朝鮮日報曰く、「毎年10月になると期待と失望が交差するのは、もはや新しい風俗画」。ノーベル賞関連記事が今年も無難に増えつつあります。その中でも特に多いのが「科学分野で日本は25人」というフレーズです。今年は電子新聞(9月19日)と朝鮮日報(9月26日)がほぼ同じ指摘をしていたので、取り上げてみます。朝鮮日報の場合は「梅の木学問」と「楠学問」などの言葉で説明しています。いわば、時間をかけて基礎を固めないといけないということです。それはたしかにそうですが、韓国では何かを「素早く片付ける」ことが長い間「有能な人」の代名詞のようになってきました。基礎を固めるという風潮が根付くことができるのでしょうか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・今年もノーベル賞シーズンがきたが、今年も韓国の受賞者輩出は難しいと思われる。技術覇権競争の深化で、科学技術こそがそのまま国力になる時代、毎年「ノーベル賞欲しい騒ぎ」をする私たちの現住所をまた振り返ってみる時点だ。スウェーデンのノーベル委員会によると、今年のノーベル賞は来月(※10月)7日生理医学賞、8日物理学賞、9日化学賞順に科学部門受賞者が発表される。韓国はこれまで科学分野ノーベル賞受賞者をたった1人も輩出できなかった。毎年、国内の誰かが候補の可能性があると予想されたりするが、希望のまま終わったりする。今年はそれすら難しいようだ。「非公式ノーベル賞候補名簿」とも言われているグローバル学術情報業界クラリベート・アナリティクスの被引用優秀研究者選定結果に、韓国の科学者の名前は取り上げられていないためだ・・
・・毎年、『他人のパーティー』だけを祝うわけにもいかない。隣国日本だけ見ても、科学分野ノーベル賞受賞者を25人も輩出し、米国などと肩を並べている。今年、クラリベート・アナリティクスのノーベル賞候補名簿にも日本は1人の科学者の名前があがっていた。日本の底力は、国家レベルの全幅的研究費支援と安定した新進研究者研究環境が作用したという評価だ。短期課題にのみぶら下がってすぐに成果が出たかどうかを研究開発(R&D)の評価基準にした私たちが省みる必要がある部分だ。昨年ノーベル賞受賞者たちが国内行事に参加し、「政府が科学界を支援するための最高の方法は、目の前に見える結果が出なくても支援する粘り強さ」と力説した点とも一脈相通る(電子新聞)・・>>
<<・・1926年、ノーベル生理医学賞委員会は山極勝三郎を有力な候補として検討していたが、その年のノーベル賞は寄生虫ががんの原因という実験結果を発表したデンマークのヨハネス・フィビゲルのものになった。皮肉なことに、いざ賞を受けたフィビゲールの寄生虫仮説と実験は、後になって誤りであることが明らかになって、科学界から退出されたのに対し、脱落の苦杯をなめるた山極勝三郎の実験は、以後、がん研究のマイルストーンになったという事実だ。現代人が耳にタコができるほど言われている「発がん物質」という注意が、山極勝三郎の研究から始まったと言っても言い過ぎではない。
日本には「梅の木学問」、「楠学問」という言葉がある。梅の木は急速に成長するけど、一定の高さ以上は大きくならない。楠は生長は遅いが、千年を超えて生き、数十メートルの高さの巨木に成長する。学問に臨む上で、素早く成果を出せば一定の限界を越えない場合と、進展が遅くても着実に成長して大きな成就をなす場合を、両木の属性に合わせて表現した言葉である。毎年10月初め、ノーベル賞発表シーズンになると、期待と失望が交差するのが韓国の新風俗画だ。目の前の成果が必要な、梅の木の学問が必要な時もある。ただし、科学分野のノーベル賞とは、時間がかかっても基礎を固め、蓄積に努める楠学問たる土台が堅実なときにこそ期待できる、ボーナスのような存在であろう(朝鮮日報)・・>>
もちろん政府支援も重要かもしれませんが、他のメディアにも全般的に「政府支援」「国力」「位相(※地位)」などがキーワードになっていて、なかには「経済で10位なのに」という話をする記事もあります。そういう言葉が出てくる自体、問題かもしれません。そういえば、この前、「韓国がG7(G8など)に入ろうとするのは、『ルールを守るのではなく、ルールを作る側になるため』だと書いたことがあります。ノーベル賞に関しても、それと似たようなもの(ある種の上下関係)を見ているのかもしれません。もしそうなら、もし受賞する人が出てきたとしても、それはそれで本人に大きな負担にならないか・・そんな気もします。
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