韓国ユン大統領がチェコを訪問しました。いろいろ議題があったでしょうけど(多分)、韓国メディアでもっとも注目されたのは、チェコ原発建設、いわゆる原発輸出です。チェコ原発は韓国水力原子力という公企業が優先協議社に選ばれ、受注が確実視されています。最終決定は来年3月です。政府は数十兆ウォンの利益になると『ジャックポット』を強調していますが、単価はフランスの約半分、中国よりも安かったと言われており、野党及び一部のメディアからちゃんと利益が残せるのかとの疑問も提起されていました。また、アメリカのウェスティングハウス社が知財権問題を提起しています。最初は「すべて国産技術」としていたユン大統領ですが、最近は「ウェスティングハウスからいろいろ購入することになるかもしれない」と話しています。
この件、一部メディアから「チェコ訪問前には何かの形で結果が出る」と報じられたりしましたが、今回のチェコ訪問まで何の合意もなく、ハンギョレ新聞がウェスティングハウス側に直接問い合わせたところ、『来年下半期まで何かの結果が出る可能性は高くない』とのこと。最終決定は来年3月で、チェコからするとかなり気になる案件ではないでしょうか。そんな中、野党国会議員の中には、今回の原発輸出は「数兆ウォンのマイナスになる」と主張する人もいますが、ソース記事ハンギョレ新聞はそこまでは言わず、いろいろ考えてみると韓国側がもらう分は6兆6千億ウォンになる(純利益ではないので、マイナスになる可能性もある)という分析を紹介しています。あくまで試算ですが、政府が数十兆ウォンを主張しているだけあって、ギャップが結構あります。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米国ウェスティングハウスと韓国水力原子力(韓水原)の間の合意が、ずっと遅れつつあることが確認された。さらに、ウェスティングハウスに行わなければならない「対価」を考慮すると、原発輸出が政府と与党で話す「ジャックポット」水準になるのは難しいという指摘も出ている。22日、キムハンギュ共に民主党議員室側の話を聞いてみると、20日、韓水原のチェコ・ポーランド事業室原発輸出協力チームは、知財権関連の合意状況を問う質問に「合意事項はない」と答えた。ウェスティングハウス米国本社関係者もハンギョレの電子メールの質問に、今月初め「大きく変わったことはない。国際仲裁と訴訟を続ける」と明らかにした。同関係者は「仲裁決定などが来年下半期以前に出るのは難しい」とした。来年3月に予定されたチェコ原発最終契約の前に有利な立場を占めようとしていると解釈される。匿名を要請したある原発業界関係者は、「ウェスティングハウスが(アラブ首長国連邦の)バラカ原発の時と同じ規模の合意金を要求しており、韓国は技術自立を主張して、(金額に関する)意見の差が大きい状況」と説明した。
チェコは、韓国にチェコ現地企業の原発建設参加率60%を要求している状況だ。ウェスティングハウスに合意金まで支給するとなると、結局、韓国の分は多くないという指摘が出ている。野党側の推算で、韓国の分け前が計6兆6千億ウォン水準に過ぎないからだ。バラカ原発の際、予算186億ドルのうち11%ほどの20億ドルの機材費がウエスティングハウスのものになった(原発業界分析)。チェコ現地企業や人材などの建設費分を最大で60%と仮定しての金額である。ペトル・フィアラ チェコ首相は20日(現地時間)チェコ現地でユン大統領と会談した直後、「韓国水力原子力はチェコ企業と70以上の協力了解覚書を締結し、私たちが目指すチェコ企業60%参加率に到達できると思う」と強調したことがある。この場合、チェコ原発2基建設費4千億コルナのうち、残った29%の1160億コルナ(約6兆6千億ウォン)が韓国の分け前となる。昨年の韓国総輸出額の1%にも及ばない(ハンギョレ新聞)・・>>
そもそも、チェコ経済競争保護局(UOHS)は原発建設入札手続きに対する米ウェスティングハウスとフランス電力公社(EDF)の異議申請を受け入れ、関連行政手続きを始めました(聯合ニュース9月4日)。国家プロジェクトだから最終決定の3月前にはなにか発表があるでしょうけど、ウェスティングハウスの件はやはり気になるでしょう。チェコは総選挙を控えているため(4千億コルナは今年チェコ全体予算の17%、国防予算の3倍だそうです)、「最終契約で韓国側に多くの収益を与える決定をするのは難しいだろう」という見解も出ています。
また、ユン大統領はこれからも原発輸出を続けるとしていますが、今回ウェスティングハウスにお金を払うと、毎回同じことになるという指摘もあります。そもそも、完全に技術自律したとは言えないという見解もあります(多分、そうでしょう)。パク・ジョンウン東国大学教授(エネルギー・電気工学科)は、「完全な技術自立を主張するには、原子炉圧力容器などの核心部品に対する国際特許がなければならないが、今は技術を改良した水準でしかない」、と。野党側は「(実益のある輸出なら)技術使用料と機材・資材調達金額など交渉条件を公表したらどうかと言っていますが、政府側は応じないでいます。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。