの5年間の未払い賃金は7兆ウォンで、同期間の日本の未払い賃金に比べると14倍でした。ただ、ちょっと別の見解もあって、3月7日の毎日労働新聞という労働者関連メディアは、「すべてを勘案すると、日本の100倍」という見解を載せています。日本の労働政策研究・研修機構のオ・ハクス特任研究委員による分析で、日本の2021年度の賃金未払いは(記事の為替レートで)約516億ウォン、単純計算で韓国の2.89%。ここに、賃金労働者の数(日本6114万人、韓国2145万人)などまで考えると、韓国の賃金未払いは日本の約100倍(正確には98.6倍)になるというのです。「結局は、責任感の問題である」、とも。こんな中、ついに年2兆ウォンの大台(?)が見えてきた、賃金未払い。韓国日報の記事を<<~>>で引用してみます。

 

<<・・不景気などの余波で今年上半期だけに賃金滞納規模が1兆ウォンを超えた状況で、秋夕連休を控えて政府が再び「賃金滞納に強く対処する」ことを強調した。政府が毎年、名節(※ソル、チュソクなど)になるたびに慣行のように繰り返して強調しているが、限界が明白だ・・・・ユン大統領は9日、チュソクを控えて開かれた首席秘書官会議で「民生物価」「応急医療体系点検」とともに「滞納賃金」問題を取り上げ、「万全を期してほしい」と要請した。最近新たに就任したキムムンス雇用労働部長官の最初の業務指示も「賃金滞納総力対応」だった。ソルや秋夕の祝日を控えて政府が「賃金滞納根絶」メッセージを出して2、3週間「滞納賃金集中清算指導期間」に定めた賃金を受けるように行政力を集中するのは年次行事のようにあることだ。

この期間中に滞納清算成果が少ないだろうが、問題はあくまで一時的な措置だという点だ。勤労基準法の改正など制度的補完装置の不備が続いている間、今年は建設景気の低迷や自営業の廃業増加など景気要因まで重なり、年間滞納規模が史上初めて2兆ウォンを突破するという展望まで出ている。今年上半期賃金滞納賃金額は半期基準では初めて1兆ウォンを突破、1兆436億ウォンと集計された。滞納規模で最高値(1兆7,845億ウォン)だった昨年、上半期の滞納額が8,232億ウォンだった。今年上半期はこれより26.8%増加している(韓国日報)・・>>

 

記事は、専門労務士の意見として、「現行労働行政・司法実態を見れば、事業主の立場からすると、ちゃんと賃金を支給しなければならない誘引がなく、むしろ滞納したほうが経済的に有利だとも言える」、としています。なにせ、ほとんどが罰金で終わる(懲役刑などは約4%だけ)ものの、「罰金の金額が、大まかに滞納賃金額の約13%」、または賃金がもらえないでいる労働者と(実際の賃金の分よりは少ないけど)合意すれば、それですべての法的責任は果たしたことになる、とのことです。労働者の立場からすると、いますぐ使える生計費もないばあい、どうしてもこういう合意に応じることになります。賃金債権の時効を現3年から5年にしたり(確か、日本は現10年です)、遅くなった分の利子を支払うようにするするなどの制度が必要だ・・とのことですが、やはり結局は『責任感』でしょう。人件費というのがどれだけ重要な存在なのか、人の生活そのものであること、などなどを考えていないからです。そういえば、この前、日本のことで「結局は責任を回避したいだけだから、強く押せばいい」とする記事を紹介したことがありますが・・こういうデータから、本当の責任感を重視するのはどちらの社会なのか、すぐわかるものです。

 

 

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