韓国の一部のメディア、指標上のNPL(不良債権比率)に疑問を提起・・延滞率を下げるカラクリの説明も

こういう話をするときにはどうしてもデータ中心になりますが、今日はデータはありません。『データはないけど、どうみても延滞率が低すぎる』、発表されている指標になにかからくりがあるのではないか、そんな話になります。前にも「エヴァーグリーン化(実はすでに不良債権化しているローンなどにおいて、満期延長と追加融資を繰り返すことで表面的には問題がないように見せる)などを短く紹介したことはありますが、実は韓国メディアでも、一部ではありますが、こんなに延滞率が低い(不良債権比率が低い)はずはないのに、なにかおかしいという指摘は出ています。貸したローン、特に不動産PF(プロジェクトファイナンス)など金額の大きな件で問題が発生すると、金融機関は「充当金(問題が発生したときのための引当金のこと)」を増やすことになります。でも、延滞率が低いとなると、そんな必要はありません。

家計債務のことか、不動産PFのことか、普通の銀行のことか、第2金融圏のことか(普通の銀行の場合はものすごく健全な数値が出ていますが、第2金融圏とされる『証券会社』の場合、PF債権の3割以上が不良債権だという話もあります)でいろいろ変わる話でしょうけど、今回デジタルタイムズ(3日)が記事にしているのは、普通の銀行のNPL(Non Performing Loan、不良債権比率)です。0.5%とされていますが、どう考えても低すぎる、というのです。データはないものの、記事なりに取材、分析した内容はちゃんとありますので、以下、引用してみます。また、「貸主団(資金を貸した人たちの団体)の協約」という話が出てきますが、これについてはアジア経済(2023年10月6日)の記事が詳しいので、1年前のものですがそちらを<<~>>で引用してみます。いわゆる、心証だけの話。本当はどうなのか、いまのところ分かりません。確認できるのは、この程度が精一杯ですが、気になる話ではあります。

 

<<・・国内銀行の不良債権(NPL)が増え続けている。不動産金融事業評価が本格化すれば、今より多くの不良債権が流入するという観測が出ている。市場では、現在の指標ではわからないものが集計に含まれるようになると、指標でも急速にNPLが増える可能性があると懸念しているのだ。利子を(※1回でも)支払った債権は満期延長され、集計に含まれない。この過程で不良化が深刻な債券は、売れずにずっと漂っているだけだということだ・・・・3日ナイス信用評価によると、6月末の国内銀行の不良債権残高は14兆4000億ウォンを記録した。昨年12月末に比べて1兆9000億ウォン増加した・・・・市場では、指標が不良債権『爆弾』を隠しているという疑惑が着実に提起されている・・

・・貸主団が利害関係を持っているため、先順位債権を処分して償還するのが優先であり、後順位は、売却などでは全額損失になるので、利子を出しながら『支える』状況が続いているということだ。期限利益喪失(EOD)を発生させず、満期を延ばしているという話だ。あるNPL業界関係者は、「延滞が3ヶ月以上であれば固定以下与信として分類されるが、はるかに深刻な不良事業場が高い値で出ている。利子を一度でも払えば不良化されないからだ」とし「このような状況が毎日のように続いている。本当に深刻な不良債権は、現在の指標には反映されていない」と述べた(デジタルタイムズ)・・>>

 

どういうことか自分なりに書いてみますと、固定以下与信とは、債権格付けが「固定」以下のもののことで、基本的には3ヶ月以上延滞された債権のことです。でも、記事によると、1回でも利息(元利金とは書いてないのかなんとも)を支払うと、それはNPLにカウントされなくなる、とのことでして。そして、これから紹介する去年10月6日アジア経済の記事によると、金融機関が利息後取(たとえば、利息は1年後に支払っていい、とかそんな条件)、または『利息返済分まで付け加えて満期延長』をしている、とのことです。前回の分の融資に、その利息支払い分をプラスした金額を追加融資して、満期を延長することです。すなわち、ある債務者が、元金100万円、利息分の10万円、あわせて110万円を金融機関に返さないといけないとします。でも、満期に返せそうにありません。そんな場合、銀行が「110万円のローン」を出すと、債務者はそれで解決できます。指標上の『不良債権化』にもカウントされません。110万円をどう返すのかはわかりません。

 

<<・・当局は、不動産プロジェクトファイナンシング(PF)ローン不良問題を抑え込むため、ツートラック戦略を使っている。「PF貸主団協約」でPF満期を延長し、政府が流動性を支援してPF事業の流動性問題を一部解消してやるわけだ。(※2023年)4月に発表したPF正常化対策と、当時対策の拡張版である9月対策は同じ方向性だ。銀行・保険・キャピタル・証券など金融会社と、農協・セマウル金庫などの相互金融まで参加するPF貸主団協約は、4月に始まった。条約の内容は、債権額基準で全体の3分の2が同意すれば、施行会社(※PF総括会社)と施工社(※建設社)が受けたPF融資の満期を延長できるようにした。 PF延長に反対する一部の債権者が、事実上の不渡りである期限利益喪失(EOD)を宣言するのを防止する目的である。4分の3以上同意すれば新規資金、金利減免などの支援に乗り出すという方針も立てた・・

 

・・その協約などの効果もあって、上半期に満期到来した国内PF事業場のうち70%以上が融資満期を延長した。本PFに転換されなかったブリッジローンは、全体の80%が満期を延長した。本PFに移った事業場はごく一部に過ぎない。残りはほとんどブリッジローン状態に満期を延長した。ブリッジローンとは、開発事業の認可を受ける前に土地などを買収するために短期で借りるローンだ。それから事業が正常に進行し、本PFに進まないかぎり、ブリッジローンの融資を回収するのは難しい(※PFも金利が高いほうですが、その前段階のブリッジローンはもっと高いのが一般的です)。

金融会社が不良債権を減らそうと、変則的な方法でブリッジローン満期を延長した事例も少なくない。施行会社が利息を償還する能力がなくなると、「利息後取」などの方法で、または既存の貸し手に利子償還額まで付けくわえてローンを延長する事例も確認されている。このように延長に成功すれば、事実上、「延滞しているのに延滞にならない」。引当金を積む必要もない。不良債権を隠しているわけだ。貸主団協約を通じて、元金と利子減免、出資転換などの積極的な債務再調整をしたというニュースは聞こえてこない(アジア経済)・・>>

 

 

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