韓国メディア「20代で非正規職が多い(韓国43%、日本27%)のは、自分の時間を大事にする人が増えたから」・・本当にそうなのか

韓国各メディアに、20代の非正規職が大幅に増えて、20代賃金勤労者の43%を超えたというニュースが掲載されました。本題はそこではなく、各メディアの「解釈」ですが・・それはちょっと後にして、まずデータを紹介します。本ブログでも6月23日に青年層の「常用職(正規職+1年以上の契約職)」が大幅に減少しているなどの内容をエントリーしたことがありますが、この青年層の雇用関連問題、もうめずらしいことでもなくなりました。つい最近40%超えたという話を聞きましたが、いつの間にか43%超え。ちなみにダウムカカオの経済用語説明によると、韓国で正規職とは「法的な概念ではないが、期間を決めない雇用形態」となっています。

で、「解釈」の部分ですが・・20代でここまで非正規職が増えたのは、「自分の時間を大事にする」「自分でやりたいことをやる」風潮が強くなったからだ、というのです。中央日報など多くのメディアが、この意見を支持する記事を載せています(問題を指摘する専門家の意見も載せていますが)。いわゆる自発的非正規職が増えたということで、66%以上が「自発的」と答えた、とのことですが・・本当にそうなのでしょうか。時系列に合わせて、2023年10月(東亜日報)、2024年3月(時事ジャーナル)、2024年10月(中央日報)の記事を並べてみたら、面白い(?)ことが見えてきたので、あくまで私見として、紹介します。まず東亜日報からですが、2023年10月にも同じ発表がありました。20代の非正規職が最高値だという内容は今年と同じです。しかし、「青年層の社会風潮」については何の言及もない、または、「それが主な理由ではない」なニュアンスのものでした。

 

そこで、2024年3月の時事ジャーナルの記事ですが、これは「日本で」自発的に非正規職を選ぶ人(25歳~34歳)が増えているという記事です。ただ、記事を読んで見ればすぐ分かりますが、全体の非正規職は減少していて、非正規職の人たちの中で、自発的に選んだという応答の割合が増えたという内容です。ここが決定的に異なると言えるでしょう(韓国の場合は集計年齢帯全体の非正規職が増えつつある)。ちなみに、クロームに付いているAIさんによると、日本の20代の非正規職は「学生以外の20代で27.4%」だそうです。そして、2024年10月の発表で、韓国メディアが急に『20代で非正規職が増えたのは、自分で~』と言い出しました。これ、ひょっとして、日本メディアの記事(2024年3月記事の元ソースは日本経済新聞です)を見て、そのまま言ったのではないか・・そんな気もします。さすがに気にしすぎでしょうか。以下、各紙、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・新型コロナが収まって以来、雇用率が最高値を見せているが、週に36時間未満働く短期就業者の割合が大きく増えたことが分かった。20代の非正規職労働者数が最多を記録、30代の非正規職も4年ぶりに増加傾向になった。このような中、正規職と非正規職の月給格差は最大を記録し(※167万ウォン)ている・・・・韓国銀行の報告書は「新型コロナ期間を経て仕事と生活のバランスを重視するなど勤労時間が減ることを好む現象もあったが、政府の直接雇用事業(※政府や自治体が高齢者をメインに働き口をばらまくこと)が高齢層や短時間勤労中心に集まった影響も大きかった」と分析した。さらに、20、30代の非正規職も増加傾向を見せている。この日、統計庁の「経済活動人口勤労形態別付加調査」の結果によると、今年8月20代非正規職労働者数は1年前より9000人増えた142万3000人と集計された。統計を作成し始めた2003年以降最大規模だ。20代の非正規職数は新型コロナによる雇用問題が大きかった2021年初めて140万人を超えたが、エンデミックになってからもなかなか減っていない。 20代の青年たちが社会に第一歩を踏み出す時から、不安な状態で雇用市場に進入するわけだ(2023年10月東亜日報)・・>>

 

<<・・日本の青年たちが、自分が望む時間に勤務するためにわざわざ非正規職を選ぶ場合が増えた。4日、日本経済新聞は総務省「労働力調査」の結果を引用し、昨年、希望する時間に働きたくて非正規職で働く25~34歳の数が73万人と推算されたと報道した。これは10年前より14万人増加した規模だ。この調査で昨年25~34歳の非正規職数は237万人で、2013年と比較して64万人減少した。非正規職に従事する全青年の数が減少したが、自発的に非正規職を選んだ数は増えたのだ。25~34歳が非正規職で勤務する理由に関しては、「都合が良い時間に働きたい」と答えた人の割合が10年の間に10.6ポイント増加した。一方、「正社員雇用がない」と答えた割合は約17%ポイント減った。これに対して山口慎太郎東京大大学院教授は「個人的な生活を忠実にしようとする人が増えた」とし「仕事に対する価値観も変わった」と分析した(時事ジャーナル2024年3月)・・>>

 

<<・・27日、統計庁経済活動人口調査の結果を見ると、今年8月基準で20代賃金労働者は338万9000人で、昨年同月より13万9000人減少した。正規職が約17万6000人減り、非正規職は約3万8000人増加しながらだ。20代賃金労働者のうち非正規職は146万1000人で、43.1%だった。関連統計の作成を始めた2003年以降、同月基準で最も高い割合だ。正規職は192万9000人で、統計作成以来初めて200万人を下回った。最近10年間を見ると、20代の正規職が34万6000人減少した時、非正規職は39万2000人増加した。これは、自分が望む時間に、望むだけの仕事をしようとする最近の傾向が反映されたという解釈が出てくる。実際、統計庁が今月発表した「勤労形態別付加調査(8月)」の結果によると、非正規職のうち勤労形態を「自発的事由」に選んだ割合は66.6%と今まででもっとも高かった。自発的選択事由の中では「労働条件に満足する」という割合が59.9%で最も多かった。非正規職労働者が増加し、全体的な20代雇用指標は好調を見せている。 20代雇用率は61.7%(8月基準)で、最近3年間最高記録を更新した(2024年10月中央日報)・・>>

 

本当に66.6%が好きで選んだと答えたなら、確かにそうかもしれませんが・・久しぶりに韓国側の経済関連の個人ブログなどもチェックしてみましたが、「そうじゃない」という意見が目立ちました。私も、どこか強い違和感があります。ひょっとすると、中国でも同じ傾向があると聞きますが、「もうつかれた」な人が多くなったのでしょうか。ちなみに、『ただ休んだ(事由なしに求職活動も仕事もせず、雇用率統計などにはカウントされない人たち)人の数が、20代だけで43万8000人(8月)まで増えています。これも、似たような流れかもしれません。

 

 

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